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第17話 日記

 はい、20日より早くなることを匂わせておいて結局20日になる筆者は私です。遅れてないから許してクレメンス。


 さて、この物語ですね、今回のお話で10万文字を突破いたしました!10万字ですよ!まあ、10万字の割に全然話は進んでいないんですがね(笑)この調子で頑張ります。


 そんな10万字記念の17話は少し、いや、だいぶ暗いお話なので、ご承知を。(10万字記念だから明るいお話が書きたかったけど!)

「雪宮君、行くわよ」


「お、おう」



 修羅場は一旦切り抜けた(?)ので、中ノ崎の部屋へと向かう。中ノ崎父は『ごゆっくり』と言って、家の中に戻った。ごゆっくりできないよ……。



「ごめんね、雪宮君。あんなとこ見せちゃって」



 うん、ほんとにな。こっちの気持ちを一応理解してくれてるようで助かる。



 中ノ崎の部屋は二階にあるらしく、階段を上り、二階へ行く。途中で中ノ崎家の誰かと遭遇したらどうしようかと思ったが、大丈夫だった。



「ここが私の部屋よ」



 二階の一室のドアの前に着く。普通のドアである。この先にはどんな部屋が待っているのやら。



 ガチャリ──ドアノブをひねり、中ノ崎がドアを開ける。当然誰かが電気をつけてるわけではないので、部屋は真っ暗である。



 中ノ崎が電気をつける。そして部屋の全貌が見える。



「ふむ、結構埃っぽいとか考えていたけれど、誰かが掃除しておいてくれたのね」



 そう言いつつ、中ノ崎は部屋のドアを閉める。誰かに見られたくは……ないな。



 この部屋を誰かが掃除していた──つまり、中ノ崎を完全に嫌な奴というか、厄介者としては見ていないようだ。


 そこまで中ノ崎家の家庭間環境は深刻ではないようだな。一応、中ノ崎が帰って来れる準備はしてある……って解釈でいいんだよな?



 中ノ崎の部屋は特に怪しいものとかがあるわけでもなく、普通に普通の部屋である。



 中ノ崎はオタクチックなところがあるので、当然アニメグッズはある。フィギュアも、中ノ崎が現在住んでいる家の方にもあるが、こちらの家にも数体いるようだ。引越しの際に持って来れなかったのかもしれない。



 あとはなんだが難しそうな本……に、見えたが、ラノベだった。ラノベ、漫画が多く並んでいる本棚があった。



 いや、ラノベが難しい本ではないと、言っているわけではなく、本格ミステリなどもっとこう、僕みたいな奴が読むには難しい、なんとも頭の良さそうなやつが読む感じの本がずらっと並んでいるかと思ったが、案外そうでもなかった。少し親近感が湧いた。



 そして、勉強机、服とかが収納してあると思われるタンス、ベッド……うん、二回目になるが、普通の部屋だ。




「雪宮君、人の部屋をジロジロ見て楽しい?」



 なんとも少し嫌そうな声で話しかけてきやがる。



「……そりゃ、ジロジロと見ていたように思うかもしれないが、普通に見ているだけだぞ?初めて来る人の部屋を観察するっていうか、一通り見るのは一般的だと思うんだが?」




 まあ、少し注意深く見ていたのはこの部屋の主が中ノ崎二那という人物であることもあるが。いわゆる、天才(しかも女子である)の部屋というものは気になってしまうのが人の性であるだろう。



「まあ、そういうことにしといてあげるわ」



 いや、下心とか、少ししかないんだが?まったく、疑わないでくれよ。



「んで、私は何をすればいいわけ?確か、私の『想霊』──要は『中二病』になった原因を探せばいいわけね?」



「ああ、そうだ。早速で悪いんだが中ノ崎、今この部屋に来てみてなんか手がかりになりそうなものはあるか?」



「ふむ、そうねぇ……あっ、」



「ん?どうしたんだ?」



 突如何かを思い出したような声を上げる中ノ崎。何か手がかりでも思い出したのだろうか?




「雪宮君。少しドアと睨めっこしててもらえるかしら?」




「は?ど、ドアと睨めっこ……?」




 何を言ってるんだこいつは急に。ドアと睨めっこ──つまり、なんか見られたくないものでもあるのか?



