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君に、炎を捧ぐⅡ〜偽りの剣と、真実の愛〜  作者: みらい


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閑話2:あの日から、今もなお。ただ見つめて

この話のみ過去編です。

「ひ、ひい……やめて! ノル! 間違ってるよ、君が欲しいだけなんだ――!」


 火山口の岩の向こう。

 ――叫び声が、聞こえていた。


 あの声。

 また、来ていたのか。

 ……あの、抜け殻。

 透明な竜が、硝煙をまとい、ずるりと地を這って行く。

 咄嗟にブレスを放つ。

 が、蛇のように滑らかに、するりと身を翻して消えた。

 姿を戻す。人の姿に。


「……大丈夫か?」


 黒い竜の子孫――彼のもとへ駆け寄る。


「アレが……アレがここにいるのが分かった。だったら、セレスタを……隠さないと……守らないと……」


 ぶつぶつと、ひとりごとのように。


「文官になれば、近くに……俺ならやれる、やれる……やる……」


 肩に手を伸ばそうとした、そのときだった。

 ――きっさきの風。

 頬を掠める。


「……っ」


「黄金の竜。あの時も、見てただけだったな」


 目が、怒りで爛れていた。

 剣を構え、踏み込みと同時に回転。

 鋭く、重たい斬りが横から叩きつけられる。


「失せろ」


 ルミナリアの花の間から、黒い炎がふわりと湧き上がる。

 まだ竜としては目覚めていないはず――

 それでも、視界が歪むほどの殺気と幻覚。

 思わず足を踏み外し、崖下に落ちてしまった。

 幸い、大した高さではない。


 だが。


「……セレスタには、近づくな。黄金の竜よ」


「ま、待て。話を――」


 どうにか話し合いの機会を得られないか。

 慌てて止めに入る。

 ――が、火山岩に剣が突き立てられた。

 ゴロゴロと、岩が崩れてくる。

 まだ、あれだけの力を残しているなんて。

 慌てて身を翻し、岩の合間を縫うように避けた。


 そして――


「おまえには、任せられない……俺が……俺が全部、消せばいい」


 彼は、ズルズルと身体を引きずりながら、崖の奥へと消えていく。

 おれは、仰向けのまま、その背を見上げていた。

 岩は次第に消えていった。

 これ、幻影か……。


「はは……」


 ……無様だな、と、自嘲する。

 けれど、仕方なかった。


 あれが、あの時のノル。

 やっと竜の力が目覚めた頃の――彼だった。

 だからこそ、おれは“その時”も、“今も”――

 影から、ただ見守ることしかできなかった。



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