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異世界サルーン  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ


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第2話「酒しかねぇ!」



「あのクソ神……!」


 ひー、ひー、ひー……。

 ボロボロのスーツを着て、革靴は今にも底が抜けそうな状態で歩いていた。

 三日……いや、四日は彷徨っているだろうか?


 最初は、ちょっとだけワクワクしたが、もううんざりだ。


 死にたい、疲れた──ミジンコになって、さくっと魚に食べられたいと思っていたのに、こんな目に合うなんて。

 オマケにあのクソ神が監視しているのか、そのままじっとして死を待とうとしたら、急にカンカン照りの太陽で照りつけやがって、眠るように死ぬこともできない。

 ならいっそ、そのまま日干しになってやろうかと思ったら、今度は大雨を降らしやがって、おかげで全身ずぶぬれの水分たっぷり!


 そのほかにも色々試してやったが、そのことごとくを天変地異で妨害された。


 ……いや、天変地異で命を救われるって、天変地異の使い方間違ってない?

 神様パワー無駄遣いすんなよー。


「はぁ……」


 結局渋々歩き始めたら、ようやく災害攻撃が収まったのはいいが、今度はこの無限徒歩地獄だ。


 くっそー。

 せめて、町の近くに転生させろよ!!


 ちなみに、ステータスは出た。


 こっぱずかしいけど「ステータスオープン!」って、言ったら出たわ。ま、数値はお察しだ。

 ほぼ一けた台のステータスでどうしろってんだよ。……多分二度と見ない。


 そして、例の転生ボーナスのスキル。


 『万能レシピ』


 これ。

 ……実は、やる気のないふりをしていたけど、狙ってもらったものだ。

 このスキルのカタログによれば、ステータス画面からあらゆる『レシピ』を購入できるとのこと。


 ようは、なんでもござれだ。


 まぁ、レシピといってもスマホでいうところの調理アプリみたいなもんだった。

 それの異世界アイテムバージョンといえばわかるだろうか。

 もちろん、異世界だけに限らず、元の世界のアイテムを作ることができるらしい。それこそ異世界の『ポーション』から、現実世界の『核兵器』まで。


 ──ちなみに実際に試した。


 そして、ステータス画面をぶん殴ってやった。

 お試しポイントが5ポイントあったので、使用して購入したのだ。


 あ。一応、簡単に説明すると、お金で買えるのは一般レシピまで。そして、高額を払うほど、高額なアイテムのレシピが手に入る。

 そして、レアなレシピはお金ではなく、Lvが上がるごとに貰えるスキルポイントを使用して購入するというわけだ。ちなみに1Lvアップごとに「+5」ポイント貰える仕様らしい。


 なので最初に「+5」あった。

 なのでさっそく使ったわけだ。


 目的のためにな!


   『転生薬』

   『楽に死ねる薬』


 ポイントを使って、

 こうして適当にレシピを打ち込めば、紙の形で発行してくれるってわけ。あとはレシピの素材をそろえれば自動で作ってくれらしい。聞く通りなら実に便利。


 しかしまぁ……ここまで言えばわかるだろう?

 レシピはあくまでレシピなわけで──……。


「ミ、ミジンコに転生するための薬になんでこんなアイテムが必要なんだよ──」


 転生薬:古代竜の鱗

     バジリスクの目

     ゴルゴンの頭髪

     クラーケンの嘴

     グリフォンの蹄

     ヒュドラの心臓


 ……こんなん勇者にしか採れんわ!

 いや、勇者でも無理やろ、こんなん!


ブルシット(ド畜生)!!」


 あと、楽に死ねる薬は一般レシピだったけど、そもそも高くて買えなかった。

 そして、高くて買えないレシピは素材も当然高価になる。

 他にも現代のアイテムは当然──現代の技術で作った素材が必要なのでまず不可能だ。



 はぁぁぁ……。



 ──どさっ。


 こうして、3……いや4日彷徨ったところで、ついに力尽きてしまった。


 ……はっ(笑)


「これで満足かー……」


 ちょうど倒れたところに朽ちた廃屋があったので、往来の邪魔にならないように一応、そこで最後の時を迎えることにした。

 ズルズルズル……っと。


 ……うん。屋根もない、家具もない。壁も崩れた廃屋だ。

 死に場所としては、まぁ悪くない……。


 はぁ。

「あっつ~……」


 ジリジリと照り付ける太陽。

 まだあの転生神が「動け」と言っているようだった。


 だが、さすがに限界だ。


 もともとアルコールの飲み過ぎで体はぼロボロなのだから、4日も飲まず食わずで歩けただけで儲けものだろう。

 ただし、あの転生神は何が何でも自殺だけはさせないつもりなのか、ありとあらゆる手段で妨害──……生存させようとしてきた。


 だから、渋々最後の最後まで歩いた。歩ききった……。一応は努力もした。

 だけどこれ以上もうどうにもならない。なので、


「や~~~~~~~~っと、ゆっくりできるぜ」


 はー。



  ……カサッ。



「ん?」


 さぁ、死のうと──枕代わりにスーツを丸めたところで、胸のポケットからなにか入っていることに気づいた。


「なんだこれ……メモ?」


 それは例のカタログの切れ端だった。

 たしか、転生神に渡したはずなんだけど──……。


  『かわいそうなのでボーナスです。

   アナタが亡くなったオウチから、いつでも持ち物がとりだせるようにしておきます。

                    いわゆるアイテムBOXですね。──がんば!』



 ──ずるっ!!