「いいから、ほら、ドアと睨めっこ!雪宮君って虚無になる時とか多そうだからドアと睨めっこするとか得意そうだし!」



「僕を勝手に謎キャラに仕立て上げるな!そんなことしねぇよ!」



 多分そうなってたら夏世あたりになんかされると思う。何をされるのかはその状況になったことがないので分からない。



「いいから早く。ドアと睨めっこするか、私に目を潰されるかどっちか選びなさい」



「わ、分かった、分かったよ……睨めっこするから、目は勘弁してくれ……」




 というわけで僕は中ノ崎の部屋のドアと睨めっこを開始した。まあ、睨めっこと言っても別に変顔をするわけでもないが。



 このドアはどうやら内開きなので誰か来たら僕は潰されてしまうだろうな。これがギャグ系の何かしらだったら、僕は壁とサンドウィッチになってペラペラになってしまうのがオチだろう。いや、この世界、割とギャグ要素多いな。



 まあ、外開きなら外開きで開けた瞬間対人の本当の睨めっこが始まりそうなので、実際そっちの方が怖い。



 一応、聴力は封じられてはないので、中ノ崎が何をやっているのかは、耳からの情報で少しは想像できるのだが……。



 うーむ、勉強机がある方向から音がする。引き出しを開け、ペラペラと、何かノートのようなものをめくっているのか?



「………なあ、いつまでこうしてればいい?」



 ドアと睨めっこするの、割とつまらないんだが。



「ふむ……う、うーん。まあ、いいか……」



 何がいいのやら。僕は中ノ崎の様子を見ることはできないので把握することができない。



「はあ、いいわ雪宮君。こっち向いていいわよ」



 むむ、案外早かったな。振り返り、中ノ崎の方を見る──何かノートのようなものを手に持っている。



「なんで僕は今ドアと睨めっこをさせられたんだ?」



「……少し、()()の中身を確認するためよ」



 中ノ崎は手に持ったノートをこちらに向けてひらひらとさせた。要はあのノートの中身の確認をしていたということだろう。



「なんだ?そのノート」



 なんか見られたくないことでも書いてあるのだろうか。



「……日記よ」



「日記?」



 日記──毎日の出来事を書き残すアレのことだよな。まあ、確かに日記っていうものは人に見られたくはないだろうな。



「そう、日記。私ね、小学5年生ぐらいから今までずっと日記書いているの。それの中学2年生のがこれよ」



「で、その日記がなんなんだ?」



「私の中学2年のもの──つまり、『中二病』になった頃の日記って訳。どう?手がかりになりそうじゃない?」



「まあ、そうだな。過去のお前の気持ちとか、状況が分かるのはまさしくそれだな」



「……私がパッと見たところ、まあ、あんまり見られたくはないけれど、解決するためなら雪宮君にも見せていいかなってレベルだから、見せるわね」



「見せていいかなってレベルじゃないものもあるのか……?」



「まあ、現在の私より過激ではないかも」



 ヒェッ。怖いなぁ。でも少し今の中ノ崎の過激な日記、興味あるな……。



「ほら、雪宮君の方が『想霊』に詳しいんだから、早く見てちょうだい。質問なら答えてあげるから」




「分かった。ちなみに『中二病』になった時の日記はどのページだ?」



「えーっとね……あっ、ここよ、5月10日」




「どれどれ……」



 僕は中ノ崎から日記をもらい、5月10日のページを見る。



「ああ、雪宮君読む前に一つ。そのページの前後を読むのは構わないけれど、その、結構、暗いこととか書いてあるから、読みたくなかったら無理に読まなくてもいいからね」



「……お前は読まれてもいいのかよ」




「ええ、早く『想霊』が解決してくれた方が嬉しいもの」



 まあ、僕が見たところで枯井になんとかしてもらうつまりだから、あいつ次第ではあるんだが……まあ、黙っておこう。



〈5月10日〉


『おかしい。とにかくおかしい。この文を書いているのは5月11日だ。なんで11日なのかも後で書く。


 今日、私の体が変だった。具体的に言えば、体の自由が効かない。誰かに勝手に操られてるみたいに、声も発せず、ただ、目線だけは共有されていて、私を誰かが動かしてる……みたいな。



