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二十七話、お姫様の夜

リリエル視点




「友達になりましょ」





 そう言って、わたくしが伝えてあげたら、とてもおかしな顔をしたの。

 ああ、いい顔。

 期待して、受け入れて、信じてしまいそうな、壊れそうな顔。


 全部。

 全部が嘘で偽りだったら――


 この子、どんな顔して泣くのかな?



 楽しみ。



 リデルも、そういうのがいいって分かってる。知っている。

 だから説得できたの。



 ――『絶望させた方があんた嬉しいでしょ? 縋ってくれるかもよ?』



 そう言ったら、いちころ。

 スペアキーも、すぐに手に入った。



 お人形遊びは、準備が肝心。

 この子が“竜”だなんて。

 ラザリ様が気になっているだなんて……。



 こんなのが?

 おかしいわ。



 わたくしの方が、美しくて。

 可愛くて。

 まさに童話に出てくるお姫様なのに。

 本物の竜なのに。

 ラザリ様は珍しく、リデルを――

 あの失敗作を、褒めた。



 悔しい。



 胸が焼けるみたいに、悔しい。

 そろそろこの子も、解体すべきよ。


 そうしたら――

 わたくしの方が、もっと輝く。

 美しくなれる。

 物語は正しく戻るの。


 だって、

 “王子”の隣にいるのは、お姫様でなきゃいけない。

 誰がこんな、薄汚れたお人形を選ぶっていうの?



「ねえ。これも食べてみない?」



 町をベンチに座って眺めていたソレ。

 喋りかけてあげた。

 ああ、声が震えてる。

 でも、笑ってる。

 ……可愛いわね、今だけは。


 手渡したのは、強い睡眠薬入りのお菓子。

 甘くて。

 甘くて甘くて、落ちてくくらいに。

 何の警戒もなく、それを手に取る。

 わたくしを信じてる目。

 ……馬鹿な子。


 おやすみなさい、セレスタちゃん。

 今夜はいい夢、見せてあげる。


 わたくしの物語の中で――

 最高に、綺麗に壊れてね?





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