表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

五十一話、王として、私として【ヴェラノラ視点】

 元来た無機質な通路を一人進む。


 ――『私にはできなかった。だが、君たちなら……』


 王として、個人としての。

 悲痛な叫び。

 正直、気持ちがわかってしまう。

 王とはどこも孤独なものか。

 竜にも会っていた、と言うのも気になったが。

 また個人的に話ができた時に聞いてみよう。



「はいはい、気が向いたらな」



 と言う声が聞こえてバンと強く閉まる扉の音が聞こえた。

 締め出されたのは、リデル。

 またこの青年か。



「お茶くらいしようよ!」



 ドスドスと、ドアを叩く。

 私は見なかったことにして「失礼」とその扉を開く。



「ボクも中に――」



 入られる前に閉めた。



「おかえり、ヴェラノラ」



 隅に佇んでいた。

 なんだか、お疲れだ。

 おそらくずっとあの青年に追いかけ回されたのだろう。



「おい、作戦を立てるぞ」


「何の?」


「セレスタ救出の、それと……反乱扇動の」


「ふぅん」



 あまり反乱のことはやる気が無さそうにみえた。

 ただ、目は笑っていなかった。


 温室でのことを伝え、実験体の軍を作っている、ということを伝えた。



「おまえ、操ることくらい容易いだろう? それで反乱をしてほしい」


「大丈夫なの? それ」


「強力な後ろ盾があるからな」



 バリストンが、訝しむ。

 察しの良いヤツだから、誰かはわかっているだろう。



「問題はどうやって探るか、潜入するかだな」



 と、私は呟いた。



「ああ、多分地下だ。街中の。ただ――」


「報連相しっかりしろ」


「はいはい。……ただな、場所がな。おんなじ建物ばっかだし」



 葡萄を摘み、食べる。

 確かに、帝都に限ったとしても、広大だ。

 しらみつぶしに探せば、セレスタが危ない。



「ああ。俺が罠にはまろうか」


「……?」


「どうせ向こうも俺が黒いルミナリアの主だと察してるだろうし? 薬が効くことはあの子で立証されているだろ」



 バリストンを心配するわけではない。

 そう思ったのに。

 危険だ。


(……違う。きっと、私ももう、心配している)


 心を抉るような、焦りが胸にこびりつく。

 セレスタが囚われているのに、私はまだ地を踏みしめたまま。

 一刻を争うというのに、なぜここで言葉を交わしているのだろう。


 けれど。

 彼が、命を張ると言った瞬間。


(私の、炎が――ざわめいた)


 それは、セレスタのためだったはずなのに。

 それだけであるべきだったのに。

 違う感情が、喉の奥で絡まる。


 が、それほどこいつもなりふり構っていられない、ということか。



「――ちょうど、お茶誘われているしな」



 未だにトントン叩く扉を指差す。

 ひらりと舞う黒蝶を二対出して、バリストンはそのノックに応じた。

 セレスタ、必ず救い出す。

 それが“王”としての私の使命であり、“私”としての祈りでもあるのだ。


 私は耳飾りに触れた。

**************




※本作は、ここで一度、区切りとさせていただきます。

 続きや補足エピソードは、noteおよびアルファポリスにて掲載・更新しております。それぞれのキャラの心情などの深掘り、別視点などの小話も投稿しています。気に入ったキャラがいましたら是非よろしくお願いします。



 もしお気に召しましたら、お立ち寄りいただけますと幸いです。

 感想・応援もとても励みになります。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。





******************

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