 しかも、変なのが、体が自由に動かせない期間、頭のおかしな発言、俗に言う、中二病みたいなことをを言ってしまう。


 『我は魔王だ!ひれ伏すが良い!人間ども!』みたいな。そんな発言を学校の中、家の中でしてしまった……。そのせいでみんなの笑いものにされた。死にたい。


 でも、今はこうして、自由に体が動かせている。日付が変わった途端、自由に動かせるようになった。何故?WHY?分からないことだらけだ。


 家族のみんなにも説明したけど、笑ってて相手にしてくれない。ふざけてると思われてるんだ。



 ……どうしよう。また、こんな感じになっちゃうのかな。学校行ってる間……また笑われちゃうな。今まで静かな優等生だったのに1日でイメージが崩れちゃったな。



 ああ、どうしよ。学校……行きたくないな。でも、行かなきゃ、家族のみんな心配しちゃうしな。


 もう、こんなふうになりませんように!今ならまだ、笑い話になって、みんなそのうち忘れてくれるよね』



 ……これで5月10日の日記は終わっている。そりゃ、こういう反応になるって感じの文章だな。


 今だからこそ中ノ崎はなんだか慣れてるような感じを見せてはいるが、初めてなった時、めっちゃ怖いよな。



 僕も初めて『想霊』と遭遇した時……今でも思い出す。あの時は本当に死ぬかと思った。まあ、今はその話はいいか。



 他のページも見ることにした。では次の日の5月11日から、色々見てみるか。



〈5月11日〉


『どうしよう。昨日と同じく、今日もおかしな言動を沢山してしまった。そしてやっぱり、体の自由は効かずに、今、日付が変わったタイミングでまた体の自由が戻った。


 これの原因はなんなんだろう。なんかの精神疾患?それとも二重人格に目覚めたとか?誰かに操られてる……?


 原因は分かんないけど、お父さんに頼んで、明日、お父さんの知り合いの精神科にに連れてってもらうことになった。お父さんはそんなんで病院に行くなんてどうかしてるって思ってるかもしれないけど、私にはとても大きな問題だ。


 あーあ。私、頭おかしくなっちゃったのかな。今日も沢山笑いものにされちゃったな。一部、ドン引きしてくる人とかもいたなぁ。だる絡みしてくる男子が一番やだ。私はやりたくてこんな馬鹿なことやってるんじゃない』




〈5月12日〉


『今日は土曜日だから休みだった。そしてお父さんの知り合いがいる精神科に行った。色々検査とかしたけど、よく分からなかったらしい。


 なんで?なんでなの?なんで分かんないの?いや、病院の先生も知らない新種の病気かもしれない。それはそれで怖いし、『中二病みたいな言動をしてしまう病気』なんて、他人から見たら、ただの中二病なんだよなあ。



 どうしよう。時間が解決してくれるのかな?こういうのさ。分かんないけど……なんだろう。終わらない気がしてきた。一生こんな感じで生涯を終えてしまうのかな?一生、どこに行っても、みんなの笑いもの……私を理解してくれる人なんていないんだろうな』



〈5月14日〉


『今日も治ることなく、学校で笑いものにされた。いや、今日はもっと最悪だった。もはや笑いものにすらされなくなった。みんな私のことを鬱陶しく思ってるみたい……。そうだよね。だって私がみんなの立場なら、私みたいなやついたら鬱陶しく思うよね。


 私は今まで『優等生』『天才』っていう肩書きでクラスのいい感じの位置にいたのにさ、この『中二病』のせいでさ、ただの頭のおかしい奴になっちゃったんだ。


 いや、元々、私はクラスに馴染めていなかったか……。どうしよう。誰か、助けてよ。私……どうなっちゃうの?』



 読むのがだんだん苦しくなってきた。オチ──というか、どういう展開に転ぶのかは大体予想がついてしまう。


 だが、まだ僕は続きを読む。読むことでこいつを救う手がかりになるのではと思う。中ノ崎は、『助けて』と確かに書いた。今の中ノ崎も同じ気持ちだろう。



〈5月18日〉


『今日はみんなにいじめられた。何をされたかは思い出したくないから書かない。先生にも言えないんだよ。自由に体動かせなくて、喋れないんだよ。辛いよ。誰も私のこと理解してくれない。


