第21話 沈黙
投稿遅れてすいません。この21話は数ヶ月前に完成していたのですが、この第1章を終わらせるまで書いて、一気に投稿しよう!っていう想定だったのですが、ちんたらやりすぎて、まだ書き終わってないです……。なので生存報告を兼ねて今回の21話を投稿したというわけです。
これからはなるべく早くはしようと思いますが、自分のペースでのんびりやりたいですね……。まあでも、そんなこと言うと永遠に完結しないのでそこのところは気をつけようと思います……ハイ。
土日が終わり、また一週間学校生活が始まる。友達は今のところ中ノ崎以外いない僕である。友達はおろか、ろくに話せるやつも中ノ崎以外いないのが現状の僕だ。
他のクラスメイトは食事会でお互いの距離が縮まったのだろうか、なんとなくクラスにまとまりというか、先週より話し声がよく聞こえる。
流石、花瀬川だな。僕は花瀬川のことはよく知らないけど、凄いやつだなというのはひしひしと感じる。
僕もそんなふうになれたらなあと思ってるが、思ってるだけで行動に移さないのだから、これがまた最高に僕らしい。
そんなことを考え一人、机で頬杖をつきながら考え事をしていると校歌が流れ始めた。北鶴高校は毎朝、ホームルームが始まる数分前になると校歌が流れ出すのだ。
それを聞きそそくさと席に戻り始めるクラスメイトたち。
しかし、中ノ崎二那の姿はまだ見えない。あいついつもはもっと早いはずなんだけどな。寝坊か、はたまたなにかしらのトラブルだろうか?
キーンコーンカーンコーン──と、ホームルームが始まる合図を告げるチャイムが流れる。本校はこのチャイムまでに教室に入らないと遅刻扱いとなる。
そして中ノ崎はまだ来ていない。つまり、遅刻か欠席の2択に絞られたわけだ。ということは僕は今日中ノ崎が欠席したら一人で一日を過ごすことになるのか……まったく、想像しただけで胃がキリキリするぞ。
中ノ崎と過ごすのはまあ、周りからの少し冷えた目はあるものの、結構楽しいので、いないとなると結構ショックである。
「よーし、じゃあホームルームはじめっぞー」
寝癖を直さずに頭の上にのっけているジャージ姿の富士先生が話し出す。話し方もなんだかだるそうで、反抗期の中学生がお母さんにぐちぐち言われた後みたいなテンションだ。
先週からそうだが、この先生大丈夫なのか?いや、いくら自由な校風だからって先生がそんな感じの格好とか態度なのはどうなのかなと思ってしまう。入学初日はちゃんとスーツを着ていたのにだんだん崩れてきている……。
「ありりぃ?中ノ崎がいないなぁ。欠席連絡きてたっけな──まあいっか。よーし、じゃあ朝の連絡してくぞー」
いや、よくはないだろとツッコミを入れたくなるが、まあこの人は多分こういう人なんだろうな……。
多分、教室にいないのが中ノ崎だから特別こんな感じの対応をしてるのではなく、誰だってこの態度なんだろうな。まだ富士先生のこともよく分かってはいないけど。
♢♢♢♢♢
その後中ノ崎が登校してくることはなく、1日が終わった。僕はその間なるべく存在感を消せるように努力していた。食事会に行かなかった弊害が出てしまったな……。
まだ部活なども始まっていないため、一年生は授業が終わり次第帰るといった感じだ。部活動の見学なども行っているが、僕はどの部活にも行かない。部活にはトラウマがあるため、高校では部活動に所属するつもりはない。
そんな僕が下校して行くところは家──ではあるが、僕の家ではなく、枯井の住む『かすみ荘』へ行くのである。
中ノ崎に枯井がいるのかどうか伝えるためであり、枯井が帰っているのならばすぐに対応してもらいたかったからだ。
103号室のインターホンを押す──しかし、応答はなく、インターホンの音だけが響く。
枯井……まだ帰ってないのか。まあアイツの話ではたまに海外とかも行くらしいからな。北は北極、南は南極まで行ったことあるとかなんとか。そんなとこ行ってなにすんだよって話ではあるが。
さて、枯井がいないと分かったので帰宅する。今度は僕の家にだ。
まあ、僕は雪宮邸を僕の家としては見てはいないのだけれども。あれは僕にとっては行くしかなかった場所だ。帰るべき場所ではない。早く一人暮らししたいものだ。
でも一人暮らしして、夏世とかつばめとかと距離ができてしまうのはちょっと嫌かもしれない。
