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最終話 一生付き纏ってやるんだから!!

最終話だぁぁ!とりあえず、この話を読み始めてくださりありがとうございます!

「うるさいわね雪宮君。私の顔にホラー映画でも付いてる?」



「ホラー映画が付くってなんだよ!ってかそれより何でここにいるんだよ!」



「何でって、雪宮君と弁当を食べるためよ?」



 はぁ?何を……言ってるんだこいつ?



「べ、弁当ならさっき食べてたじゃないか」



「そうね。食べてたわ。でもね私は今日、ほら」



 そう言うと中ノ崎は口角を少し上げながら、



「弁当、二つ持ってきたの」



 そう言って、後ろに隠していた弁当が入っているであろう袋を取り出した。小さめだが、ちゃんと中身が入っていそうだ。



「はぁ?」



「一つはクラスの女子と食べる用。もう一つはどうせ友達がいなくてぼっち飯を食べてるであろう雪宮君と一緒に食べる用よ」



「とんでもなく失礼だな……。僕が誰かと食べてたらどうするんだ?」



「いや、そんなことはあり得ないから安心してちょうだい」



「何でそれで僕が安心しないといけないんだ!」



「ふふっ、ごめんね。でも私、雪宮君のことなんて手に取るように分かるのよ」



「僕が単純でつまらない奴だからとかそういう理由だろ」



 こいつならきっとそう言うだろうな。



「ふむ、半分正解ね。雪宮君に思考を読まれるなんてとても不愉快ね」



「半分か。もう半分の理由はなんだ」



 最早、『不愉快』なんて言われたことはもう気にしない。



「ここまで一緒に過ごしてきたからよ。まだ出会って短いけど、とても濃い時間を過ごせたからね」



「……!」



「雪宮君と沢山お話ししたし、雪宮君のこと沢山考えたもの。初めて会った時よりは理解しているわ」



 てっきりもう半分も罵倒かと思ったが、僕のことを理解しているから……か。



「さ、とりあえず食べながら話しましょうか」



 そう言って中ノ崎は床に座り、弁当の袋を開ける。



「ちょ、床汚いよ」



「平気。雪宮君もこの環境で食べてたんでしょ?じゃあ私もここで同じように食べるわ」



「そうか……まあ好きにしてくれ」



 中ノ崎は弁当の入った袋を開けながら、でも僕の方を見ながら話しかける。



「それで、何で泣いてたの?」



「な、泣いてないよ……」



 未遂だ。



「ふん、まあそこはいいわ。どうしてこんなとこで一人でご飯を食べてるの?」



「単純に、一緒に食べる人がいなくて……教室で一人で食べるのもなんか嫌じゃん?」



 そういう考えで、かと言ってトイレは嫌だしなということで校内を探し回った結果、ここに辿り着いたわけだ。



「それは分かるけど、てっきり雪宮君は友達がすでに出来てると思っていたのだけど」



「ははっ……そんなできた人物じゃないよ僕は」



「作らないの?友達」



「……作れたら苦労してないよ」



「そっか、ごめんね──と言っても私もたったさっき友達ができたばっかりだから言えたことじゃないけどね」



「でも中ノ崎はすごいよ。僕より学校に行けてないし、最初あんなキャラだったのにさ……」



「さらっと私を馬鹿にするのやめてもらえる?まあ事実なんだけど」



 馬鹿にするつもりは断じてないが……確かに今のは性格悪かったな。



「雪宮君、中学では普通に友達がいたんでしょう?」



「ああいたよ。数はそんなに多くなかったけど、友達はいた」



 特に玲志を含めたあの3人は僕の親友だ。でも、



「今思えば、中学の時の友達はなんかいつの間にか出来てたんだよ。運命的な出会いでさ、気が特別合う訳じゃないし、趣味とかも全然違うやつもいるんだけどなんかすっごく仲良くなってさ」



