六十七話、存在証明の檻
そのまま、抱きついてきた。
「……ん?」
……温かくて、柔らかい。
明らかに、魔物でも兵器でもない。
なんだ、こいつは。
慌てて視線を巡らせる。
横にも、前にも、小さな影が。
四人いる。
いや、五人か。
彼らは皆、どこか人間に近い姿をしていた。
だが、身体の一部から、骨のような構造物が伸びている。
頭蓋骨、尾、翼。
竜の、それに似た何かが。
「……離れなさい」
抱きついている個体を引き剥がそうとするが、小さい癖に、やけに力が強い。
な……なんだ?
様子を見ていた残りの四人も、こちらに近づいてくる。
「……ちょっと、待て」
狼狽えていると、そのうちの一人が紙切れを手渡してきた。
にこにこと、何の悪意もない笑顔で。
紙には、帝国語で一言。
「ママ」
「……は?」
いやいやいやいや。
……なんだ、これは。
狼狽えていると、不意に「パキリ」と音がした。
ガラスと液体を、交互に踏みしめる、鈍く湿った足音。
この子たちとは違う、明らかに異質な気配。
振り返る。
「どうして、出ちゃうかなあ? 君の仕業? なんで牢から出てるの?」
抜け殻――確か、シアーネとか名乗っていたはずだ。
……どうでもいいが。
「まあ、いいや。その落とし子たち、僕には懐かないのに、君には懐くなんて……ひどいな」
「この子達は?」
「ああ、この子たち、君から貰った右目と、僕の一部から生まれたんだ!」
“貰った”だと?
戯言を……。
なるほど。
俺の一部が混ざっているというのか。
それなら懐くのも、わからなくはない。
落とし子の一人を撫でると、目を細めて気持ち良さそうにしていた。
「――君と僕の家も作ろうと思ったんだけど、どうかな? ちゃんとシュミレーションはしてるんだ。だから大丈夫」
勝手に、ベラベラと。
俺の用事はもう済んでいる。
――だが、こいつを野放しにしておくわけにはいかない。
レイが、危ない。
黒焱の剣を作り、躊躇なく投げる。
「おっと、家族にはなりたくないの……? もっと子づくりしようよ」
「……おまえの存在価値のための“家族ごっこ”か? ……ふっ、いいだろう。――今から、やろうか?」
ああ――その幻想、まとめて焼いてやる