 メールで昨日、私の体が自由な時、友達──というか、比較的話せる学級委員の●●ちゃんに説明したけど、理解してくれなかった。これも変な設定の一部だとでも思われてるのかな。



 最悪なのが、●●ちゃんが他の男子とかにも、そのこと言ったこと。私には聞こえないように言ってたみたいだけど、ちゃんと聞こえるんだよ。言ってたっていっても、馬鹿にするみたいな感じでさ。



 それを聞いて男子がケタケタ笑ってるわけ。ドン引きしてる奴もいたな。



『●●ちゃん可哀想……中ノ崎にそんなメール送られるなんてさ』


『しかも、送ってきたの日付変わってからだよ?私もう寝るっつーの!』


『メールブロックしたら?』


『それ、良くね?』


『いやいや、あとあとめんどくなるわーそれ。中二病卒業してからさ、私恨まれそー』


『確かに!それだりぃな』


『てか、中ノ崎ってさ、元々よく分かんないよな。クラスに馴染めてなくてさ、頭とかいいし、運動もできるけど、コミュ力全然ないよな』


『それな。話したら話したでさ、ちょっと偉そうだし』


『ってことは元々終わってた?ってこと?』



 っていうやり取りもあった。確かにそんな遅くにメール送るの、悪いとは思うよ。でもさ、私その時間しか体が自由に動かせないんだよ。



 もう恨んでんだよカス。だりぃのは私だ。勉強も運動も私以下の奴が私に偉そうなこと言うな。偉そう?お前らもだろうが。私のこと何にも知らずにさ。終わってる?お前らの方がよっぽど終わってるんだが?



 ああ、もう消えたい。お父さんもお母さんも最近私のこともうダメだって思ってるよね絶対。いや、もうさ、消えろよみんな。それができないなら私が消えてやるから』



 なぜだろう。僕はこれが他人事とは思えない。いや、実際、他人事ではないのだが、僕も同じようなことを経験した。



 いや、もちろん中ノ崎と状況も何もかもが違うが、僕も同じことを、みんな消えればいいって思ったこと、ある。



 僕が思う以上に中ノ崎は追い込まれていたようだ。僕は全然分かってなかった。あいつを早く助けてやりたいと思った。そのためには……まだ読まなければ。少しでも枯井にヒントをあげれるように。



 『中二病』が始まる前──5月10日より前の文章を読んでみることにした。



〈5月9日〉


『今日は特に何にもなかった。うーん、思い出してみよう。そうだなぁ、今日の給食、クレープが出た。


 給食で出てくるクレープは好きだからおかわりしたかったけど、じゃんけんだった。男子がじゃんけんしちゃうと、やりずらいな……。


 あーあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。コミュ力が欲しいぜ』



 ふむ、なんとも普通だな。日記というとは普通、こういうものだろうな。さっきのページのとのギャップがすごいな……。人って数日でこんなに変わってしまうんだ。たった一つの出来事で……。



 他の日も見てみると……ふむ、しばらくは手がかりになりそうなことは書いてない。普通の日記である。


 と、思っていたところに、少し気になる日があった。



〈4月29日〉


 『いや、ふと思った。だってよくよく考えたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってめちゃくちゃ怖くね?



 いやいや、普通に怪奇現象じゃないか!うーん、なんではじめに返事が来た時気づかなかったのかな?少し疲れてるかも私』



 ん?なんだこれ?『箱に手紙を入れていたら勝手に返事がくる』だと?どういうことだこれ?

 はい、お疲れ様です。いやぁ、うん、なんとコメントしたら良いか分からないです……。


 まあでも、一つ、ハッピーエンドにしたいなぁって思ってます。なのでそのためにあえてここは落としておく……ってことで。



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 次回は7月25日までに投稿いたします。お楽しみに。

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