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五十三話、囁く牙、咲かぬ焔


 返事はない。


 剣は持っていない。

 でも、自分の身体が武器。

 誰が来ようと問題ない。

 感覚を研ぎ澄ませる。


 ――ペタペタ。


 私の足音とは別の音が、混じる。


 ヒタヒタ。

 次第に数が増える。



「あなたたち、は……?」



 ゆらり。

 魔導灯が揺れた。


 そこに――立っていた。

 処置服を着た、小さな子供たち。


 ……子供?

 違う。


 足元から順に目を這わせる。

 身体は小さい。だが顔は、――


 獣の頭蓋、竜の頭蓋。顔を布で隠している子。

 被っているのか、そうでないのか、判別もつかない。

 髪は黒。

 長かったり、短かったり、結んでいたり。

 尻尾や腕、骨のような突起が体から生えている。


(……落とし子、だっけ)


 ラザリという人物が口にしていた名を思い出す。

 前に見た溶液に浸された個体よりも、ずっと“竜”に近い。

 殺気はない。

 でも、自然と戦闘体勢に入っていた。


 私が青い炎を纏った瞬間――

 左右の二人が走り出した。


 獣のように飛びかかり、腕と肩に噛み付く。



「――くっ」



 まるで、魔物。

 ただ、見た目は子供。


 ごめん、と思いつつ振り払う。

 強すぎたのか、壁にめり込んだ。


 次の三人は、兵士のように動いた。

 一人が跳びかかり、もう一人が足元を刈り、最後の一人が背後を取る。

 ……戦うために“調整された”みたいだ。


 それでも私は攻撃を止めた。

 危ないと察知した彼らは、防御の構えに入る。

 叔父様の戦い方を思い出す。

 反撃の隙を与えないような、徹底した防御。


 私は丈夫だ。

 だからこそ、受けて、躱して、少しずつ距離を取る。



「く……」



 隙が見えない。

 それなら――



「はあああっ!」



 三人がまとまった瞬間、突進する。

 軽い彼らは壁に激突し、吹っ飛んだ。

 続けざまに追い打ち。

 真ん中の子を狙ったが、他の二人が庇うように立ち塞がる。

 そのまま、壁をぶち抜いた。



 そして――


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