……もう一人の妹のこともあるしな。まだ一人暮らしには程遠いな。
だが、帰る前に中ノ崎にメールはしておく。枯井がいなかったことを報告する。
『枯井の家に行ったけど枯井はまだ帰ってなかったぞー』
っと、これでよし。じゃあ帰るとするか。
♢♢♢♢♢
次の日。中ノ崎二那はまたも学校を休んだ。
『またも』などという表現を使ってしまったが、二日連続で休むことなんて普通にあるため、そこまでマイナスな意味を含んではいないのだけれども、僕視点で見てみると、話せる友人が二日連続で休むのは中々辛いものがある。
新しく友達を作れば良いのでは?という意見があるだろうが……うん。その通りです。僕が自分から友達を作ろうと頑張っていないだけなので、そのせいで苦しんでいるのだ。
つまり、中ノ崎は悪くなく、僕が友達を作らないのが悪いという話である。
まあ、その話は置いといて、中ノ崎二那は学校を休んではいるのだけれども、それに関連して僕は気になることが点が二つあるのだ。
一つ目。富士先生が
『あれ?中ノ崎また欠席かぁ?また無断欠席かな』
とホームルームでボソッと言っていたこと。『また無断欠席』と言っていたので、どうやら昨日は無断欠席をしたらしい。そして今日も無断欠席の可能性が高いわけである。
中二病の関係で欠席連絡が入れれなかったとか可能性は色々あるが、中ノ崎は根が真面目なのでなんだかんだ欠席連絡はしそうである。
そして二つ目。中ノ崎からメールの返信が来ていないことだ。既読すらついていない。
これはまあ、人によってはよくあることだし、僕が少し気にしすぎてるだけかもしれないが、中ノ崎はメールをしている感じでは結構既読が早い奴ではあるので、少し気になっただけである。
うん、これはその本当に僕が気にしすぎなだけだと思うのだけれども、どうしてもこう、少し不安になってしまうところがあるな……。
それは相手が中ノ崎だからである。何かあったんじゃないか──そういう不安が頭の中を巡る。
いやいや、やっぱり気にしすぎだ。僕の悪い癖かもしれないなこれは。心配性っていうか、なんていうか。そうだよ、スマホ見ない日とかあるかもしれんしな。電源切れてたりとかさ。
だが、無断欠席と、メールに既読がつかないこと……この二つがあると頭の中に少しそういう可能性が生じてくる。
そして昨日と同じく、学校が終わればすぐに自転車を漕いでかすみ荘へ。枯井がいるのかの確認だ。
「………」
103号室のインターホンを押すも、またもや反応なし。
クソ、なんだか無性に腹が立ってきたぞ。部屋の主が枯井だということもあり、このインターホンの沈黙すらも僕を嘲笑っているように感じる。
枯井がずっと家にいないことで、枯井の心配はしなくて良いのか?と、思うかもしれない。
お答えしよう、心配する必要はない。アイツはそこらで死ぬやつじゃない。交通事故?病気?殺人?そんなのじゃアイツは死なない。
僕もアイツの全てを知っているわけではないけど、多分生きてて、どっかで仕事してるか旅行でもしているだろう。
たとえ心配なんかしてても『あれ?もしかして僕の心配でもしてたのかーい?カワイイところあるじゃないか』なんて茶化してきそうだ。
まあとにかく枯井の心配をする必要はなし!というわけで中ノ崎にまたメールを送る。
『今日も枯井は家にはいなかったぞー』
と、もう一文。これは送るか少し迷ったのだが……
『お前もしかして無断欠席してるのか?ちゃんと連絡しとけよ』
と、送っておいた。余計なお世話だと思われるかもしれないが、まあ一応送ったおこう。友人としてな。
だがしかし、送ったメールに既読はついていなかった。今送ったメールだけでなく、昨日のメールも。
もしかして中ノ崎にブロックされたか……?いや、それはない……と信じたい。
しかし、ブロックされていないとしても2日も既読がつかないと少し心配にもなる。『心配しすぎ』の域を出なければ良いのだが……。
♢♢♢♢♢
そう、良かったんだ。『心配しすぎ』の可能性があった火曜日の時点ではな。現在は月曜日。
そう、水、木、金、土、日まるまる一週間、中ノ崎二那は学校も来ず、メールの既読もつけなければ、電話、訪問、なにかしらの接触すら僕にしてこなかった!
流石にこれは僕も動くぞ。そして僕が動くっとことは、お察しの通り、枯井は帰ってきていなかった。アイツもアイツだなホント。なんでこういう困った時に居ないんだよ!
