第11話 結婚しよう
はじめに。
↓タイトル詐欺です。結婚などしません。追記、タイトル少し変えました。
亜門つばめ──こいつの紹介というか、過去の話をするのは、とても時間がかかるし、あまり話してて気持ちのいいものではない。
なので詳しい話はまた別の機会にさせていただこうと思うのだが、まあ、ここでは簡単に、亜門つばめという人物をご紹介しよう。
亜門つばめ──雪宮邸に仕えるメイドの一人。僕より2つ年上。
髪は藍黒色という、まるで燕のような色をしたショート。
身長は147センチと、まあ低めである。本人は『これも個性です。刺さる人にはきっと刺さります』と、どういう意味なのかはあまり触れたくないコメントをしている。
趣味はトレーニングと、漫画を読む、ゲームをすること(僕のを勝手に使って!)。
勉強は──得意ではない。何故なら、十分にやらせて貰えてないから。
つばめはとある事情により、10歳──つまり、小学4年生の頃から、雪宮邸に仕えている。その経緯も長いので、まあ、またの機会に。
その時から──いや、その前から、もう彼女の人生は崩れ始めたのかもしれない。
小、中学は義務教育ということで、通っていた。しかし、帰ったら、すぐに仕事──昔の彼女のスタイルというか、彼女に与えられていたことは、『お手伝い』である。
子供の頃、お手伝いをしたことがある人は大半だろう。
家族のお手伝いをする。それは、労働ではない。児童労働というのは、僕は憲法に詳しい方ではないが、多分、日本国憲法では、禁止されているはずだ。
しかしどうだろう。『お手伝い』という名称をつけてしまえば、合法となる。
いや、合法ではないのだが、『住まわせてもらってるから、これぐらいやってよね』という、なんというか、脅しというか、義務的に労働をさせていた……。
掃除、雪宮邸が広すぎる為、とても重労働。食事、とても多くの人間が住む雪宮邸では、とても準備が大変だ。
しかも、大半が性格が悪く、文句ばっかり言う。洗濯、食事と同様に人間が多すぎるから、大変だ。そして、その他雑務など。そして──性的奉仕。なんていうものもある。
現代は平等が謳われている世界の筈なのに、雪宮邸──否、雪宮邸に限らず、この世界は──いまだに、日本といういわゆる先進国でも、平等は保証されていない、闇の部分というのはある。その一例が、雪宮邸の使用人たちだ。
『雇用させてやっているから』、『巨大な権力を持っているから』──そんな理由で、他人を時に、理不尽に扱うこともある。世界には未だ、そんなクズが蔓延っている。
まあ、僕もこの雪宮邸に住んでいるから、その一員なのかもしれないな。
そんなこんなで、つばめは小、中学校はろくに勉強もできず、遊ぶこともできず、友達も──作るなと、言われたそうだ。
そして、高校には入れてもらえなかった。というか、本人が希望して入らなかったそうだ。……大人たちの圧力によって。
そうして、今もなおこの雪宮邸で、住み続けて、働き続けてるというわけだ。
軽く説明しただけで、結構長くなってしまったな。まあ、彼女は沢山の闇を抱えているのだ。
なんかもう、亜門つばめという人物を本格的に説明するのはとにかく難しいので、とりあえず分かってて欲しいのは──『闇を抱えた変なメイド』ってことだけ。
「ったく、僕疲れてんだよ?休ませてくれ……」
「ほお、創一は疲れているのですか、こんな時間まで一体何を?そこそこ心配したかもしらないですよ?」
なんだその日本語……。しかし、心配させてしまったのは申し訳ないな。
「ああ、ごめん、ちょっと友達と遊んでた──みたいな?」
我ながら苦しすぎる言い訳だな……。しかし、疲れていているのか、言葉が上手く出てこない。
「そうですか、でもこんな時間まで遊んでいてはダメですよ?限度ってもんを考えてください」
つばめは少し怒った顔をしている──ような?こいつ、表情があんまり表に出ないんだよなあ……。
だが、これも幼少期からの彼女の生き方が、強く影響しているのだろう。
「そ、そうだな。ごめん……」
ふっつーに怒られたんだけど、これ、僕が悪いの?今の説明では僕が悪いか……。まあ、中ノ崎が悪いわけでもないんだけどさぁ……。
「ていうか、こんな時間まで待ってるお前はなんなんだよ」
「ええ、つばめはあまり表情を出せないので、直接言いますが──
「うん?」
「創一にかまって欲しいです。だから創一が帰ってくる時間まで待っているのですよ」
つばめは真剣な眼差しでこちらを見ながら言う。
「そ、そうだったのか……」
ここまでストレートに伝えられるとは……。こんなことは初めて──ではないな。いつも割とこうやって言ってくるような気がする。
「ええ、つばめを待たせ過ぎですよ。これにはいつもは『動かない鳥』──ハシビロコウと呼ばれているつばめも、毎秒何十回も羽を羽ばたかせ、ホバリングを行うハチドリのように駄々をこねるでしょうね──」
ドヤ顔をするつばめ──
「なんだよその意味のわからない例えは!上手い事言ったみたいな顔してんじゃねえ!お前は『つばめ』じゃないのか!?」
こいつも深夜テンションで疲れているのかもな……。てか、こいつはこいつで鳥に詳しいのか?中ノ崎と話が合うかもな。
「それじゃあ、かまってください」
つばめは読んでいた僕の漫画をベットの上に置き、両手を広げ、まるでハグを求めるような形をとる。
「………僕はどうすればいい?」
「そんなの自分で考えてくださいよ。まあ、創一は童貞ですから、そんなことできるとは期待してはいませんがね」
「……高校生になったばっかなんだから、童貞はしょうがないだろ……」
逆にこの歳だと童貞じゃないやつの方が少ないだろ。
「いや、夏世様で捨てたんでしたっけ……?」
「妹で童貞捨ててたまるかあ!!」
それは、本当に終わってる奴だろ……。
「あれ?夏世様のお話だと、そうおっしゃっていたんですが……」
「あいつの滅茶苦茶な作り話なんて信じてるんじゃねえよ!」
あの野郎、つばめにも布教(?)してたとは!そろそろ止めた方がいいかなぁ?手遅れかなあ?
