三十八話、暴く者、黙す者
その笑みの仮面。
剥いでやる。
そう意気込み、私は今回訪れた交渉内容を口にし始めた。
「まずご相談したいのは――我が国の“国宝級文化財”の件についてです。――率直に言いましょう。
あなた方帝国の外交官方が帰国された後。その文化財が失われました。もちろん、我らも探しました。
しかし、見つからなかった。
――なくなる時期と帰国の時期。
ちょうど重なりましたね、もし、貴国の外交官らが盗みを働いたのであれば、お互いの国の信頼がなくなりますが、どうお考えか」
ふ、と誰にも気づかれないように静かに息を吐く。
一気に吐き出してしまった。
私は外交は苦手だ。
それこそ、フォルシュトナーや隣の黒衣の男のように、裏をつくやりかたは難しい。
曲げずに。
私らしく、伝えた。
さあ、どうでる。
と、帝王を見る。
――が、喉を潤すだけ。
代わりにその外交官が返答した。
「それは確かでしょうか? 本当に我が国の者が? 濡れ衣を着せられている、と解釈せざるを得ませんが……」
確かに。
証拠はない。
どうするーー。
「証拠はありますよ?」
隣にいたやつが。
今まで黙っていたやつが、口を挟む。
書類を出して、後ろの文官に「これ、渡して」と、伝える。
「はい、ヴェラノラ様も」
……やけに上機嫌じゃないか。
今までなぜ黙っていたのか。
とりあえず、渡された羊皮紙を見やる。
(これは……)
外交官の名前一覧。
おそらく、帰国の船と、来訪時の船の一覧だ。
「これのおかしいところは、一人増えていることです。どうぞ、間違い探しを」
帝国の付き人や外交官のみの名前だ。
すぐにわかった。
そもそもこいつ、なんでこんなものを…?
リストなど、王国から持って来た気配もない。
(ああ。あの時か。パーティの時の…)
証拠がないなら、作れ、か。
「さあ。流石に聡明な皆様ならお気づきですよね? 紛れていたのはバリストン姓の者。我が国の騎士は真面目ですからね」
「……わかりました。帝国の不手際です。こちらで探しましょう」
「ありがとうございます、帝王」
と言って、お辞儀する。
こいつの小細工も悪くないな。
少々感心してしまった。
フォルシュトナーは、「しかし……」と言い訳を開始した。




