第13話 新世界(改札の向こう側)へ
はい、遅くなりました。まあ、もう誰も僕の投稿スピードに期待している人なんて居ないと思いますがね。では今回もお楽しみにいただけると嬉しいです。
「でさ、兄貴、実際中ノ崎さんの家で何したの?」
「ん?まあ、普通に世間話とか、特にアニメの話は多くしたな」
「ほほー、中ノ崎さんは、分かる側の人なのかい?兄貴」
なんだ、分かる側って。僕そんなん聞いたことないぞ。
夏世は結構アニメ好きである。僕以上に熱心である。そして同人誌を結構読む。多分18禁のやつとかも普通にもってる……。ほんとどこから入手してるんだか……。
そして、夏世の恐ろしいところは、なんかアニメのいい感じの男性キャラと、僕のカップリングで、BLを想像していることがあるのだ……。怖いんだよ。うん。
別にBLを否定するわけではないのだが、こいつの怖いところは、そもそも、二次元と現実を入り交ぜているのが怖い。
さらに、自作のssとか(出来がいいと僕に見せてくる。やめてくれ)、あとは、セクシーなBL的な絵を描いてくることもある。
ほんと、なんで僕なん?って思うけど、夏世曰く、『いいんだな、これが』とのこと。よく分からん。
中ノ崎もBLとか読むのだろうか。部屋をぱっと見たところはなかった。案外腐女子だったらしてな。
「分かる側ってのがよく分からないが、アニメ詳しかったぞ」
「へぇ、少し興味が沸いてきたなぁ。今度会わせてよ兄貴」
「まあ、中ノ崎がいいよって言ったらな……」
実際、いいよと言ってくれるのだろうか。しかし、僕としては中ノ崎と夏世が出会うと、とんでもないような気がするのは気のせいだろうか。なんというか、根拠はないが、やばそう。
「よっしゃ!ところで兄貴、どんな人なの?中ノ崎さんって」
どんな人──か。どんな人って説明すればいいかな?
「なんか、うーん、『面白いメンヘラ』かな?」
本当にメンヘラなのかは分からないが、自分で言ってるし、なんとなくメンタルがヘラってる気がするため、メンヘラだ。
「それ、あたしじゃね?」
「断じてそんなことはないぞ。言っとくが、お前はメンヘラなんて可愛いもんじゃないだろ。『クレイジーサイコブラコン型変態』ってとかだな」
面白いかは置いておいて。
「むー、その肩書きの方がかっこいいからそっちの方がいいな!」
どういう感性してんだよ……。
「まあ、気に入ったならいいよ……」
しかし、夏世のことだ、僕がその肩書きをつけたことを言いふらしそうで怖いな。
友達とかに、『ふふん、今日からあたしの肩書はクレイジーサイコブラコン型変態だぜ!ちなみに兄貴につけてもらった!』
とかな……。
その後、夏世は勉強するとか言って部屋に帰った。そうか、忘れてたけどあいつ高校受験の年だったな。どこに進学するのかは知らないが、北鶴高校には来ないでいただきたい。
まあ、今のあいつの学力だと少し厳しいものがあるだろうがな。
いや、あいつの執念なら僕がいるという理由だけで入学してきそうだ。
しかし、僕がいるからってあいつはそこまでするだろうか。正直、やめて欲しい感じはする。
理由は僕が迷惑だから──という理由も当然あるのだが、高校の進学先という人生の大きな選択の一つを僕を基準にして考えてほしくないのだ。
そういえば、夏世は将来何がしたいのだろうか?今まで聞いたことはないな。
高校は夏世の将来に繋がる進学先にして欲しい。それが僕の第一のあいつに関する願いだ。
まあ、北鶴もいい学校なんだがな。夏世はかなり個性の強い方だし、北鶴でも上手くやるだろう。
