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プロローグ ―夢を喰む者―
夜ごと、同じ夢を見る。
燃える花々が咲き乱れる、溶けた大地。
その中心に、私は立っていた。
彼方に見える、炎の影。
白でも、青でも、黒でもない。
ただ、炎だけが、彼の姿をかたどっている。
毎夜毎夜、
追いかけても、届かない。
誰も記録しない。
誰も記憶しない。
――伝説上の彼ら。
それでも、私だけが。
この胸の奥で、焼けつくような鮮明さで、
彼らの声を、
彼らの眼差しを、
何度も、何度も夢に視る。
見たことはないはずなのに。
……いや、違う。
私は、見た。
死体ではなく、本物を。
今の彼らは、もっと深く、もっと遠い場所にいる。
魔物の襲撃事件。
古代の遺跡のような都市。
火山地帯。
その調査に、私は赴いた。
元凶とも、話したはずだ――
なのに。
覚えていない。
それでも、追い求める。
私はまだ、彼らを喰らいたい。
彼らの声が欲しい。
彼らの炎が欲しい。
忘却の檻に閉じ込められてなお、
私は、彼らを求めてしまうのだ。
――竜を。
今宵も、夢の中。
私は、彼らを喰む。
……ああ、美しい夢だ。
この夢にずっと縋っていたい。