第24話 ボクっ娘お姉さん
この作品を描き始めてからそろそろ一年です。いやあ、当初はもっと早くストーリーが進むはずだったんですが、おかしいですねぇ……。
まあ、とりあえず2年目もよろしくお願いします。僕も一年通して色々経験したのでね。一年前とは違う視点とかで何か物語が書けたら嬉しいなと。
では本編をどうぞ。
追記:タイトルミスってました!ごめんなさい。
全速力で走って中ノ崎の家に向かう。
今更──かもしれないが、どうやって中ノ崎の家に入るのか?と、思っているでしょう。
まあ、これも犯罪スレスレの事なんだけど……
「中ノ崎さんと、ここで待ち合わせしてるんです!」
とでも言えばいけるのではないかと、考えている。それで無理なら、まあ、実力行使という名の犯罪行為をするしかないな。
要するに、不法侵入だ。まあ、工夫はするが……今考えてる作戦で突破できなかったら……うん、そのことについては考えないでおこう。その時点でまあ、僕の人生は大方終わりだからさ。
♢♢♢♢♢
ピンポーン──と、インターホンを鳴らす。
とてつもない緊張感がある。前は中ノ崎と一緒だったけど、今日は一人だ……。
さっきの作戦で押し通せるだろうか。頼むぞ神様。
「はーい」
インターホンから声がする。女の人の声だ。とりあえず誰かいてよかったな。
「えっと、すいません。二那さんの友達ですけど……」
「あー、はいはい、今行きますねー」
人の家に訪れる時って、こうやって中から人が出てくるのを待つ時が1番緊張するよな。今のシチュエーションだと余計にだ。
ガチャリ──と、扉が開く。中から出てきたのは大学生ぐらいの髪色がプラチナブロンドの女性だった。恐らく、中ノ崎のお姉さんだろう。
「はいはい、どうしましたか?二那ちゃんは今うちにはいませんけど」
「えっと、二那さんに家に入って待っていて欲しいと言われたのですが」
「ふむ、遊ぶ約束でもしてるのかな?二那ちゃんはまだうちにいないけどね」
「まあ、そんなところです」
「あー、そうなんだ。でも、ボクは今から外出するんだよね。そして、不幸なことに今この家には誰もいなくなっちゃうよ」
ボクっ娘!?ボクっ娘なのか?この人!おそらく、中ノ崎二那の姉なのだろう。マジかよ、ボクっ娘なのか──現実で初めて見た。
というか、今から外出するのか──まずいぞ、家に僕一人ってこりゃ、家に入れなさそうだ。
流石に家に他人である僕一人にはしないだろう。信頼なんて一切無いわけだし。
「まあ、いいけどねー」
「へ?いいって?」
「いやだから、家に居ていいよって言ってるの」
この人は何を言ってるんだ……?嘘をついて家に侵入しようとしている僕が言うのもなんだがなかなかヤバいこと言ってるぞ。
「え、その、僕が言うのもなんですが、僕みたいな奴を家に一人って大丈夫なんですか?」
「あー、まあ大丈夫でしょ。二那ちゃんの友達なんでしょ?キミ。あいつが信頼を置いてる友達なら良いよ別に」
「いやぁ……その、こんなこと言うのなんですけど、僕が二那さんの友達である証拠なんてあるんですか?」
我ながら捻くれてるし、特にする必要のない質問をする。これで否定されて家に入らなかったらどうするんだよ全く。
「ふーん、随分度胸あるねキミ。そんなこと言うなんてさ。キミ、一週間ぐらい前うちきたでしょ?そん時と同じ靴履いてるね」
中ノ崎のお姉さんは僕の黒をベースとしたモノクロのスニーカーを見ながら言う。
「ええ、そうですね前と同じ靴ですけど……」
まじか、そんなところを見られているとは。僕は靴にこだわりがあまりないため、靴は3足ほどしか持っておらず、一週間ぐらい替えるのがめんどくさくて1足を履き続けている。
「そう、そこなんだよ。キミのその靴、ちょっと破れてる所あるし、結構年季が入ってるね。それに右足のスニーカーの白い部分、黒く汚れているね」
お姉さんは僕の周りをぐるぐると足元を見ながら回る。
「その黒いのは多分、クロスバイクとかそこら辺にキミは乗っているのかな?その油でしょ。ボクの友達にもいるんだー、そうやって靴が黒くなっちゃう奴がさ」
その通りである。僕の靴はクロスバイクのチェーンの油で少し黒くなってしまっている
「まあ、こういう観点から見てみると、キミの靴は前に来た二那ちゃんの友達の靴ととても似ている。ボクは記憶力がいいからねぇ、一度見たものはそうそう忘れないんだよ。ここまで偶然似てるというなら、キミは大したもんだ!」
流石、中ノ崎のお姉さんと言ったところか。そんなとこまで見てるとはな。凄まじい観察眼である。
「……本当にいいんですか?僕を一人にしても」
「ハハッ、何それ?犯行声明か何かなの?」
どうやら僕が挑発してると捉えたらしい。
「いや、そういうわけじゃないんですが……」
「じゃあさ、ボクと写真撮ろうよ」
「え?随分唐突ですね」
「いいじゃん、撮ろうよー」
お姉さんはポケットをゴソゴソ漁り、スマホを取り出す。そして僕の隣に立ち、
「はい、チーズ!」
と、二人で写真を撮った。
「ハイ、おっけー。ありがとねぇ」
「えっと、あの……」
「ああ、これはね心配性のキミのためにね。これを警察に突き出せばキミは一発アウトってワケ」
「な、なるほど」
これで僕はこの家で下手なことができなくなったわけだ。
「はい、これでもうキミは満足かい?」
「ええ、満足です……」
「よし、いいね。じゃ、ボクこのまま出かけるからさ。バイバーイ。あ、鍵は開いてるからねー」
お姉さんは手ぶらな状態で出かけるようだ。止めてある車に近づく、そうか、高校生以上だろうし、車乗れるよな。
「あ、そうだ。最後にキミの名前を聞いておこうかな。ちなみに私の名前は中ノ崎千晃だよ」
「ぼ、僕は雪宮創一って言います」
「ふーん。雪宮……ね」
そう言うと千晃さんは黙って考え込んでしまったようだ。
「アレ?もしかして僕のこと知ってたり……なんてね、アハハッ……」
沈黙に耐えられなくなり、適当なことを抜かす。まあ知ってるわけ無いよな。
千晃さんは僕の知り合いでは無いし、僕の事を話す人なんて……いや、夏世がいるか。あいつと知り合って無い限りは知らないはず。
「いや君のことは今日初めて知ったけど、『雪宮』ってのは聞いたことあるね」
雪宮家に知り合いでもいるのかな?
