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五十九話、わたくしの王子様
*リリエル視点
腕を絡ませた手が、ほんのりと温かい。
ぶつかったときも、そうだった。
そして今――あの人は、また迎えにきてくれた。
燃えるような紅の髪。
深紅の瞳。
絵本で読んだ“王子様”は、たしかこんな姿だった。
その隣に立つのに、あの白い人形は似合わない。
やっぱり、一番似合うのは、わたくし。
……けれど最近。
ラザリ様はわたくしの声に、ただ「うん」とか「そうか」としか返してくれないのです。
ねえ、あの頃みたいに笑って?
優しく撫でてくれても、いいじゃない……。
でも、わたくしには――王子様がいるもの。
だから、ここにいるの。ここに“連れてきた”の。
どうしたら、ずっとわたくしだけを見てくれるかしら?
知らない場所に引っ張っていったら、もっと“わたくしのもの”になるかしら?
いっそ、ラザリ様を“敵”にしてしまう?
助けてくれるわよね? ねえ、王子様。
……でも、その前に。
あの白い人形をどうにかしなきゃ。
あの子がいるから、ラザリ様はこっちを見てくれない。
王子様も見てくれない。
リデルにお願いしてみようかしら?
それとも、兄弟たちを使おうかしら?
きっと、わたくしの“お願い”なら、聞いてくれるから――。
夜が始まる。
わたくしの物語が、またひとつ。




