三十二話、爆破スイッチとドレスコード
帝国の迎賓館――貴族や外交官を迎えるための巨大施設。
夜空に浮かぶような光のドームが広がっている。
待っていたのは、華やかな衣装の貴族たちと、機械仕掛けの楽団。
「歓迎の宴は、準備万端でございます。どうぞ、女王陛下」
案内係が深く頭を下げた。
「……ふむ。では、行こうか」
私は深く息を吸い、王国の顔として、女王の仮面を被る。
「バリストン。変なことをしたら、爆発するからな?」
「わかってるよ……やればいいんでしょ……俺が……っ、レイのために……!」
ぼそぼそと呟く彼を見た。
本当になんだこいつ……。
私はそっと爆破スイッチに手を添えた。
押してしまおうか。
「やめてね、それ。一応真面目にやるからさ」
調子が戻ったらしい。
ふ、と笑い返した。
――そして、光の扉が開かれる。
そこは、帝国流の仮面舞踏会のような、幻想と謀略が交錯する夜だった。
「旅路でお疲れかと思いますが、歓迎パーティを開催しまして。と言っても、定期的に開催する宴にあなた方お二人の歓迎を兼ねた形になるのですが……参加も少しで良いので……ぜひ」
「わかった。着替えてから行こう。」
「大丈夫」
……こいつは本当に大丈夫なのか。
まあ、顔色も……悪そうだな。
私は白のドレス。
来たのは以前、一度だけ。
ヤツは黒い礼服。
おそらく前に婚約パーティの時レイ状態だったセレスタが来ていた礼服と……多分色違いだ。レイとお揃いにしているのが腹立たしい。
しかし、特別顧問官の装いに懐かしんでしまった。
セレスタと仕立てた、お揃いにすればよかった。