「だから僕は友達を作ったことは無いのかもしれないな。()()()()()()()()()()というか……」



「はあ……」



「な、何だよ」



 人が落ち込んでる時にそのため息はないだろって言いたかったが、より怒っているのは中ノ崎の方だった。



「いえ、雪宮君は馬鹿だなって思ってね、ついため息が漏れちゃったわ」



「ば、馬鹿だと?」



「そうよ、馬鹿。大馬鹿者よ」



「ど、どこにそんな要素があった?」



「要素を挙げたらきりは無いけれど、そうね、私が今一番、雪宮君にイライラしてるところはね」



 中ノ崎は一度大きく息を吸い込んだ。



「『友達を作ったことが無い』ですって?ハッ、酷い男ね。私たち友達じゃなかったのかしら?」



「………」



「もしかして、雪宮君は私のことを友達では無いと言いたいわけ?」



 そうだった。隣に友達がいたのに……僕はなんてことを──



「何?私が他の人と喋ってると雪宮君は私と友達じゃなくなるのかしら?雪宮君って随分と束縛が強いのね」



「いや、その、そういう訳じゃ……」



「あと、雪宮君は私と友達になる時、自分から話しかけてくれたじゃない。それも忘れちゃったの?」



「で、でもそれは偶然というか、僕も何であの時は声をかけられたのか分からない」



「それが偶然だろうとなかろうと結果は結果よ。結果として私たちは出会って、友達になったんじゃないの?」



 ふと、今日見た夢のことを思い出す。いつもは悪夢であろうとすぐ忘れられるが、今日のは忘れられなかった。



 殴られたりしたからじゃない。二那が僕に友達と思われるのは迷惑だということを男子の一人に言われた。



 もちろん、夢なんだ、『想霊』とはいえ、僕の脳みそが作った夢なんだ。だから現実なんかじゃない。未来を予知してる訳ない。



 だが僕は──やはり僕は、あの夢が気がかりで、中ノ崎の質問にすぐにイエスと答えられない。



「……僕は、中ノ崎の友達に相応しいのかな」



 ふと、心の中の問いを漏らす。本来ならこんな質問、本人にするべきではなく、第三者にするべき質問だ。

 いや、第三者にもするべきではないくだらない質問。



「相応しいですって?私って貴族でもないし、政治家の娘だったりもしないし、そんなこと気にする必要ないと思うのだけれども」



「それとも何?雪宮君はそんなのは建前で私をとにかく遠ざけようとしてるって訳?」



 中ノ崎が四つん這いになって僕の顔に自分の顔を近づけてくる。なんかいい匂いする!



「あ、いやぁ……」



「雪宮君以外の人と喋る私はいらない?」



 どんどん詰め寄られる僕。思わず後退りしてしまう。



「そ、そういう訳では無いよ?」



「じゃあどういう訳?どうしてそんな質問が浮かんで来ちゃうのかしら?」



「そ、それは……」



 僕は今日見た夢のことを思い出す。夢の中で、中ノ崎にとって僕の存在は迷惑であると言われた。


 もちろん、あの悪夢は『想霊』が原因とはいえ、夢は夢。僕の脳みそが作り出した勝手な妄想な訳だ。



 だから僕が中ノ崎に迷惑と思われてるなんていうのは僕の勝手な妄想なんだ。妄想なんだが──



「中ノ崎は優秀じゃん?だから僕なんかと一緒に居ると中ノ崎の株が下がるっていうか……」



「そう。雪宮君はそう考えてるのね」



 そう言うと中ノ崎は僕から顔を離す。その顔はなんだか、苛ついているようだった。



「雪宮君」



「は、はい」



「確かに、雪宮君は私より一般論で言うスペックというものが低いわ。頭も私ほど良くはないし、スポーツでも大して活躍してないし、ピアノとかの芸術が何かあるわけでもない。社交性も大して高くない。何か秀でた特技も無い」



 いざ言われると悲しくなってくるもんだが、流石に僕だって何かあるぞと考えたいが……すぐに何も浮かばなかった。



「でもね、雪宮君。人の()()というものはそういうものだけれども、私は別にそんな人としての価値なんて割とどうでもいいの」



「友達って、一緒に居て楽しかったり、居心地がいいと感じる人となればいいでしょう?それ以上友達に何を求めるの?私ね、年収が1000万超えてない人とは友達になれませーんみたいな悲しい人種じゃ無いのよ」



「しかも……雪宮君は特別な友達だから」



「と、特別?」



「そうよ。雪宮君にとって私は特別じゃないかもしれないけれど私は雪宮君のことを特別視してるのよ。だって、私の人生を変えてくれた友達だもの」



 人生を変えた──か。僕はそんな立派なことはしてないのに。



「僕は特別な人なんかじゃ……ないよ。中ノ崎が高校で上手くできるように色々プロデュースしてくれたのは玲志だし、『想霊』だって、枯井がいればもっとスムーズに解決できただろうし、変われたのは中ノ崎自身の力が一番だと思うよ……」



