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第10話 ビンラディン襲来 トランプの決断とアメリカの未来


そのまま、静かに続ける。

 夕方、郵便受けを確認すると、一通の封筒が入っていた。

 差出人は、小学校。

「……ああ」

 嫌な予感は、だいたい当たる。

 部屋に戻って中を開くと、行事のお知らせだった。

 保護者参加の授業参観。

 日時は、来週の平日。

「……母親、仕事だよな」

 自然と、隣の部屋のことを考えていた。

 その夜。

 ルナは宿題をしに来ていた。

 机に向かって、鉛筆を動かしながら、ぽつりと言う。

「おにーさん」

「ん?」

「こんど、

 がっこう、くる?」

 手が止まった。

「なんで?」

「せんせいが、

 だれか、くるって……」

 遠回しな言い方。

「……ママ、忙しそうか?」

 小さく頷く。

 俺は、少し考えてから言った。

「行ってもいいか、

 母さんに聞いてみよう」

 ルナは、顔を上げた。

「ほんと?」

「ああ」

 それだけで、

 表情が明るくなる。

 翌日。

 ルナの母親は、少し申し訳なさそうに言った。

「本当は……

 私が行くべきなんですけど……」

「無理しないでください」

「でも……」

 視線が、ルナに向く。

 ルナは、何も言わない。

 ただ、静かに立っている。

「……俺でよければ」

 そう言うと、

 母親は、少し驚いた顔をしてから、深く頭を下げた。

「お願いします」

 参観日。

 廊下には、たくさんの大人がいた。

 スーツ姿、カジュアル、様々。

 その中で、

 俺は完全に浮いていた。

 教室に入ると、

 ルナはすぐにこちらに気づいた。

 一瞬、目を見開いてから、

 すぐに前を向く。

 でも。

 背中が、少しだけ伸びた。

 授業は、国語。

 黒板に向かって、

 ルナが音読をする番が来る。

「……ル、ルナは……」

 一瞬、声が揺れる。

 でも。

 こちらをちらっと見て、

 深呼吸。

 それから、はっきり読んだ。

 間違いもあった。

 詰まったところもある。

 それでも、

 最後まで読み切った。

 教室に、拍手。

 ルナは、少し照れた顔で座った。

 帰り道。

「……どうだった?」

「……きんちょう、した」

「だろうな」

「でも」

 少し間を置いて。

「いた」

 それだけ。

「ちゃんと、

 そこにいた」

 俺は、歩きながら答えた。

「行くって言っただろ」

 ルナは、小さく笑った。

 アパートに戻ると、

 いつもの風景。

 靴を脱いで、

 それぞれの部屋へ戻る。

 でも。

 今日は、少しだけ違った。

「……おにーさん」

「ん?」

「きょう、

 がんばった」

「ああ」

「だから……」

 言葉を探してから。

「……また、

 がんばる」

 その言葉が、

 何よりの成果だった。

 自室に戻って、

 椅子に座る。

 派手なイベントじゃない。

 世界も、変わらない。

 でも。

 誰かが一つ、

 前に進いた。

「……それで十分だな」

 そう呟いて、

 窓の外を見た。

 夕焼けが、

 ゆっくり沈んでいった。

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