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第20話 中ノ崎二那の悪夢

いや、早いでしょ今回。3ヶ月の反省はちゃんとしてますよ。これからも頑張るぞ!


 あっ、そうそう、一章はそろそろ終わりが見えてきたってところです。あれぇ?一章だけで半年以上かかったるぞぉ?おかしいなあ。

「ああ、そういえば好きな食べ物の話してたわね前回。いつのまにか話がだいぶそれちゃっていたけれど」



「おい中ノ崎、『前回』とかいう不穏なワードを言うんじゃない。僕らはこの物語の住人だぜ?」



「私的にはこういうメタ的な発言が作品に出てくると結構好きなのよね」




「だからといってそれを自分で実践するのは話が違うだろ……」




 ったく、なぜ急にそんな危ないテーマで話し始めるのだこいつは。



「そうそう、雪宮君の好きな食べ物を私まだ聞いていなかったわ。雪宮君は何が好きなの?」




「うーん、そうだな」




 色んな食べ物が脳内をぐるぐると廻る。唐揚げ、カレー、寿司、麻婆豆腐、チーズケーキ、ヴァニラアイス──など、多くの食べ物が思いつくが、やっぱりこれが1番美味いだろって食べ物が僕の答えとなる。




「やっぱりラーメン……かな」



「ラーメンね。悪くないセンスをしているわ。ちなみに何ラーメンが1番好きなのかしら?」




「そうだな、やっぱり豚骨かなぁ。豚骨ってのが、僕の中ではザ・ラーメンって感じがするよ。豚骨ラーメンにニンニクを沢山入れると美味いんだよなぁ」



 その組み合わせはとてもギルティーなものなのでね。余計美味く感じる。まあ、僕はそんなに体重とかを気にする人ではないのだが。ちょっぴり痩せ型だからな。



「分かってるじゃない雪宮君ってば。やっぱりニンニクは多く必要よね。あのパンチがあるからこそラーメンって輝くと思うの」



「……もしかしてなんだけど、お前って臭い食べ物好きなのか?」



 ニンニクだの、納豆だの。



「ふむ、言われてみればそうかもしれないわね。ドリアンとかほんとたまにしか食べる機会がないけれど好きよ私。シュールストレミングはまだ挑戦していないけれど」



「シュールストレミングはやばいだろ……」



 シュールストレミングとは、スウェーデンのニシンの缶詰で、『世界一臭い食べ物』とも言われるブツだ。僕は臭いを嗅いだことも食べたこともないけれどヤバそうなので多分食べる機会はこれからないと思う。



「なんというか、そこまでいくと臭い食べ物って言うより臭いものが好きみたいじゃないか」




 シュールストレミングって美味しいのかな?臭くて美味しいとかそんなレベルじゃない気がするけどな。でも、臭いものって美味しいって言うしなぁ。




「ふむ……そうなのかもね。匂いフェチなのかもしれないわ私。ガソリンの臭いとか好きだもの」




 いい匂いではなくて、臭い感じのが好きな匂いフェチなのかな?




「あれは僕も好きだけどな。なんというか、その、いいよな」




 口では説明しにくいがなんとなくいいのだ。アレ?僕も匂いフェチだったりするのか?




「あ、あと紙袋とかもね。けっこう好きなのよねぇ」




「あー、分かるかも。他にもさ──




★★★★★



「盟友ッ……本当に我を殺すのか……?」



 いきなりどういうシチュエーションなんだ?と一瞬混乱するけど、すぐ理解できた。というか思い出したと言う方が合ってるかもしれないな。



 僕は今、謎の空間にいる。説明し難い謎の空間。上下左右東西南北──どこを見ても白、白、白──真っ白だ。景色を見ようとするも遠くは白い霧がかかっており、見たくても見れないという感じだ。




