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五十五話、檻の中の、証明

シアーネ視点


 何度、檻を壊しても抜け出してくる。

 この子も、僕の“子供”のはずなのに。


 どうして?


 スヤスヤと母の隣で眠った彼女。

 さらりと、白銀の髪を撫でる。

 同じ色。同じ質感。


 ――でも、違う。


 僕の仮説が正しいなら。

 この子は、僕の子じゃない。

 だからまだ、不完全なんだ。


 僕は紫の竜から生まれた。

 空も飛べない。不完全な竜。

 ただ、こうして地下に潜み、存在を証明するしかない。

 泥の底で、這いずるように。



 それでも。

 僕は、竜だと信じてる。

 だって、実際。

 イゼルファの所から拝借した封竜の環を試したんだから。実際なれたから。


 それに加護を持たぬ僕が、魔物から加護を吸収できるのだから。

 攻撃を受けるだけで、能力が宿る。

 ただそれだけで、使えるようになる。

 発動の手間がない分だけ、気楽だ。



 けれど――

 遺伝子まで、吸ってしまってるとしたら?


 そうなると、セレスタちゃんは“僕の子”じゃなくなってしまう。




 ……いや、違う。

 僕は僕だ。


 ここに、ちゃんといる。

 種もある。

 ラザリに頼めば、卵子にだって変えてくれるはず。


 彼なら。

 彼だけなら、きっと。


 実際に、別の“人間”との間には子ができた。

 ゼロという子。

 でも。


 ……どちらも。

 いや、“すべての”落とし子たちが、僕に懐かない。



 人間と交わっても。

 イゼルファと重なっても。

 骸となった彼女と子を作っても。

 すべてから子ができたとしても。

 僕は、ただの透明人間みたいだ。


 子を作らないと、自分がこの世界に“いる”ことすら信じられない。

 誰も、見てくれない気がして。

 確かに他にも証明方法はあるだろう。

 でも僕にはこれだった。


 目に見えるモノで。


 でも、まだ、竜はいる。

 ノルがいる。


 リデルには伝えた。

 黒い竜とお茶をしておいで、と。

 睡眠薬も持たせた。

 人工物に弱いらしいからね。

 「欲しいでしょう?」って囁いた。



 ――でも、

 “触れさせる”ことは、許してない。

 彼は、僕の物だから。




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