七十二話、五つの声で、遊ぼうよ
*シアーネ視点
黒い火焔に包まれて現れたのは、かわいいあの時のノルだ。が、すぐに一人におぶられて、「鬼ごっこだ。命懸けだけど」と嗤い、隠れる。
黒蝶を介して落とし子が攻撃したり、躱したり。
現れては消えて。
それを繰り返しさせられる。
魔導銃をタイミングを合わせて蝶目掛けて打つも、ムダ撃ち。
「ーーっ」
「こっちだ。へっったくそ!」
ノルを抱っこした子が僕をつまづかせる。
転んで即、起きあがろうとしたが、頬を蹴られた。
「うっ」
頬を蹴られた。
衝撃で視界がぶれる。金属の味が広がる。
「……っ、は……」
ふらつきながら起き上がると、そこに――
“あの姿”のノルがいた。
幼い体躯。揺れる黒衣。
ちょっとダボダボだ。
あの子たちの一人の背にしがみついているノル。
「くくく……次、どうしよっか?」
ノルが聞く。
一人が目、潰すというジェスチャーをしている。
子供たちが、遊びの延長のような声で相談している。
ノルは笑った。
ああ、その笑みをこちらに向けてくれたら……。
片膝をついたまま、彼を見る。
どうせ、銃を放っても、消えてしまう。
それなら彼を見つめたまま。
ここで回復しておこう。
「お好きにどうぞ、って言いたいところだけど――加減しておきなさい」
頷いたり、手をあげたり。
各々の是を伝えていた。
まるで授業中の子供のようだった。
黒い蝶がふわりと舞う。
次の瞬間には、別の子が僕の背後を取っていた。
その手には、割れたガラス片。
「っ……!」
反射的に銃を放つが、そこにはもう誰もいない。
(……視えない。いや、“読めない”)
やられているのは、身体だけじゃない。
空間そのものが、ノルの“遊び場”になっている。
「はやく、行かないと……ラザリも待ってる」
夢の先に。
五つの笑い声が、また、重なるように響いた。