 そして、僕の目の前には眼帯、包帯、その他諸々の中二病グッズをつけた中ノ崎二那がおり、非常に怯えた様子である。そして、分かるように中二病状態だ。




「その手に持つ、ナイフで……」



 僕は自分の右手を見る。右手にはナイフが握られていた。



 どうしてナイフを持っているのか、このナイフがどんなナイフなのかなど、分からないことは沢山あったが、とりあえず、このナイフなら()()()()()()()()()()ことが分かった。



 そして同時にもう少し思い出すことがあった──そうだ。ここは中ノ崎の精神世界であり、目の前にいる中ノ崎二那(中二病)の対処をすることで現実の中ノ崎が解放されるのだ。



「ああ、だってお前の対処をしないと中ノ崎を助けれないんだよ」




「わ、我だって中ノ崎二那じゃないか!」




「そ、それは仮の名前なんだろ?」



 言いたいことは分かる。だがこいつは中ノ崎二那ではない!中ノ崎に取り憑く『想霊』だ。そう、こいつは『想霊』なんだよ……。




「そ、それはそうだが、我も中ノ崎二那の一部じゃないか!中ノ崎二那の意思が我を作り出したんだ!」




「たけど、お前がいると中ノ崎は困るんだよ。だから……消えてくれないか」




 目の前の彼女にとって大変理不尽なことは重々承知しているが、中ノ崎だって──僕の友達の中ノ崎二那だって理不尽に傷つけられてきたんだ!




 そう言うと目の前の彼女はボロボロと泣き出した。泣き出して、膝から崩れ落ちた。崩れ落ちて、全身から力が抜けたように、そこにただ、座っていた。



 いつもの中二病的発言をしている時の威勢はすっかりと崩れ、今はただ、泣きじゃくる少女と化している。出てくる涙を拭いもせずに。




「い、嫌だ。消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、消えたくない、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」




 泣きじゃくりながら叫ぶ。『消えたくない』と。



 僕はその声を聞いて醜いものだな──と、僕は冷酷になる──訳はなく。実際心に響いている。かなり不快というか、自分の今からしようとしていることの罪悪感が凄かった。



 いわば、自分に対して不快感を抱いていたのである。こんな泣きじゃくる……()()を僕は消そうと──いや、殺そうとしているのだ。




 当然、こいつは『想霊』なので、殺人罪には問われない。だが、これはそういう問題ではなく、僕は人を、人の形をしたものを殺すということに抵抗が凄かった訳である。



 こいつは中ノ崎だ。見た目は中ノ崎である。そして、少ない時間ではあったものの、一緒に学校生活を送ったのだ。だから……





「や、やっぱり、僕はお前を殺せないっ……」




 僕は気づくと泣き出しており、そして手に持ったナイフを落としていた。握力がすっ──と消えたようだ。



「め、盟友……?」




 分かってる、分かってるんだ。こいつを殺さないと中ノ崎は困るんだ。そのつもりで僕はここに来たじゃないか。



 でも、僕には無理だ。無理だったよ。



 きっとここにいるのが枯井なら──あいつなら容赦なく殺せるだろうな。それがあいつの仕事だから。



 それか中ノ崎本人なら──あいつなら間違いなく殺すだろう。だって、それがあいつの1番の願いだからな。



 殺さなきゃ、殺さなきゃ、消さなきゃ、消さなきゃ、消さなきゃいけないんだ……!でも、



「分かってんだよ!そんなことは!分かってるよ!そうだ、僕はそのためにここにいるんだよ!お前を消すために、殺すためにここにいるんだよ!だけどさ……無理だよ」



 僕も精神的におかしくなっちまったのか、それともこの、僕と中ノ崎以外誰もいないこの空間だからこそ叫べたのだろうか。とにかく、叫んでいた。どうしようもないこの気持ちを少しでも消そうと。




