第29話「イカぁ!」
ずどーん!
「がーはっはっは! 見ぃたかぁ!」
「おう、見た見た!」
うっひょー!
これ、寿司で何貫分だろ。
紫でキモいけど、死んだ途端になんか白くなったな。
「これ毒あるか?」
「ん? 淡水性じゃし、なかろう」
あぁ、たしかに。
それに深海のダイオウイカじゃないから、アンモニアも心配ないだろう。
「なら回収してあとで食おう。うまいぞきっと」
「ほう、それは楽しみじゃ──確かにいい匂いがするの」
うんうん。
それは田中も思っていた。焼けたイカの匂い……夜店の匂いだ。
「ふふ、これで飲む日本酒はうまいぞ」
「お、おぉ、それはワクワクするのぉ」
酒飲みのいい笑顔だ。
田中はもう酒は飲めないが、刺身が気になる。イカ焼きもいいし、たこ焼きのイカバージョンも作っても面白そうだ。
そうだ。ゴードンもいるし、たこ焼き器を作ってもらおう、きっと気に入るはずだ。
「っと、それはそれとして、みろ──これでしばらくは安心じゃの」
そういって、ハンマーで示すと、生き残りのサハギンも一目散に逃げていくところであった。
その水が静かになった後には、今度こそ、キラキラとした水面が見えていた。
いや、それでも、田中が一人で入ることはないだろうけどね。
「まぁ、その辺はおいおい考えよう。クラーケンの軟骨でトロフィーを作れば、この地底湖より先には、サハギンは来まいて」
「ああ、ウチにあるホブゴブリンの骨と同じ効果か」
たしか、上位の魔物以外には、効果があるんだったな。
「左様。まぁ、当然クラーケンには効果がなかろうがの。幸いサハギンと違って陸には上がってこんしのー」
「うげ……。ってことは、サハギンは陸も来るってことかよ」
それは危ないな。
トロフィーの効果も絶対ではないって聞くし、
「それも心配無用じゃ。サハギンは、暑さと日光に弱い。荒野には絶対に出てこんじゃろ」
「だとしても、洞窟は危険ってんのは変わんないよな」
雨の日とかどーすんだよ。
こんな危ない洞窟があったんじゃ、オチオチ酒の保管にも使えないわ。
「まぁ、よかろう。ワシも銀の採掘で使うくらいじゃのー。そのあとの運用はおいおい考えようて」
「そうだな。俺は銀も興味あるけど、それより温泉が気になるぜ」
ぷくぷくと湖の中から湧き出る温水。
あれをうまく汲み上げれば温泉が作れるかもしれないのだ。
それの運用も後々考えよう。
「……とりあず今日はこの辺にしとかない?」
「……じゃな」
まさかまさかのダンジョン攻略になるなんて二人とも思ってなかったもん。
それでもゴードンがいてくれてよかったわー。




