五十四話、存在証明と、壊れた家族
広間に出た。
チューブが散乱する床。
中央にいたのは、竜。
白の。美しい――だが、息をしていない。
お腹だけが、膨れて胎動している。
(な、に……?)
声が出ない。
「また、脱走したの? えーっと、セレスタちゃんだよね?」
現れたのは、容姿の整った人。
水の加護で私を捕らえようとした人物だ。
名前は、知らない。
レイの姿もバレた。
多分調査済み。
それか、どこかでみていたか。
自然と構える。
「まあ、会いに来たんなら紹介しておくよ。僕の元妻」
竜を指す。
……妻?
「僕は君の父親、ってところかな」
その指を唇に添える。
父親――
そんな。
母が、こんな人を……?
どうしても違う気がした。
「君も兄弟は欲しいでしょ? 腹違いになりそうだけど、いいよね?」
呆然とする私を無視して、しゃべり続ける。
「ああ、その子たちも兄弟みたいなもんさ。落とし子たち、特にこの子たちはね。ノルと僕の子」
近くの子の腕を掴み、手をひらひらと振らせる。
……意味がわからない。
ラザリより、もっと壊れている。
叔父様と?
「正確には、プレゼントでもらった“目”を使ったんだ」
私に話しかけていない。
返答など求めていない。
「でも、ホラ。失敗。竜じゃないし、人でもない。僕がいるって、証明できない……」
「……」
「セレスタちゃんともう一人ができて、やっと成功だと思ってさ。……ちょっとだけ、存在してるって思えたよ。感謝はしてる。でも――君はもういいかな。ラザリに使われてて」
失敗、成功。
……それが、私?
胸がぎゅっと締めつけられる。
手を当てる。封竜の環があるその胸を。
「まあ、準備ができるまで、また寝ててね」
彼はガスマスクを被った。
しゅう、と音がする。
「――っ!」
煙幕。睡眠作用のある。
落とし子たちが、ぱたりと倒れる。
また……?
いや、まだ。
私は諦めない。
また必ず、抜け出す。
この人の作った檻なんて――何度でも、壊してみせる。




