POMの助、テレビレギュラーになる
〈冷え込みに煮込みで返す居酒屋よ 涙次〉
【ⅰ】
永田です。今、人間界に來てテレビを観てゐる。さる讀者より、* POMの助の出て來る回だけは、この『カンテラ』シリーズ、精彩を放つてゐる、とのお褒め(?)の言葉を頂き、一瞬の幕間狂言として彼の行狀を追つてみやうかな、と云ふ氣になつた。今回、所謂「ダレ場」なので、カンテラ一味の【魔】との激突はない。それでも物語の進行上已むを得ない事として、ご理解願ひたい。
* 當該シリーズ第156話參照。
【ⅱ】
まづ、特筆すべきは、夢雀・POMの助のレギュラー番組が始まつた事を述べて置かなければなるまい。*「惡魔商會」のテレビ局乘つ取りを一味が解決し、その見返りとしてカンテラが局に提案してゐた事が、實現した譯だ。『夢雀・POMの助のハチャハチャ大行進!!』と云ふのがそれで、レギュラーと聞いて雛壇藝人扱ひなのではないか、と云ふ大方の豫想は覆へり、コンビメインの番組が始まつたのは、かなりの髙待遇だと云はねばならないだらう。日曜日午後5時半より20分間、所謂「サザエさんシンドローム」の起こる時間帯で、お笑ひ番組放映の王道を行つてゐる。番組全體の監修者は放送作家・日賀照美。これは勿論ペンネームであらう。吉田照美さんフォロワーな譯である。また、番組のネーミング(日賀が名付け親)は故・横田順彌氏の影響を感じさせる。氏はハチャハチャSFの創始者であり、古典SFの研究者としても名髙い。日賀も、ラジオの深夜放送構成から、大抜擢された。フレッシュな藝人にはフレッシュな放送作家を、と云ふ局側の「攻め」の姿勢が感じられる。
* 當該シリーズ第145話參照。
【ⅲ】
番組は2部構成。前半は夢雀・POMの助の藝をライヴで、後半は* イつちやんこと市上馨里の「イつちやん's Room」。著名人との對談、と云ふか、氣の置けないお喋りのコーナー。では夢雀・POMの助の最新漫才をお樂しみ頂かう。
* 當該シリーズ第82話參照。
※※※※
〈今朝早く目を回しつゝ幻影はサンタクロースの姿してゐた 平手みき〉
【ⅳ】
「皆さん初めまして、夢雀・POMの助でーす。この度はこんなド新人に番組持たせてくれた局に感謝」-「たかゞ20分だけどね(そつぽを向く)」-「こらこら駄目やろ。こいつの口の惡さは天下一品でして」-「僕ラーメンつて食べた事ないや」-「そつちの『天下一品』かい!」(中略)「いや故郷つていゝもんですな。大坂帰つてたんですよ。人情しかりメシが美味い事しかり」-「大坂の人つてすぐ人情、後は『饂飩の汁がだうたら』。東京に嫉妬してるんだよ。嫉妬なんてSHIT!」-「また四文字言葉を」-「四文字言葉に磨きを掛ける為、僕每日Sex Pistols聴いてまーす。だうだ僕の向學心」-「それ向學心ちやうで!」(中略)「東京はー雨降りー」-「お、意外と澁い咽喉。何で桑田佳祐なのかはさて置き(笑)」-「僕フルコーラス歌ふ迄こゝどかないから」-「何でお前のカラオケ教室になるんや!」-(中略)「大坂つて云つたら、知つてます? この男、上方弁で江戸前落語やるつて、若い頃ちよつと人氣出たんですよ」-「人の過去暴くな」-「そしたら見事お客の裏切りに遭ひ」-「やめてくれ〜」-「人生轉落。落語なだけにラクゴ者、なんちやつて。お後が宜しいやうで」-「三笑亭夢雀・POMの助でした〜」
云ふ迄もなく、ボケがPOMの助、ツッコミが夢雀である。
【ⅴ】
そして「イつちやん's Room」。初回のゲストは* 河邊寅美。「今日のお客様は、シンガーそして俳優としてご活躍中の河邊寅美さんです。」-「だうも」-「何か最近、** 月の女神セレーネーに眠らされてゐたとか」-「お蔭さんで『絶世の美靑年』とか藝歴に箔が付きました(笑)」-「カンテラ一味の皆さんとは仲が宜しいんですか?」-「はい。白虎ちやんとは特に親しく交はつてをります(笑)」
イつちやん、後でテオに訊いた。「だうだつた?」-「いや仲良くやつてるやうで」-「あらやきもち? 嬉しいわ。でもテレビだから仕方ないのよ」-「まあそれは分かるけど...」
* 當該シリーズ第73話參照。
** 當該シリーズ第177話參照。
【ⅵ】
果野睦夢は、女性専用カプセルホテルのラウンジのテレビで、その模様を眺めてゐた。魔界女王からカプセルホテル生活へ- 凄まじい轉落振りである。が、「この寅美つての、少しトウが立つてるけど、『祭壇』役にはいゝわね」。然し彼女には、黑ミサを開催する場處はもうない。これは、鰐革Jr.の遺髪を嗣いで、彼女自身の「思念」で、もう一度「新魔界」を造れつて事か... 睦夢の目醒めの時が來たのか。永田でした。お仕舞ひ。
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〈嗚呼父よ寒いと云ひて身罷るな 涙次〉