「こーいうメモはわかるところにおいとけよ!」


 おそらく最初からポケットに忍ばされていたのだろう。

 それに気づかなかったのは自分が悪いんだけど、これはこれで腹立つー。


 だけど、助かった。

 え~っと、なになに。説明によれば──……こうか?


 念じることで、昔の家と繋がるらしい。……おぉ!



   ぶぉん!



 異次元の裂け目のようなものが出現し、腕がそこに消えていく。

 そして、腕の先には何やら感触が──……おぉ、こ、これは!!



 ずぼっ!



「スマホ!」


 そして、電源切れ―。


「いるか、あほ!」


 アンダースローでぶん投げた。

 いや、だが助かるぞ、これで!


「え~っと……あった!」


 昔の家を思い出しながら手探りで探すとあったあった。

 ペットボトルの感触!


「よ!────でた! 『やっほ~お茶』だー!」


 ……ただし、飲みかけの奴!


「ま、まぁ。ないよりましか」


 晩年は酒ばっかり飲んでたから、ろくなものが家にないのだ。

 だけど、多少はあったはず。


「ごくごく──ぷはぁ! うまい!! あとは食い物かな……」


 え~っとなにがあったかなー。



   ぶぉん!

  


「このへんに──」


 ずぼっ!──スルメ!


「やったねー!」


 ずぼぼっ!──柿ピー!


「よっしゃー!」


 ずぼぼぼっ!──韓国のリー!!



  いぇぇええい!!



「…………ブルシット!!」


 ツマミしかねぇ!!

 そして、飲み物ねぇ!! 他にあるとしたら()しかねぇぇえええ!!


「うぉぉ、こんなん食ってたら余計に喉渇くじゃねーかよ!」


 くっそー。

 死ぬ気満々、ミジンコ上等だったのに、お茶がうますぎて、一瞬死んでたまるかーとか考えちまったよ。


「あと、あると言えば…………」


 ずぼんっ──ウィスキー……。


「ま、これだよなー」


 他にも、出るわ出るわ。

 いっぱい出るわ。


 金もなかったから安酒が大量に!

 退職金とかで、死ぬまでに買った大量の酒が!




   どどーん!




「うーわ。ダメ人間みたい」


 (注:ダメ人間です)


 ……とりあえず取り出せるだけ酒を取り出すと、なんとまぁ、廃屋が半分ほど埋まるくらいに酒だらけだ。

 4Lの焼酎に、紙パックの日本酒。瓶のウィスキーに同じく、4Lのブランデーっと。他にはワイン少々、ウォッカが数本。

 あとは少量のビールの缶、か。


「くっ。しっかしまぁ……強い酒ばっか。しかも微妙に減ってるし」


 終末期の酒飲みは、ビールなんて弱い酒飲まないからね(アル中あるあるである、アル(・・)コールなだけに)。


 他に空瓶なんかもあるけど、それは今どーでもいい。

 なにより水が一個もない!


「水道とかは止められてるのか?……つーか、ここが俺の部屋に繋がってるなら、俺の死体とかあんの?」


 何かやだなー。

 積極的に探すのはやめよう。


「うーん、空瓶とか戻せるし。これ、もしかして俺も戻れたりする?」


 よ、ほっ!

 ……くっ、む、無理かー!


「くそ! 生物は通れないのか?」


 頭をなんとか突っ込んでみようとしたが、入らない。


 頑張れば行けそうだけど、行ってどうするというのもある。

 それに、何気に気づいたけど──これチートスキルみたいなもんじゃね? アイテムボックスとして使えるわけだし──まぁ、今つかえてもしょうがないんだけど。


「はぁ……とりあえずこれ飲むか」


 カシュ!


 喉の渇きに耐えかね、ついに酒に手を伸ばす。

 あれほど、身体を蝕んだ酒に──死因となった酒に……。




「ぐっ!」




 う、うぉぇぇぇえええええ!!


 しかし、その瞬間──猛烈に吐き気を催し、全てを吐き戻してしまった。

 頭は酒を欲しているのに、身体が受け付けない……そんな感じだ。


「き、きっつー!」


 は、はは……そりゃそうか。

 酒で死んだんだ。今更、一滴たりとも身体が受け付けるはずもないか──。


 ──ドサリ。


 そのまま最後の水分を吐き出し、ついに壁にもたれかかるように倒れこんでしまう。


 神様がだいぶ手助けをしてくれたみたいだけど、これ以上は無理だろう。

 酒だらけになった廃屋の床でぐったりとする。


 まさに元の世界と同じ死にざまで、今頃監視しているだろう転生神は頭をかかえているかもしれない。


「へへ……ざまぁみろ」


 二度と酒なんか飲まねぇぞ。

 それより水だ……。今は死ぬほど水が欲しい。


 喉が渇いた。

 ミジンコになって、水の中でおぼれたい……。



「み、水──」

「さ、酒──」



 ドサリ。


 そして、田中は外に向かって倒れ。

 何某(・・)かは廃屋に向かって倒れた。


 ()しくも、互いに欲しいものを述べながら──────。

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