閑話3:紫焔に、祈りを
紫と赤が混ざる空。
それを、仰向けになって見上げる。
胸の奥が、じんとする。
……しっかり、力を見せつけられたな。
「我の勝ちだな。――イグニスは息災かと聞いておった。ちと頼りないと言っていたが」
「……ゼラドは。紫の竜は、どうなんだ」
勝ち負けで問いがどうのと言っていたが、それを無視しておれは尋ねた。
“勝者”の顔をしていたが、ちゃんと答えてくれた。
「少々、病でな。眠っておる」
「……そうか」
その答えに、静かに胸が痛んだ。
何百年も――会っていない。
それでも、まだ生きていてくれるのが、少し嬉しい。
ヴァル様には、消えた竜たちの“声”が聞こえる。
姿もなく、加護も残さず、ただ空気に溶けた存在たちの――かすかな囁き。
炎の揺れや、花の揺らぎのなかに、微かに混じる、音にならない祈りのようなもの。
イゼルファの声も、聞こえるのだろうか。
おれには、何も聞こえない。
ずっと、そうだ。
仲間の声も、もう……。
「だが、一人だと思うな。不安であれば、また貴様の吐き出した炎を見せてやる」
……もう充分、見せてもらったよ。
それでも、ありがとう。
そんな感謝は口にすることはなかった。
この国は、まだあの頃の灯を覚えている。
自然のなかに、仲間たちがいる気がする。
……いや、“いる”んだ、きっと。
「――では、我が聞こう。“抜け殻”とは、何だ?」
「……紫の竜から出た皮。脱皮、だよ」
「ふむ。ヤツは蛇のような姿だったからな。……それが動いたと?」
「……ああ。加護も一緒に抜けて、きっと自我も宿した」
“声”のないまま、ただ形だけを真似て、動くもの。
透明な竜を、同種だと思って――入れてしまった。
結果、黒い竜の子孫を……。
「……守れなかったんだ」
気づかれぬよう、言葉の芯をそっと殺した。
守ろうとしたのに、結果的に傷つけてしまった。
それに、いざ戦おうとしても、何度も、何度も……逃げられる。
帝国に行った皆は大丈夫だろうか?




