五十二話、檻を破る者【セレスタ視点】
――失敗した。
また、檻の中。
簡易ベッドから気怠げに起き上がる。
服も処置服に着替えられている。
ラザリさんの実験体の一つだと思ってしまう。
いやだ。
「うぅ……」
ずっと薬を入れられていたせいか、頭が重い。
でも、このまま留まっているわけにはいかない。
力だけはある。
こんな鉄、容易く捻じ曲げられる。
あなたたちが作った檻なんて――簡単に、出られる。
前回は失敗に終わったけれど、今度は上手くやる。
しばらく座り込んで、体調が戻るのを待つ。
きっと、アッシュ様も来ているはず。
――でも、陛下だし。公務もあるし……。
それでも、……。
ここに来ていなくても、必ず動いてくれている。
そう思うと、少しだけ心が強くなった。
ふわっと立ち上がる。
レイの姿になって行動しよう。
撹乱もできるはず。
昔は檻だったのに、今は檻を抜ける選択肢。なんだか可笑しいな。
炎に包まれ変わる。
意を決して檻の前に。
少し力を込めるだけで、檻は軋み、空間ができた。
――よしっ。
通路なんて律儀に通る必要はない。
建物なんだから、壁さえ壊して進めばいい。
どうせ、竜であることはもうバレてる。
青い炎を纏って、壁に叩きつける。
(……あれ? 防火壁?)
少し焦げただけで、びくともしない。
それなら――
「――っはあああ!」
全身に青い炎を纏い、拳を打ち込む。
「や、やった!」
……ギリギリ通れるかどうかの穴。
それでも御の字。
向こう側は通路だった。
私がいるのは牢屋、監禁区域。
もしかすると、最初に入れられた場所が最も安全だったのかも。
この壁の向こうには、別の区域がある。
そう思って、身を潜らせる。
通路から通路へ。
なんだか迷路みたいな造り。
次の壁も壊す。
その先は、広いホールのような空間だった。
薄暗い中、淡く灯る薄紫の魔導灯が空間を照らしていた。
空っぽのベッドがずらりと並ぶ。
無機質で、均一な並び。
医務室、と言われればそれまでだが――
(……違う)
不気味な寒気が背を撫でた。
足元に、風を感じた。
窓なんてないのに。
「……誰?」