「そ、そうなんですね」
「ああ、ボクの大っ嫌いな奴の苗字だよ」
「………マジですか」
「うん!大っ嫌い!!」
そんなに嫌いなのか……一体誰なんだろう。
まあ、雪宮家なんて僕含めて基本的に人格破綻者しかいないしな。
「ああ、大丈夫、創一クンのことは嫌ってないからさっ!むしろ好印象だよ」
「そ、そうですか?嬉しいな……」
「フフッ、キミは可愛いね。弟に欲しいよ」
「そうですか?僕なんかが弟だと色々めんどくさいと思いますよ?」
僕はそんなにできた人間じゃないし、外面はよく見えるかもしれないけど内面はカス野郎だしな。
「こりゃ、二那ちゃんと友達なのも納得だね。いやはや、ごめんね創一クン。疑うような真似してさ」
どこで納得したのかはよく分からないがとりあえず危機は抜け出した様だ。
「いや、僕の方こそ怪しさ満点ですいません……」
「いやいや、いいんだよー、それより……
うん?なんだろう。
「二那ちゃんを助けてやってね」
「え?それは、どういう……」
「フフッ、じゃあね、ボクは予定があるからねぇ、失礼するよ。キミとはまたどこかで縁がありそうだね」
そう言って、車に乗り込む千晃さん。
そしてそのままどこかへ行ってしまった。まあ、中ノ崎家に入れたからよしとするか。
それにしても千晃さんの『二那ちゃんを助けてやってね』という言葉が気になる。
それは友人として色々助けてやってくれ、という風にもとれるし、はたまた、『想霊』から解放させてやって欲しいというメッセージにも捉えられる。
後者はよっぽど無いと思うが、まさかな。普通の人なら『想霊』のことは知らない。しかし千晃さんならどうだろうか。あり得ない話では無い。
まあ、今考えたってしょうがないか。というわけで中ノ崎家に入ることにする。
♢♢♢♢♢
中ノ崎家の中には誰もおらず、僕が泥棒だったら絶好の機会だろうな。
まあ、泥棒じゃないし、泥棒行為をしても千晃さんに色々個人情報渡しちゃってるから、できたもんじゃないんだがな。
特に中ノ崎家の他の所を見ることなく、中ノ崎の部屋に着いた。
当然、誰もいない。誰かがいた痕跡もない……と思ったけど、不自然な点が一つ。例の箱──中ノ崎が昔、手紙を入れていたという箱が机の上にあった。
前までエロ本を隠すが如くベッドの下にあったはずなのに。移動しているじゃないか。
とりあえず、箱を開けてみることにした。箱を開けるとそこはモヤモヤと黒い、宇宙の様な空間が広がっていた。吸い込まれるような、そんな黒色。
その空間に右手を突っ込んでみる。我ながら怖いもの知らずだな──っておおっ!?
「す、吸い込まれるっ……!?」
暗黒空間に右手から全身が飲み込まれてしまう!ば、馬鹿な!この箱、当然だが、元々お菓子の缶だったものなので人間が入れるわけはない!
しかし、現実に僕はこの箱に飲み込まれそうなのだ!やれやれ、この箱がクロで確定だなオイ!
この先に中ノ崎がいるのか……!?
今回は少し短めでしたね。キリがいいんで許してくださいな。
『ニナシック』はあと2話ぐらいで終わると思います。長いなぁほんと。
今考えればそもそも書かない期間があったり、結構本編に関係ないことを書いてたりと、まあ、一つ目が正直デカいです。二個目はこの作品の売りである部分でもあるので、全然いいんですが、それでももう少し精査すべきだったかも……?
そんなことを考えながらあと少し、『ニナシック』書き終わります。そうですね、3月21日でどうやら一周年らしいので、それまでには終わらせたい……!
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一周年って嬉しいもんですね。