「はぁ……馬鹿ね。雪宮君はほんとに馬鹿。呆れるほどにお馬鹿さんだわ」



「なんだよ、どの辺が馬鹿だって言うんだよ」



「今の発言全部よ。まるで自分は何もしてませーんみたいな顔してさ。色々助けてくれたのは雪宮君なのに。あなた、自分の評価を下げて楽しい?自己肯定感はもっと高い方が人生きっと生きやすいわよ」



 僕のためを思った煽りだろうな今のは。こういう少し棘がある伝え方も中ノ崎らしい。



「だからさっき言ったでしょ?雪宮君。私はその人の()()なんてどうでもいいわけ。まあでも、結果的に雪宮君は必要なかったかもしれないわね」



 なんだ、やっぱり僕は貶されるのか?



「中学校の段階で私の悩みを即座に聞いて、『想霊』を解決して、私の性格にも合わせて楽しい話してくれて、イケメンで高身長で頭良くて、スポーツもできて、コミュ力が高くて……こういう人物がいれば雪宮君は必要なかったわね。枯井さんも玲志も必要なかったわ」



「………」



 なんだそれ。なんなんだよその高スペックすぎる人間は。もはや人間じゃないだろ。



「なんだそれって思ってるでしょ。でも雪宮君が今言ったのはこういうことよ?」



「あなたは自分に厳しすぎて、自分がしてきたことはくだらないことだって思ってまともに見なくて、その『くだらないこと』に救われた人がいることにも気付かないの」



「あなたは自分が思ってるよりもきっとすごい人よ。だって普通の人は私の日記を勝手に読んでえげつないページを本人の前で音読しないもの」



 あの時の中ノ崎の殺意に満ちた顔がもう一度浮かぶ。そしてそれに類似した顔を一瞬僕に向ける。



「あ、あれはほんとに……ごめん」



「まあ、その話は今はいいわよ。それより、初めて雪宮君に会った時の話するわね」



 急に話が入学式の日に戻った。僕も入学式のことを想起する。



「入学式の時ね私、心の中で、誰にも話しかけられず、冷たい目を向けられたまま、友達も出来ずにこのまま高校3年間を終えるかもしれないなって思ってたの」



「でもそんな不安の中ね、雪宮君は私に話しかけてくれた。私はね、その、ちょっと恥ずかしいけれど……すごく嬉しかったの。心の中で跳ね回ってたわ」



 中ノ崎の頬が赤く塗られていく。


 僕は中ノ崎が跳ね回る映像を思い浮かべてシュールだなと、つい一人で笑いそうになる。



「あの時、雪宮君がどういう心境で、それがたとえ偶然だとしても、気の迷いだとしても、私に話しかけてくれたって結果は変わらないじゃない?」



「だからね雪宮君は私にとって特別なの。もちろんそのエピソードだけじゃなくてね、会話してる時もすごく楽しいの。雪宮君はお馬鹿でいじり甲斐があるし、趣味の話も合うし」



 中ノ崎はクスクスとでも擬音がつきそうな笑みを浮かべる。



「私のことを『想霊』から解放してくれたのも雪宮君だし、私がクラスでうまくやれたのだってあなたが近くにいてくれてるっていう安心感があったからよ」



 「小さい子供が公園で遊ぶときに親がいると安心するのと同じよ」と、付け加える。僕は中ノ崎からそれほどの信頼を得ているのか。



「ねえ、雪宮君は私のことをどう思う?うざいとかしつこいって思う?それとも素敵って思う?一緒に居て楽しい?」



 僕の顔を覗き込んでくる中ノ崎。僕を見る両目は入学時は眼帯で拝むことができなかったが、今は両目とも拝むことができ、吸い込まれるような魅力がある。


 これが魔眼だと言われても今なら信じてしまうかもしれない。



「僕も中ノ崎と一緒に居ると楽しいよ。何気ない会話とかさ。僕は確かに馬鹿にされたり変なノリに付き合わされてばっかだけど、なんだかそれは楽しくてさ」



「ふふっ、それは嬉しいわ。じゃあこれからも私の友達でいてくれる?」



「もちろん友達でいたい──だけど、中ノ崎は本当にいいのか?」



「はぁ、ほんと心配性な男ね。雪宮君が友達で不利益は私には生じないわよ。たとえ不利益が生じたとしても私はなかなか離れないわよ」



「一生付き纏ってやるんだから!!」



 中ノ崎は綺麗な歯を見せつけて悪戯な笑みを顔いっぱいに浮かべる。やっぱこいつは芯の芯までは変わってないな。



 クラスのみんなの前で見せていた姿が虚像だったと思わせるような、人から全然好かれなさそうな態度。僕はなんだかその態度が癖になっているのかもしれない。


 どうやら僕は中ノ崎二那にどっぷりハマっているようだ。昨日からの僕はそんな彼女が離れてしまう感じがして、それが寂しいと思っていたようだ。なんという自分勝手、自己中心的なんだろう。



