第11話 英雄の帰還 真の自由とは
夜、洗濯物を取り込もうとして、ベランダに出た。
隣の部屋の窓が、少しだけ開いている。
電気はついていない。
でも、気配はあった。
「……まだ起きてるな」
そう思った瞬間、
向こうから声がした。
「おにーさん?」
「起きてる」
カーテン越しの会話。
「……ねむれない?」
「まあ、そんな日もある」
少し間があって。
「ルナも」
それだけ言って、黙る。
俺は、ベランダの柵にもたれた。
「なんかあったか」
「……きょうね」
ゆっくりした声。
「ともだちに、
きかれた」
「何を」
「『おうち、どこ?』って」
普通の質問。
でも、ルナにとっては違う。
「なんて答えた」
「……ここ」
短い一言。
「それで?」
「……へんなかお、された」
胸の奥が、少しざらつく。
「でも」
続きが来る。
「ウソじゃない」
それは、強い言い方だった。
「……そうだな」
「おにーさん」
「ん?」
「ルナ、
まちがってないよね」
答えは、迷わなかった。
「間違ってない」
即答。
「胸張っていい」
カーテンの向こうで、
小さく息を吸う音。
「……うん」
しばらくして、
隣の窓が閉まる音がした。
俺も、部屋に戻る。
ベランダに、
夜風だけが残った。
「……居場所って、
名札いらないんだよな」
誰かがそう決めなくても、
そこに帰りたいと思えたら、それでいい。
洗濯物を畳みながら、
ふと思う。
明日も、
特別なことは起きない。
でも。
それを「普通」って言えるようになったのは、
いつからだろうな。
そんなことを考えながら、
部屋の電気を消した。
このまま 淡々と積み上げる日常編で行く。
また「次」で続けるよ。




