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第14話「契約成立」

「ち……。認めたるわ。お前は本物のようやなー」


 口の周りを油でベトベトにしたエルフが、酒で真っ赤になった顔でそういった時には、すでにゴードンもメルシーも潰れていた。


 ……いやはや、

 酒豪というドワーフがこのざまだというのになかなか強いなこのエルフ。


「そうか? まぁ、ウチは毎日何かしら飲んどるでなー」

「マジかよ……」


 旅の空が暇なのはわかるが、それって飲酒運転じゃん。

 まぁ馬車にそれが該当するか知らんけど。


「それよりも、ほれ、」


 三度差し出された握手。


「ん? ってことは」

「みなまで言うなや。……認めたるいうたやろ」


 マジか?!


「マジもマジ、大マジや。エルフに二言はないでぇ」


 どうやら今度こそ本当らしい。

 ガシリと固く握手。


「さっきは悪かったな──これでホンマに契約成立や!」

「いやぁ、こっちこそ、不躾に過ぎたな」


 まぁ、言うて油料理しか作ってないけど、これはこれでめちゃくちゃ嬉しいぞ……!


「なんや、信じられんか?」

「い、いや、そういうわけじゃないけど──」


 ふんっ。


「……ま。実際、見通しは甘いわな──人通りの少ない旧街道で飯屋か」

サルーン(西部劇風酒場)な」


 どっちでもええわい!


「まぁ、たちまち経営難に陥るのは見えとるが、約束は約束やでなぁ──」

「不景気なこというなよ」


 わはははは!


「まぁ、それは冗談半分として、今のままやとあっという間に閑古鳥が鳴くでえぇ──ちゃんと対策は考えぇよ」

「わかってるよ」


 このエルフの言う通りだ。

 ここはしょせん旧街道。通りかかるのは変わり者か変人くらいだ。


「ならええ。ウチも宣伝はしといたる」

「あぁ助かるよ」

「ほな、細かい内容はこれから揃えるとして──今はあれ(・・)でどや」


 ……あれ(・・)


「あぁ、もう商品があるのか!」

「そらそうや! なんも交渉材料もなしで無責任なこというかい!」


 なるほど。「あれ」といって店の間にとめた馬車を指し示すエルフ。

 どうやら、そこにはすでにそれなりの商品はそろえてある様子。なにがあるか知らないがあの村で買える物以上のものがあれば助かるな。


「見させてもらっても?」

「もちろんや」


 にひっ。


「……あ、払いはおいおい(・・・・)でいいか?」

「かッ! 商人相手に最悪の交渉やな、ま、ええやろ。投資いうことにしといたる」


 助かるねぇ。


「ほな、決まりやな──ウチの名はレベッカ。レベッカ・ストーンいう。せやけど、親しいもんはベッキー言うとる。よろしゅうな、え~っと、」

「田中だ。日本の元クズニートの田中健三(34)。今は街道でサルーン(西部劇風の酒場)を経営している。こちらこそよろしくな」


 そういって今度は拳と拳をぶつける男の挨拶を交わすのであった。



 しかし、それを薄目で見ていたゴードンは、なぜか渋い顔をして天を仰ぎ、

 メルシーちゃんは寝たふりをしながらも唇を尖らせてそっぽを向いていたけんだけど──。




 ……え? なんでぇ?

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