「め、盟友……?」




「ああ、そうだ。僕はお前の盟友じゃないか」




 こいつは盟友──だから殺さないし、殺せない。僕って甘いな。中ノ崎に怒られちゃうや。失望されちゃうだろうな。でも、ごめん。僕には無理だよ。



「め、盟友!!」



 中ノ崎──いや、僕の盟友はこちらに駆け出して来た。いつのまにか立ち上がり、一直線にこちらに向かってきていた。



 しかし、僕はここで少しの違和感に気づいた。いや、()()なんてレベルじゃなく、大きな違和感である。



 まず、先ほど僕が落としたナイフがいつの間にかない。僕のすぐ近くにあったはずなのに。



 次にどうして僕はここにいるんだ?いや、ここはどこだ。どうやってここへ来た?なぜ中ノ崎がいる?さっき、『謎の空間』と、なんとなく結論付けていたけれど、あり得るのは中ノ崎の精神世界的なやつ。そこにいる『想霊』を倒すためにここにいるのだろう。



 だが、そもそも僕はどうやってここに来たのか覚えていないし、来る方法も見当がつかない。そして、こういう魔訶不思議というか、理不尽的な、非現実的な現象を起こすと言えば……。




「これは……夢?」




「盟友ぅぅぅ!!」




 くるるせべ、たん──ああっ、クッソ!脳内で言おうとしても言えない!じゃあやっぱりコレはっ!




「これは悪夢だぁぁぁぁぁぁ」



 ああ、どうして早く気づかなかったんだ!いや、気付いていたとしてもこの理不尽な悪夢からは逃れられない!



 そして、迫り来る中ノ崎──ハグをしそうなぐらいの勢いだ!僕はこれを避ける時間はなかった。そして、さっきナイフが消えた理由は()()()()()()()()()()()()()からだ──




 グサッ──と、実際に多分そんな音はしていないと思うけれど、僕の腹にナイフが刺さる。




「へへ、騙されたー♡」




 あっ、あっ、あっ──そんな風な声にもならないような音しか僕の口からは出てこない。そして、腹部に激痛が走るッ!痛い!血もドロドロと流れ出ている感じがする!




「馬鹿だなぁ、盟友は。私がそんなに友好的だと思った?ん?騙されてるかも?とかの疑いはなかったのかなぁ?」




 なかった。不思議なことに全く疑いはなかった。多分これが悪夢だからであろう。僕は理不尽に意思を奪われ、この悪夢のされるがままにされるのだ。いつもいつも。




「でもさぁ、盟友も我を殺そうとしたんだよ?それぐらいの痛みになるはずだったんだよ?我もさぁ。どう?人を殺すって重くて、痛いことでしょ?」



 

 確かに──ある意味身をもって知った。殺す、命を奪う。『想霊』に命とかいう概念があるのかは分からないが、とにかく、殺すということはそのものの自由を永遠に奪うということである。



 死んでしまっては何もできないからな。僕はそれをこいつにやろうとしたのか……。




「へへーんだ。死を、痛みを持って我にそんな思想を向けたことを後悔するがいいさ!」




 そういうと『想霊』は僕の腹に刺さったナイフをグリグリと回転させ始めた。そして、そのまま内臓をぐるぐると、混ぜるようにナイフを回してきた。




「ぁぁぁアアアぁあアぁアアアアあぁあアアッッああァァァァアッッァあぁぁぁアアアあぁぁぁ!!!!!」




 どういう叫びなのか、文字起こしするとこんな感じなのではないだろうか。とにかく、叫んだ。叫びまくった。



「ギャーギャーギャーギャーうるさいんだよ。あっ、私がうるさくしてるのかぁ。ごめんねぇ盟友♡」




 そう言い放つと、『想霊』はナイフを僕から抜き、僕は地面に倒れる。意識が朦朧としてきて──見上げた空……とは言えるのかよく分からないこの空間の上を見上げると眩い光が刺してくる。




 そうか、起床か。この光が刺してきたら僕が起きる合図だ。ということはもう覚えてはないけれど、すでにいくつか悪夢を経験してきたようだ。




「おや、お迎えが来たな。ふふふ、お別れの時間か盟友。まぁ、我は盟友自身が作り出した悪夢の一部だから実際の中ノ崎二那の『想霊』はこんな性格ではないと思うぞ。まあ、そうでないことを願うといいな。盟友。ハーッハッハッー!」