 だけど、中ノ崎は僕のことを、そんな僕のことをそれでも仲良くしてくれると言ってくれた。



「ねぇ、雪宮君。私を助けてくれるときにさ『お前が僕の大事な友達だからだよ。友達を助けることは僕が生きる上で最も大切にしていることだからな』って言ってくれたじゃない?」



「い、言った……気がするな。よく覚えてるな」



「雪宮君より脳みそのスペックがいいもの」



 コピーアンドペーストしてきたように僕が過去に言ったクサいセリフを繰り返す中ノ崎。



「ふふっ、よくよく思い出してみると私達って似てるわね」



「ああ、そうだな……」



 いつの間にか僕が以前の中ノ崎の側にいたな。僕が説得される側だ。



「あのセリフ。私、忘れないからね」



「だから……これからもずっと私を助けてね」



 四つん這いで上目遣いで僕に媚びる様に言う中ノ崎。別に媚びる様に言うのが悪いと言っている訳ではなく、可愛らしくて、なんだか妖艶で、



「ああ、もちろんだよ」



 と言わざるを得ないような、喜んでこう言ってしまうような魅力があった。



「……もう。そこは『中ノ崎も僕のこと助けてくれよな(キリッ)』って言うところでしょ」



 そう不満そうに言う中ノ崎。(キリッ)は余計だ。



「いや、なんか図々しいと思っちゃってな」



「なに?私が図々しい女とでも言いたいのかしら?」



「そういう訳じゃないよ……」



「じょーだん。冗談だけど、ちゃんと雪宮君の口から宣言してほしいなこれはね──



 立ち上がって僕を見下ろす中ノ崎。そしてなんだか変なポーズをし始めて、



「ん?」



「これは我と盟友の血と血の結びの契約なんだからな!!盟友の口からでないと契約は正しく成立しないのだ!!……って、なんちゃって」



 そう言い終わると赤い風船が膨らむように、顔の赤みがじわじわと広がる。



「照れるなら最初から言うなよ」



「なんか言っておきたくてね。私の過去との決別よ。中二病はこれでもう完全封印!」



 ここに、彼女の『想霊』、中二病。名前をつけるならば、『ニナシック』──それからの脱却を彼女は宣言した。



「さあ、雪宮君。答えを聞かせてもらおうかしら?」



「えーっと、僕も中二病に合わせた方がいい感じ?」



「そこはあなたのセンスよ」



 ………まあ、せっかくだし。僕もそういう時期あったしな。よく妹たちにバカにされたものだ。



「ふ、ふはははっ!」



 僕も中ノ崎がやったように変なポーズをとり、宣言をした。どんな感じで宣言したのかはご想像にお任せするが、宣言の後は二人で貶しあって、ひたすら馬鹿みたいに笑っていた。


 ……そのせいで、弁当は放課の時間に食べきれなかった。

はい、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。とにかく、ここまで読んでくれた読者の皆さんには本当に感謝しています!


実に1年以上。てっきりもっと早く終わるかなーって思ってたんですけど、無駄なシーンが多くて(ギャグパートが多すぎたかもしれない)それに時間を取られた感じはありますね。


ちょっとそういうところを削ったりして、修正していきたいなと。よろしければ修正後もお楽しみいただけると嬉しいです。


まあ色々言いたいことはあるんですが、とりあえず次の話をしますね。


ニナシックは僕が書きたいもののほんの一部でしかないので、これからもこの小説自体は続きます。なので応援いただけると嬉しいです。


あと、これはもはや何回目か覚えてないんですが、短めの連載小説でも書こうかなと今構成を練っています。今のメインのこの物語と両立できるようにやっていきたいですね。


この小説の2章は、雪宮創一の過去についてです。かなりダークな話になるかも……?お楽しみに!ではまた!

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