ま、兄としては妹の受験を応援するのが一番だろう。どこに行こうとそれは夏世の人生だしな。正直なところ、あいつの好きにして欲しい。きっとあの世の両親もそのようなことを願うだろう。
だが、雪宮家の人間が夏世の人生に悪影響を及ぼすならば──それは、それだけは全力で阻止しなければならない。僕のできる全てを尽くしてだ。まあ、そんなに僕が何かができるわけではないが。
♢♢♢♢♢
「はーはっはっはー!おー、盟友!本当にくるとはな!やはり上位存在は侮れない……な。我々の『幻想運命』の複雑性と異常性すらも計算に入れ、解を導き出したというのか……」
「よ、よお、中ノ崎」
初っ端から中二病前回でなんだか置いていかれてるような感じがするのだが……。
現在時刻は23時すぎ。中ノ崎に指定された鬼勇駅という、中ノ崎の家からの最寄駅の東口に僕と中ノ崎はいた。
夕食を食べて、時間を潰し、雪宮邸から自転車を漕いできたというわけだ。またまた雪宮家の人間からは何も言われなかった。夏世、つばめ辺にはいってらっしゃいぐらいは言われたな。
中ノ崎の格好は中二病という格好ではなく、ジャージだった。ジャージに黒いカバンを肩から提げている。
中ノ崎が着ているジャージは、高校のジャージではなく、おそらく中ノ崎の中学の頃のものだろう。
とはいっても、ジャージ以外はいつもの黒い眼帯をしていたり、袖から手が見えているが、その手も包帯でぐるぐる巻きである。勿論、怪我なんてしてないだろうな。
「お前がジャージなんて珍しいな。いつもはもう少しぃ、その──かっこいい感じのファッションしてるだろ?」
『かっこいい』と表現させて貰ったけど、実際はほぼお世辞である。
確かに、赤と黒を貴重としたあの中ノ崎のオリジナル制服は確かに僕のうちに眠る中二心をくすぐるものではあるものの、本気でかっこいいとは思えないため、まあ、機嫌をよくするためのお世辞とでも言おうか。
「ふむ、我も実はもっと別のクロスを身に纏いたかったのだが、上位存在からの命令でな、格好にも指定があったのだよ」
「なるほどな」
中ノ崎(本来の)にしてみれば、自分の体であのような格好で出歩かれたら困るしな。指定をするわけだ。
「しかし不思議だな。どうして盟友はここにいるのだ?盟友も上位存在に呼び出されたのか?」
「いやぁ、それは……」
どうやって答えようか。中ノ崎(本来の)からすれば、上位存在が自分であることはバレたくないはず。僕は確かに中ノ崎に直接呼ばれたわけだが……。
「僕は上位存在からテレパシー的なやつで呼び出されてな。ここに来たというわけだ」
それとなーく、中ノ崎の設定を崩さないように僕なりに頑張って考えた言い訳である。
「ふむ、よく上位存在という怪しい存在の言うことに従ったな盟友よ」
確かに中ノ崎(中二病)からすれば、上位存在とは正体不明の存在であり、その正体不明の存在に僕は従っているというわけだ。
普通に考えたら確かに異常な行動をしているな僕。だが、その指摘をまさか中ノ崎(中二病)からされるとは思わなかった。絶対こいつの方が頭おかしいのに……。
「我はな、置き手紙のようなものがあってな、それに書いてある命令に従ったというわけだ。その中に盟友の名前もあったからびっくりだ」
「僕の名前もあったんだな」
多分、雪宮創一と合流して、うんたらかんたら〜みたいな感じで書いてあったんだろうな。
「しかし、本当に上位存在とは何者なのだ?我が常に『第七式結界』を展開している聖域に侵入するとは……恐ろしい奴だな。我が六回の改良を重ねて生まれた『第七式結界』を破るやつなど今まで見たことないぞ?」
逆とに言えばこいつが過去作ってきた六つの結界はどれも誰かしらに破られてるというわけなのだろうか?
