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異世界サルーン  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ


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第4話「酒と万能レシピ」

「しかし、店ったってどうしようかなー」


 今ある酒を売るだけでもヒト財産だろう。ぶっちゃけ、それだけで遊んで暮らせそうな気もする。

 ゴードンは、町の衛兵の給金がだいたい金貨2枚と言っていた。


 つまり、一か月金貨二枚あれば普通に暮らせる計算だ。


 それが手元に20枚ある。

 20か月は安泰で、まだまだ売れるお酒もある──。


「だけど、駄目だ」


 そうやってやることを見失い、仕事を辞めた先にあったのが前の人生だ。

 なにか、こう──なにか、しなければならない。


 なにかまっとうな仕事を。


「んー……だけど、酒倉たって、今ある酒を売っちまったらそれで終わりだしなー」


 ゴードンあたりならまだまだ買いそうだ。

 それにあの感じだと他のドワーフも買うだろうし、なんなら、以前のここの主がやっていたように他の人族(・・)にも酒は売れるだろう。


 手持ちの酒をなるべく活かして、

 ほかにも異次元BOXとなった元の部屋のツマミなんかもいかして──………………あっ。


「そうだ居酒屋……!」


 あれならいいんじゃないか。

 酒そのものを売るよりも、酒を売る環境(・・・・・・)を売ればいいんだ。

 それなら酒だけよりも物が動く。ツマミも売れる。


 ──なにより『万能レシピ』が役に立つ!


「そうだ居酒屋だ居酒屋! それでいこう!」


 問題は、田中に料理の腕がほとんどないこと。

 もっとも、そのへんは『万能レシピ』を使えばなんとかなる。


「よーし、さっそく!」


 え~っと、居酒屋メニューは。


「──枝豆! 冷ややっこ、もずく酢、そして、ビール!」


 ジキジキジキジキ……!


 ステータス画面にお金を投入。

 すると、レジからでるレシートのようにレシピが吐き出されていく。

 

 ちなみに、それぞれ一般レシピなので、銅貨数枚か銀貨程度なので安い安い。


「それ、さっそく──!」


   じゃん!



〇 枝豆:未成熟大豆

     塩


〇 冷奴:大豆

     にがり


〇 もずく巣:米酢(他、ビネガーで代用化)

       もずく


〇 ビール:麦芽(他、麦で代用化)

      ポップ



 ……うん!

 無理!!


「つーか、大豆がねーよ!!」


 そして、そりゃそうだよ!

 異世界物のお約束だよ!!


「……ちっくしょー! つっかえねーな、このスキル!!」


 誰だよ、こんなん選んだ奴!

 はい、俺です!!


「──ブルシット!!」


 さっそく居酒屋計画は頓挫してしまうのであった。




※ ゴードンの仮工房にて(他者視点) ※



 カーンカーンカーン!


  きーん!


「ふぅ……」


 村の工房で、野鍛冶器材をふるうゴードン。

 密閉した室内は炉からでる熱で真夏のような暑さであった。


 そんなときにはこれがいい。


「ごっごっご──」


 かぁぁああ!

 うまい!!


 実に美味い!


 初めて味わったがこれほどうまい酒は初めてだ。


「エルフ酒いうのがあるが──あれよりももっとうまいのぉ」


 酒飲みならわかる。

 この味はおそらく蒸留酒だ。


 だが、ただの蒸留酒ではない。もっと複雑な製法で作られている。


「……ううむ、あの小僧から買い占めておけばよかったか?」


 そういえば奇妙なガキだった。

 見たこともない服、靴──そして、大量の酒をもって死にかけていた。


 いっそあのまま見過ごしておけば大量の酒が手に入ったのだろうが……おっと、よこしまな考えは炉の神に嫌われるな。いかんいかん。


 だが、奇妙なことは事実だ。

 まるで何も知らない子供のようで、妙に口は回る。


「──そういえば、人族では30代は大人だったか?」


 正直よくわからん。

 それに顔立ちもこの辺では見ない人族だし、子供にしか見えなんだ。


「とはいえ、あの匂い──……体を酒で壊した者の匂いじゃのー」


 ドワーフはわかるのだ。

 体中に染み付いたアルコールの匂いならなおのこと。そして、まるで同族のようなその匂いには親しみすら覚える。


「……もっとも、あれは(なが)くはないだろうなー」


 少なくとも、毎日酒を飲むドワーフからすればあれは明日にも死んでもおかしくはないとわかる。それくらい限界に達していた。

 そして、ドワーフならば酒をやめるなど不可能なのだから、確実に死ぬだろう。


「うぅむ。……ならば、明日当たりもう一度様子を見に行くか? その時に、冷たくなって折ったら弔ってやらねばの──いや、決して酒のお零れにあずかろうってわけじゃないぞ?」


 信じてくれよ炉の神様よー。


「おーい、ゴードンさんいるかい?」


 んぁ?


「なんじゃい、勝手に開けて入ってこい──」

「いや、勝手にって──うわ、あっつ!」


 そこにいたのは村のガキ──……いや、顔役じゃったか?

 うーむ、人族の見分けはつかんのー。


「なんじゃい? 頼まれた修繕はまだかかるぞ」

「いや、それはゆっくりやってくれていいんだけど、なんか客がきとるぞい──ヘンテコな格好したやつ」


 なに?

