四十七話、偽りの舌戦、そして静かな宣告
「何度も言いますが、竜の背骨周辺の件、どう説明されるおつもりで?」
……ああ言えば、こう言う。
面倒だ。
「――それに、黒は別のようですね、このリデルが言った昨夜の竜のこと。それが本当なら、あなたのことですか?」
バリストンに狙いをつけ始めた。
が、本人はきょとんとして、続ける。
「え? それは彼の夢では? 昨日は知り合いと飲みにいきましたし?」
「何?」
今度はラザリ側が困惑し始めた。
「調べても構いませんよ?」
その知り合いかこの青年どちらかに幻覚でも見せたのか?
こいつならやりそうだが……。
「夢ばかり追いすぎて、どちらが現実か、判別ついてます?」
更に追い討ちをかける。
煽るな。
「あなたこそ、偽りを見過ぎて、真実が見えなくなってませんか?」
フォルシュトナーも負けじと煽る。
ばちばちじゃないか……。
外交か、過去で何かあったのか、私でも察せられるくらいに。
バリストンが追い打ちをかける。
「論点逸らし、まだご健在でしたか」
「嘘を真とする悪癖、まだ治ってなかったんですね」
帝国側も畳みかける。
待て待て。
頭を抱えそうになるのを堪えた。
かわりにアホの足を踏むが、踏み返される。
「大体、加護に憧れすぎて赤に染めるのも、ちょっとね」
「黒髪ですか、まあ、紛れるにはもってこいですね」
更に舌戦……いや、悪口大会だ。
こいつら……。
「やめろ、両名」
冷ややかな声で、私は制した。
「――少なくとも今は、“あの子”の話をする場だ。悪口を言い合う場ではない」
会談は仕切り直し、後日に持ち越された。
理由は簡単だ。――その間にセレスタを奪取してしまえばいい。