 ホントにな。そういう意味で、まだこれは夢でよかったな。いや、とてつもなくよくないけど。



☆☆☆☆☆



「雪宮君、雪宮君!起きてってば」




「んあ?」



 目が覚めた。中ノ崎が僕の視界に映る。どうやら中ノ崎に体をゆすられて起こされたようだ。僕は手にはびっしり汗をかいている。そして腹部を見る──よし、傷はない。だが、さっきの光景がまだ浮かぶな……。トラウマだ。



 そして、現在時刻は左手につけた腕時計を見るに5時過ぎである。やけに早いなと思ったが中ノ崎の状態を考えれば納得がいく。こいつの自由時間はあと1時間なのだ。



「ふぅ、やっと起きた。雪宮君っば、凄いうなされてたわよ?」



「そうなのか?すまなかったな。えっと、僕は中学2年の時から悪夢にずっと悩まされていてな。まあこれも『想霊』のせいではあるのだが……」




「ふぅん。それは大変そうね」




 何故か中ノ崎は僕を睨むような視線を送る。そして、寝ていたはずなのにやけに顔が疲れているような……?



「もしかしてなんだが、寝言……うるさかった?」




「ええ、まあ、そうね。うるさくないと言えば嘘になるわ」



 ちょっと控えめな言い方をしてくれているが、つまりはうるさかったと……。僕は寝てる間は自覚してはいないが、夏世とかから寝言がうるさいとは結構言われるため、うるさいことはわかってる。



 どうやら、僕と中ノ崎は多分色々話してたが、いつの間にか疲れてどっちも寝てしまったようだ。



 最後にした話はなんだったか、トイレットペーパーをわざわざ折るか折らないかの話をしていた気がする。ったく、なんの話をしてるんだよ昨日の僕らは。やれやれ、深夜テンションだな。



「そ、それはごめん……」




「いいのよ。全然気にしていないわ。全然気にしてないわ。ちょっと1時間前ぐらいに目が覚めてそのまま寝れなかったぐらいだから気にしないで」




「根に持ってるじゃないか……」




 だからちょっと疲れ気味なのかな?ほんとに申し訳ない。



「まあいいわ。さ、さっさと帰りましょ。始発に乗るためにもこの時間帯に起きているのよ」




 中ノ崎としてはさっさとこの家を出て行きたいのだろうか。この家は中ノ崎にとってそんなに居心地が悪いものなのか。



♢♢♢♢♢



 その後は特に何もなく、無事に僕らの元いた鬼勇駅に戻ってきた。来た時よりも、ものすごくスムーズに。



 ただ、道中、中ノ崎のテンションがちょっと低く、口数が少なめなのが気になった。いつもの毒舌もなんだかあんまりだった。



 僕のせいで眠たいのか、それに加えて疲れが黙っているとかもあるのだろう。それとも朝が弱い?



 まあ、色々考えられるが、とにかく、どことなくだが、元気がない感じがした。




「じゃあ、雪宮君。また明日、学校で会いましょう」



「あー、中ノ崎、よければまた家まで送って行こうか?」



 一応聞いてみる。僕としても早く家に帰りたいところではあるのだが、中ノ崎をなんとなく送っておきたい気分だった。もちろん下心は決してない。




「……いえ、その必要はないわ。雪宮君も疲れているでしょう?家、結構ここから近いから。それに、もう少しで私中二病になっちゃうから、そうなれば雪宮君に迷惑かけちゃうし」




「んまあ、そう言うならやめとくよ。じゃあ気をつけて帰ってくれよ」




 ここで無理に送る必要はない。しつこい男は嫌われちまうからな。




「ええ、分かったわ。また明日」




「うん、じゃ、また明日」



 そう言うと僕らは手を振り、別の方向へそれぞれ進んだ。また明日会おうと、お互い言葉を交わして。




 だが次の日、中ノ崎二那は学校には来なかった。

なんか語尾に♡つけるのいいよね。なんか可愛い感じと、相手を煽り散らかす感じと若干のエロスを感じます。



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