さて、そんな僕が取った行動は、学校終わり、もはや枯井がいることを期待できない枯井の部屋を訪れて、成果を得れなかったところまではいつもの流れとして、その後、僕は中ノ崎が住むアパートに向かった。
201号室──中ノ崎が住む部屋だ。直接、僕の方から尋ねに行くのだ。待ってばかりでは何も変わらないのでね。
ただ訪れる上である程度の覚悟は必要だと思う。『覚悟』とは、つまり『中ノ崎に何かあるかもしれないこと』を覚悟しなければならないのである。
『何か』とは、あまり想像したくはないが、例えば、強盗に襲われた──とか、なにかしらの体の異常で倒れていたり、もしくは、『想霊』が原因で何か起こってるかもしれない。
ここまで音信不通だとその可能性もあり得るわけである。その可能性よりは、ただ僕の事が嫌いで連絡していないとか、携帯が壊れたとか、その方が全然可愛いものであるのだ。
さて、201号室の前に来た。特に今201号室のドアを見て異常は感じられない。インターホンを押してみる。
ピンポーン──と、音が鳴る。
…………
何も返ってこない。声も、ゴソゴソという動く音も、なにも聞こえてこない。もう一度押してみることにした。
ピンポーン──
…………
また、沈黙である。なんだかこんな風景を最近ずっと見ているので、慣れてはいるのだが……場所が違うと焦るな。
枯井は多分家の中でくたばってなんていないはずだから、心配なんて少ししかしなくていいのだが、中ノ崎になると心配だ。
あいつは『想霊』の件もある。元々、中ノ崎の特性として色々不安定なところがある。さらに、あいつは一人暮らしだ。一人だと問題が起こった時、自分だけで対処することが多くなるので大変だ。
ドアをノックしてみる。コンコンコン──と。
しかし、成果は得られず。中ノ崎はただ外出中なだけなのだろうか?それとも、既に部屋の中で──。
なんというか、そういう話も現実味を帯びてきたな。さて、どうしようか。
中ノ崎の部屋から応答はない──可能性として考えられるのは、中ノ崎はこの部屋にはいない、この部屋の中で既にくたばってる、もしくは、最も楽観的な考えでいくと、単に爆睡してるだけとかな。
一番最後のなら僕も楽だし安心することこの上ないなぁ……と、そんなことを考えている時、僕は、ほぼ無意識だったろう。201号室のレバーハンドル式のドアノブを触っていた。
きっと僕の無意識下で、このドアが開くか確かめようと考えたのか──ドアノブをなぜか触った。
しかし、意外にもこの無意識下の行動が大きく事態を変えた。
「あ、開いてる……?」
つい声が出てしまった。ドアノブを押し下げて、前方に少し力を入れると、ドアが動いたのだ。
ドアを開けてみるが、部屋の中から特に音はしなかった。声も、ゴソゴソという音も。生活音が一つもしなかった。誰もいない……のか?
入るべきか、否か……。いや、入るぞ!ここで、またこの部屋に入らなかったらきっと進展はない。
「中ノ崎?雪宮創一だけど!部屋の中にいるか?」
僕はドアを開いた隙間から声を出すも、返事はなし。
「な、中に入るぞ!いいな!」
僕は傍から見ればとんでもない奴かもしれない。メールしまくって、返信がなくて、心配だから偶然開いていた中ノ崎の部屋に侵入……。もはやストーカーじゃないか!
うん。僕が捕まるだけなら別にいいんだ。捕まって、中ノ崎に嫌われて、絶交して、社会的に死んでも──いや、ダメだなそれ……。
その場合に中ノ崎がなんともなく生活していたら流石に僕キレていいだろ。
まあ、そんな未来のことなんざ考えてもしょうがないので、部屋に入ってみる。
「お、お邪魔しまーす」
誰もいないはずだが、一応、礼儀は守っておく。ここで返事が返ってきていたら僕は絶叫してこの部屋から全速力で逃げていたね。
部屋はぱっと見た感じ以前に訪れた時とそこまで変わっている感じはなかった。特に異臭とかも感じなかった。
キッチン、トイレ、風呂場、リビング、寝室……どこを見ても中ノ崎の姿はなく、ドラマとかでよく聞く『争った形跡』とやらも見られなかった。
今考えれば、ご両親が住んでいる家の方に帰った可能性もあるが……今の中ノ崎があっちの家に帰るのは可能性が低いかなって思ったが、その可能性だってもう十分にあり得てしまうわけだ。
ちょっと焦りすぎたか?いや、そんなこと考えるな。もう覚悟は決めたじゃないか。僕は今、犯罪者と同じことをしているのだ。もしかしたら、中ノ崎に大きなショックを与えてしまうかもしれない。
その場合は僕は社会から姿を消そう。自分のした愚かなことを一生背負いながら生きる。
だが、僕は僕なりの正義感が働いてここまでやったのだ。悪いことする気は全くないぞ。下手に中ノ崎の家の物を物色しているわけじゃないし、ここで何かしてやろうってわけでもない。
だが、一つだけ気になるものを見つけた。中ノ崎の日記である。あいつは昔から日記をつけているのである。もしかしたら日記に何か手がかりがあるかもしれない。
……見てみるか?しかし、女子の日記なんて見てしまっていいのか!雪宮創一よ!落ち着け、心の中でいつもの儀式をやるんだ。
ああ、神様ッッ!そして、あの世にいる両親よ!この愚かな雪宮創一めにこの日記だけ開いて、中を見ることを許可してください!
…………
『いいよー』なんて返事が来るわけもないのだが。まあ、今の儀式は、僕の精神衛生上必要だったのだ。
さて、中を見てみるとするかな。えっと、どこからだろう。ページをめくって一番最後らしきページを探す──っと、あったな。
最後の日付は……月曜日から一週間が始まると考えると、一週間前の月曜日だな。僕と中ノ崎が最後にあった日だ。内容は──っ!
おいおい、マジかよ。まあ、一つの想定にはあったのだが……。いったん、もう一度日記を読んでみようか。
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