第33話「ジンフィズ」
「まぁ、それはともかくだ」
シャカシャカシャカ!
「ともかくって……」
「こいつはこういう奴だぞ」
そうそう。
こういう奴です。
「つーか、何をシャカシャカしとんねん! うるさいのー」
「そうじゃのう、気になるのぅ」
ふふん。
ベッキーがきたからな、ちょっと氷が豪勢に使えるので、せっかくだから二人にごちそうだ。
「ほい!」
ドンッ!
カクテルシェイカーに氷を詰めて、酒を詰めたものを振る舞う。
「まずはコイツだ。ベッキー記念だな」
「何の記念やねん!」
いや、氷を贅沢に使える記念。
「かっ! おまえ、ウチを氷製造機やおもうとらんやろな──うまっ!」
「お! うまいな!」
そうだろう、そうだろう。
魔法樽ができたおかげで氷が結構いい感じに溶けて使いやすくなったんだよなー。
それで思いついたのが、
むか~~~~~し若いころになんちゃって趣味で使っていたカクテルシェイカーがあったのを思い出し、それでカクテルを作ってみたわけだ。
色々足りないものが多すぎて、様々な種類を作るには至らないが、ベッキーが持ってきた産品で再現可能な奴も多くあったわけ。
そんで、まずはこれ。
「コイツは『ジンフィズ』、アルコール度数高めのジンをまろやかに飲める一品だ」
「「ジンフィズ!?」」
そうそう。
「まずはこうして、シェイカーに『ジン』を二人分いれて──レモン汁、麦芽糖、そして砕けた氷を入れる」
そして、こう。
シャカシャカシャカシャカ!!
「だいたい15秒くらいで──ほい!」
ドンッ!
一度カウンターに叩きつけるようにして、内側に張り付いたであろう氷を剥離させ、シェイカー内に分散させる。
それを注ぐ──。
トクトクトク。
「……本当は麦芽糖じゃなくて、砂糖があればいいんだけどな。まぁ、欲を言えばあと、仕上げにソーダ水」
「砂糖かぁ、あらぁ高いでぇ」
「ソーダ水とな? ふむ……湧き出る泉ならあるのぉ」
え?
どっちもあるの?
「あるでぇ、さっきも言うたけど、たっかいでー」
そりゃ、白砂糖は精製がねー。
だけど、ちょっと欲しいな。
「炭酸水いうてな──シュワシュワした水が沸く泉がある。……まぁ、その地方では神の水とか言われとったが、あれは泡が出るだけのタダの水じゃのー」
おぉ、さすがゴードン。
実際に炭酸水は、一時期薬として珍重された時期もあるくらいだしな。
コーラとかさ……。あれも生まれはそんな感じだし。
でも、中身はただの二酸化炭素が溶け込んだだけの水。健康効果は一切ない。
「じゃが、あれを運ぶのは無理じゃのー。なんどやっても、樽を密封しても途中でタダの水に戻る言うてな──おかげでその泉からしか飲めんと有名じゃ」
「そりゃ、密封は完璧じゃないからね」
完全密閉にちかい現代のペットボトルでも徐々にぬけていくくらいだしね(まぁ、あれは破裂しないように微細な隙間があるわけだけど)。
「しかし──そうか、あるんだ」
なんとか安値で仕入れる方法を探ろう。
とくにソーダ水はなんとしてでも入手したい。
「……あ、飲んで飲んで。……おっと最後にレモンを添えて」
「ほーい」「うむ」
飾り兼、香りつけにレモンの短冊切りをグラスに差すと、
ゴクリ。
「あ、うっまー」
「まろやかじゃのー」
そうだろうそうだろう。
「やっぱ氷はいいよなー」
暑い荒野にぴったり。
「ベッキー様々」「うむ、レベッカの氷はうまいのぉ」
「ちょ! そ、そない褒めるなや……うひひひひ」
((ちょろいな……))
心の中で通じあう田中とゴードンなのであった。