まあ、『見たことない』のは単純に中ノ崎のいう『第七結界』とやらがリアルには存在していないからであろう。
あと、どうでもいいというか、すごく今更なのだが、中ノ崎(本来)の意識がある時というのはこいつはどういう感覚なんだろう。寝てるような感覚だと勝手に予想する。
そのような中ノ崎の戯言を聞きながらホームを目指し駅の中を進む。中ノ崎のご両親が住む方の家の最寄駅──良篠駅へ向かう。
3番ホームから行けるようだ。鬼勇駅から数駅行ったところにあるが、僕は降りたことはないので、どんなところかは分からない。
中ノ崎は切符売り場の付近に行き、こう提案してきた。
「さあ、切符を買うぞ盟友!」
もう日付が変わるってのにテンションの高い奴だ。しかしだな──
「あー、中ノ崎さ僕、電子マネーあるからそれで払うんだけど……」
僕は最近では電車に乗るのであれば、切符なんて買わずに電子マネーで済ませてしまうのだ。
「なぬ?切符を買うのが醍醐味ではないのか?全く、盟友は都会に染まってしまっているのか?我の元いた世界では切符を買い『暗黒列車』という列車に乗っていたものだな……」
なんだよ都会に染まるって……。せめてこうさ、もっと中二病らしい言い回しを……だな。しかし、『暗黒列車』は中二病ポイント高いぞ。
「いや、まあ、そうでもないよ。都会に染まるほどここは都会ではないし、都会にもあんまり行かないしさ。てか、今はここら辺の人も大体の人が電子マネーで改札を通っている印象を受けるな」
僕らが住む街はまあ、田舎とは言えないし、都会にも振り切れていない、中途半端な街である。
そんな街でも大体の人が電子マネーを使っているのだ。中ノ崎の切符を買うのが醍醐味だというのは分からなくはないが、やっぱり大半の人はロマンより時間を優先するようだ。
まあ、僕からすれば改札を『ピッ』として素早くというか、自然に通過していくっていうのもロマンを感じるがな。
「むぅ……」
不貞腐れ、頬を膨らましている中ノ崎。不意に、少し可愛い……と思ったわけではないのだが、こう、ね、男子の心をくすぐってくるなあ。
「今から乗るのは『終電』だぞ?『終』なんだぞ?ここで我々は終わるかも知らないんだぞ!?」
「だからなんなんだ?」
『終電』って、そんな物騒なもんじゃないぞ。電車に乗るだけで終わってたまるか。
「だからその……記念としてだな、取っておこうというわけだよ!」
言ってることが滅茶苦茶だよこの人。文脈が捻じ曲がってるよ。終わるのに記念ってなんだよ。終わるってことは死を意味するんだろ?それなのに記念って……。遺品かなんかになるってことか?
「あー、要はさ上位存在に呼び出され、こうやって電車に乗ったことの記録というか、そういうことのために形として残るものが欲しいってことだろ?」
「そ、そうだな!盟友!そんなところだ」
なんでちょっと動揺してるんだろ?動揺してる上になんだか嬉しそうである。何が嬉しいのだろうか……?中二病の考えることは分からん。
「それでも盟友は切符……買わないのか?」
「ん……いや、まあ電子マネーでも──
中ノ崎は何故か僕に接近して、正面に立ち、上目遣いをしてくる。
中ノ崎は僕よりも少し背が低いぐらいで、僕のクロスバイクにも乗れるぐらいの女性にしてはかなり高身長だと思う。
しかし、その高身長からの少し不器用な上目遣い──頭の中には疑問が渦巻いているがそれよりもだ……この、誰もが夢見る(『誰もが』は主語がデカいか)シチュエーション、上目遣い──それをされているのだ。
あの中ノ崎にだ!何が目的なのかはほんとにに分からないが、要は僕にも切符を買って欲しいのだろう。そこが分からないほど僕は童貞じゃないぜ(童貞だけど)。
「か、買ってくれないのか?」
もしだ。こいつがマッチ売りの少女なら多くの人が買うだろう。バカ売れするはずだ。中ノ崎は美人である。中二病状態でも無駄なことを喋らなければ美人だ。
まあ、童話の『マッチ売りの少女』の少女が美人だったのかは知らないが、可愛らしい少女がマッチを買ってくださいと頼んでいたら普通、手を差し伸べるだろうな。
まあ、愚かな僕は『マッチ売りの少女』がどういう結末だったか正直忘れてしまったが。
「やっぱ僕も切符にするよ。切符、久々に買いたいしな。時間もまだあるみたいだし、形に残るってのはやっぱ大事だよな!」
ここは空気を読んで中ノ崎に合わせる。まあ、価格は変わらないしな。切符を久々に買いたいという気持ちは割と本当である。昔は改札から出てくる切符にかなりロマンを感じたものだ。
「おお!さっすが盟友!やはり盟友は盟友だ!」
大声で中ノ崎はとても喜んでいて、とてもニコニコである。そんなに嬉しいか?と正直思ってしまうが、少女の気持ちというのはどうも僕には理解できない。ラブコメの読解がまだ足りないかな?
