七十八話、空へ、君を抱えて
終わった……。
いや、まだ。
まだだ。
帝都を跋扈する、大小の“落とし子”たち――
これを始末しなければ。
「セレスタ」
――背中を頼む、ということだろうか。
名残惜しく、腕の中の熱を手放す。
「気を緩めるなよ」
まだ顔が緩んだままだった。
気を引き締める。頷く。そして、陛下の背に回った。
私は陛下に青炎を纏わせ、陛下は私に火の鳥を放つ。それらが絡み合い、桔梗色の炎が帝都の暗闇を裂いた。
道路の先の落とし子に体当たりしては紫炎で燃やす。陛下も紫の火をマントのように背から靡かせる。
ああ――綺麗だ。
目を奪われそうになる。
けれど、見惚れてはいけない。
炎は進むべき道を照らすもの。
また見惚れそうになるのを堪える。
異形たちを粉塵にしていく。
産まれがまた別なら、幸せだったろうに……。
私は突っ込んでは陛下のところに戻る。
そしてまた、体当たり。
それを繰り返す。
「女王陛下……!」
帝国兵士――将校と思われる男が、アッシュ様へと駆け寄る。
「ああ。だいぶ“計画していた”ようだな」
「この一帯は制圧済みです。しかし中心街は……避難が間に合わず、防戦一方とのことです」
「…そこまで行っていたのか」
「おそらく、幾つか出入り口があるようで……」
「難しいな」
やっぱり何か作戦していたんだとわかった。
今更聞くわけにもいかない。
その言葉の端々に、作戦の輪郭が見える。
(やっぱり、ラザリさんを出し抜くつもりだった……?)
随分諸刃な計画だ。
いや、ここまで落とし子がいるのが計算外だったのかも。
陛下に命を仰ぐのは帝国兵士だけでない。
赤髪の者たちは騎士団じゃなく、ギルドの人か。
ちょっとした一体感も生まれてるみたいだ。
私も尊敬と畏怖の目で見られる。
半竜状態だからか。
一時の休息。
ーーそう思っていると。
――ドオオン
響いたのは、桁違いの爆音。
空気が震え、瓦礫が跳ねた。
「!?」
爆発音はちょくちょくなっていた。
しかしここまでのは異常だ。
この場にいた者たちが音のする方向を見た。
「帝王さま……!」
駆け出そうとする兵士を、陛下が手で制した。
「私と彼が行く。君たちは民の救出と落とし子の殲滅を続けてくれ」
その言葉に、兵士たちは力強く頷く。
陛下が餞別として火の鳥を出す。
「では頼む――セレスタ」
差し伸べられた手。
あそこまで、ひとっ飛び。抱えてくれ。そう言っているのだろう。
(……アッシュ様、飛べますよね?)
心の中でちょっとだけツッコみながらも、また頬が緩むのをどうにか堪えて、私は彼女を片腕で抱き上げ、飛び立った。