 客ぅ……?


「誰じゃ?」

「いや、知らんよ──ゴードンさんいるーっていうから、村の傍で待たせてる」

「なら入れればよかろうに──ったく、」


 めんどうだなーと思いつつも、上客である村人の話だ。無視はできんな。


「いったいだれ──うわ、酒くさ!」

「よー。ゴードン、昨日ぶり」




 そこには、今日死んでいるはずのあの小僧がいた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「いやー。悪いね、奢ってもらっちゃって──」

 村唯一の雑貨屋……というか何でも屋の奥の席で男二人がさしで向かい合う。

「構わんが、昨日の今日で一体どうした? 酒蔵の再建は?」

「そうそう、その話──」


 田中は、例の髭だるま──ゴードンを訪ねて、3里先の村にまで来ていた。

 もちろん、目的はこの男に会うことだが、一応それ以外にも用はある。


「ふむ? やっぱり酒蔵は難しいか?」

「まぁ、俺一人じゃな──で、アンタだよ。たしか建築もやってるっていってたな?」

「無論じゃ──金づちを振る仕事なら何でもできるぞ」


 そりゃ頼もしい。


「じゃ悪いけど、つくってんない?」

「あああん?!」


 いや、アンタがやれって言ったんじゃん。

 酒蔵ではないけど──……まぁ、居酒屋だし、似たようなもんだよ。


「いきなりなに言っとる。そんなパン頂戴みたいなノリで作れるか!」

「いやわかってるよ。今すぐにとは言わないよ──」


 それよりもほら。


  ──ドンッ!


「む!」

「こいつはちょ~~~っと特別な奴だ。これで仕事してくんない?」


 取り出したりますわ、最強格のお酒、ウォッカだ。

 安い部類だが。昨日の様子をみるに、アルコール濃度が高い酒を痛く気に入っている様子。これに飛びつかないわけはない。


「む、むむむぅ。こ、これはいったい……。さ、酒なのか?」

「おうよ。コイツは効くぜー。昨日買った、あの酒の、2……いや、3倍くらいは効くぜ」


 実際、アルコール濃度は90%代。

 ウィスキーの3~40%の2、3倍近いといえるだろう。


「どうよ。……注文通り作ってくれたら、コイツを譲ってもいい」

「む、むむ……いや、しかしのぉ」


 どうやらゴードンは今この村で仕事をしているらしい。

 だから、別にそれはそれで優先してもらっていい。だが、できるなら手隙の時にでも店を作ってくれたら助かるなーという程度でこの話を持ち掛けたのだ。


 まぁ、知り合いがこのオッサンしかいないっているのもあるけどね。


「し、しかしのぉ──仕事が立て込んでおるし、資材もないしのぉ……」


 ちらちらっ。


(ははーん)


「だから言ってるだろ、手隙のときでいいって、」

「う、うむ。しかし、そうなるといつになるか──」


 パキッ。


「だから、いつでもいいって。ほれ、手付にちょっと味見する?」


 そういって、アルミの封をあけると、中身を木のコップに少し注いでやる。

 すると、強烈なアルコールの匂いに身体が猛烈に拒絶反応を示すが──……今は我慢だ。


「むぅ……! 何たる香り────ごくっ!」




   がしっ!




「最優先でやらせてもらおう」

 一口飲んでからの握手の早さよ。一瞬、なんの「がしっ」か、わからんかったわ!


 あと、さっきも言ったけど、別に急いでないんだけどなー。


 そう言いつつも、ウォッカを前金として渡すとゴードンは上機嫌で出て行った。

 なんでもさっそく酒蔵跡の基礎を調べて、設計しなおすそうだ。

 幸いにも元々建物があった立地なので、そう難しくはないんだとか──。


「なんか、とんとん拍子で進んだな……」


 もぐもぐ。


 ゴードンが奢ってくれたご飯と、アイツが残したものをついでに食べておく。

 ……もったいないしね。


「それにしても、やっぱこの世界は地球ほど産物がなさそうだな」


 今食べているパンも硬くでマズイし。

 というか、硬すぎだろ……。


 なにこれ?

 鉄板??


「……それに、この豆もまっず……。絶対、大豆ではないなー」


 もぐもぐ。

 なんかの水煮だろうか?

 よくここまで不味く作れるもんだか。


 あとは、それと干した獣の肉があるだけ。

「うーむ、これも臭いな……」


 獣臭がすごい。


 おそらくスパイスがないんだろう。

 これだけでも、どうやら食事に期待できる世界ではないらしいとわかる。


「──まいったな。これを仕入れても、レシピからろくなもんが作れないぞ」


 少なくとも、日本の居酒屋の再現はまず無理だろう。

 どこかに大豆くらいは存在しているかもしれないが、この村やその周辺では望めそうもない。


 そんな風にブツブツ言っていると、この店のおばさんが気味の悪そうな目を向けたので、愛想笑いをしておく。

 ジャパニーズスマイルってやつだ──あ、目をそらされた。

 そういや、海外じゃ意味なく笑うのを嫌うんだっけ、いかんいかん。


 あ、なら──。


「あのーすみませ~ん」


 そういって、昨日貰ったばかりの金貨を取り出すのであった。

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