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四十話、黒蝶症候群とヒール


 客室部屋には既に傾きかけた橙色が差し込む。

 きらりと光る耳飾り。


 バリストンを正座させる。

 渋々、といった感じで話を聞いていた。

 私は仁王立ちして、スイッチ片手に突き詰めた。



「……で? あの帝国の“黒いルミナリア”とか言ってた件。まさかおまえじゃないだろうな?」


「は? 俺が? 何を根拠に? ラザリ君みたいだな」



 バリストンは言う。

 が、目は絶対に合わせない。

 散々ヒールでぶち抜いた足をさすっている。

 怪しすぎる。



「なあ、おまえ、“黒い蝶、舞わせてみたくなった期”とかあるのか?」


「ないです! 思春期みたいに言うのやめて!」



 片手で顔を覆った。

 それも演技に見えてイラっとくる。



「じゃあどうしておまえの黒いルミナリアがあちこちで咲いてんだ?」


「え、咲いてたの!? あ、咲いてたかな? いやいや、どうだろうか……いや、それ、たぶん風に乗った種とかで……?」


「そんなラフな繁殖法なわけないだろうが!」



 はあ…と、一人用のソファに倒れるように凭れた。



「足折れた。絶対」



 ぶつぶついいながら、対面のソファに奴も座った。

 目の前の小さな丸机に乗せられた、果実。

 葡萄だけを食べる。



「まあ、あの書類は助かった」



 と、ボソリと私は呟いた。

 お? という嬉しそうな顔をする。


 腹が立つ。



「なんと申されましたか? もう一度?」


「……助かった。けどな。大体、セレスタがどこにいるか、無事なのかもわからないのに――おまえは楽観的でいいな」


「……」



 俺も心配だけど?

 などという目を向けながら、葡萄を食べていく。


 今回、進展はなかった。

 しかし、フォルシュトナーは認めたような口調だった。


 いや、あれは。

 確実だ。

 葡萄を食べ終えたらしいバリストンが、口を開く。



「なあ、夜な夜な捜索していいか? 半竜になってそっちの方が飛べるし速い」


「見られたらどうする?」


「記憶消す」


「……」



 ……やはりフォルシュトナーの言っていた記憶障害の町々がどうのというのは絶対こいつだ。



「なにその“おまえだったのか”って顔。違うって言ってももう手遅れ?」



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