というわけで僕と中ノ崎は切符を買った。久々で少し手間取ったのはあるあるではなかろうか。
切符を入れ、改札を通る。切符が出てくるのを見たのはかなり久々だ。
「ククク……盟友よ……これで我々はまた一歩、『新世界』に足を踏み入れてしまったなあ……」
中ノ崎は怪しく笑いながら言う。なんだその『新世界』って初めて聞いたワードだぞ。
てか、公共の場で中二病発言をされると一緒にいる僕がとてつもなく恥ずかしいのだが?まあ、時間帯的にあんまり人がいないのが救いか。
『新世界』というのがどういう意味なのか知らないが、新世界とやら(改札の向こうと解釈すれば)に行ったとて、いづれは旧世界(改札を通る前)に戻るのだが?少なくとも、僕は戻りたいぞ?
「そうだなー」
なんとなーく反応してやり過ごす。
「なんだよ盟友、もっと盛り上がっても良いところだと思うのだが?」
「いや、今ここでそんな体力使ったらさ、その、上位存在の刺客とかが来た時にさ、やられちゃうかもしれないだろ?」
本当はそんなことはなく、上位存在というのはもう一人のお前だよ、中ノ崎──と言ってやりたいところだが、控えておこう。
「ほほお、なるほどな盟友。まあ、油断は禁物だな。この先の『新世界』になにが待ち構えてるか分からないしな。我の『魔神眼・極』の能力の一つ『未来視』でもこの先のことは予測できない……気を引き締めるべきではあるな」
そんな便利な能力あるんだなこいつ。確か──なんだっけ?こいつの設定あんまり覚えていないが、魔王なんだっけ?まあ、魔王ならこれぐらいできても当然だな。
「だが安心しろ盟友よ。いざとなったらこの両腕の封印を解き、我の七大魔術の一つ『破滅する世界』で全てを消し炭にしてやろう……」
わーこわいこわいよー。七大魔術こわいよー。という冷めたリアクションを心の中でしつつ、ふと、昔の自分を思い出す。中ノ崎ほどではないが、僕も中二病だった時はある。
今思い出すと全身が張り裂けそうなほど恥ずかしいのだが、僕も十個ぐらいすごい強い技考えたものだ。必死に覚えようと努力したことがあるな。
今思えばそんなことより英単語の一つでも覚えておけとでも思う。
それを最近、僕の机から出てきた例のノートを見た時思い出した。ほんと、見なきゃよかったけど、割と面白かった感は……少しだけする。
「分かった、頼りにしてるよ」
「おう!盟友よ!任せてくれ!」
嬉しそうに返事をする中ノ崎。なんか、こいつ少し変わった?なんというか、変だ。
確かに中ノ崎との友好関係は深まった。本来の方も、中二病の方も。それでなんというか、いい意味で馴れ馴れしくなったのかもな。それでこのようにテンションが上がってしまっているのではないだろうか?
いや、元々こんなテンションだったっけ?同じ見た目にも関わらず中身が違うやつを相手してると分からなくなってしまうなぁ。
切符って久々に買おうとすると、『どうやって買うんだっけ?』ってなりません?僕は割となりますね(笑)。
中二病的な技名とか考えるの結構楽しいです。暇な人はやってみるといいですよ〜。それっぽい単語は調べたら出てくるのでね。
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