「私ごときには、とても夏世様の言うことを疑うなんて……」
「お前、僕だけに仕えるとか言ってたよな……?」
とある出来事がきっかけで、こいつは僕に忠誠を誓っている──僕はそんな忠誠とか、堅っ苦しいことは嫌なんだけどな。
「ええ、言いましたね。創一の言うことには従いますよ。世界でつばめに命令できるのは創一だけですからね」
「じゃあ、命令だ。夏世の戯言に惑わされるな」
「無理ですね!」
「さっきと言ってること違うじゃねえか!」
夏世信者がこれ以上増えたら困る!僕がどんどん恥ずかしくなってく……。
「いえ、つばめの言っていることは特に間違ってないですよ。だって、さっき言ったのは、命令できるのは創一だけです。とは言いました。それは事実です」
「ああ、確かに言ってたな」
「しかし、つばめは命令に従うなんて一言も言ってません!」
「お前なあ、『命令』って、普通、従わなければならないみたいな意味じゃないのか?だから、お前に命令をできるってことは、お前に僕はなんでもできるってことじゃないのか!?」
「ちょっと何言ってるか分からないですね。話が長すぎます」
無敵のフレーズ使うな。
「お前なあ、絶対夏世のくっだらない話の方が長いぞ……って、話変わりすぎ!なんの話してたっけ?」
「どうやって、創一はつばめにかまうのかっていう話です。どうですか?何か考えつきましたか?」
「そうだな……」
どうしよう……何も思いつかないぞ……。
「早くしてくれます?私も疲れているのですよ?」
「なんで疲れてんのに僕を待ってんだよ」
「それはッ……」
なんだよ、変な奴〜。
「一日頑張ったのを主人である創一に褒めて欲しいのですよ」
「褒める……」
ここで一つの行動が、頭によぎった──
僕はベッドの上に座るつばめに近づき、右手で──
「んん……」
頭を──撫でた。なでなでと。
「一日、お疲れ様。いつもありがとな!」
そんな言葉を添えて──。まあ、実際、つばめにはかなり助けられてる。
無くし物探してくれたり、部屋の掃除、ゲームの周回とか……まあ、とにかく、色々やってくれてる。とても僕はそれに助けられているというものだ。
「どうだ?満足か?」
「………」
無言──は肯定と捉えていいのか?
「嬉しい……」
小声で何か呟くつばめ。何を言っているのかは、正直わからなかった。
「なんか言ったか?」
一応聞き返してみる。
「いえ、なにも。ありがとうございました。待った甲斐があったかもしれませんね」
「なんでちょっと曖昧なんだよ……」
素直に喜んでくれてもいいというのに……。いや、そもそも、喜んでくれることを何故か前提にしてしまってないか?僕。
「さあ、じゃあもう部屋戻ってくれないか?僕疲れちゃってさあ。休日だし、休みたいんだよ……」
色々あって、よくわからなくなっているかもしれないが、今日は一応、土曜日だ。ちゃんと休みたい……。
明日──というか、今日の深夜からまた中ノ崎にお呼ばれなんだ。少しでも体を休めよう。まあ、悪夢のせいであんま休まらんがな。でも、寝ないよりはずっといい。
「ふむ、そうですか、それは申し訳ないことをしましたね、創一」
「お前も疲れてるだろ。早く寝ろよ」
「わかりました。では──
つばめはベットから起き上がり、僕の方を見る。やっぱ背が低いなこいつ。
そして──先ほどは述べなかったが、出てるところはちゃんと出てるのに、引き締まるべきところはトレーニングによって引き締まっている──すごい肉体だ……。
「なんですか?人の体ジロジロ見て。きもいですよ、その視線。やめた方がいいですよ」
なんというか、ゴミを見るような目で僕のことを見てきやがるなこやつ。
「ご、ごめん。そんなつもりはなかったんだけど(少ししか)もしかして、不快にさせちゃった?」
「まあ、いいですけど。つばめの体が魅力的なのは、つばめも自覚してますからね」
んん……僕は性的な奉仕は絶対につばめにさせたくはない。コレは、それに入ってしまわないのか、少し心配である。気をつけねば。
「そうか。じゃ、なるべく早く寝よう。お互いな」
「そうですね。おやすみなさい、創一」
「うん、おやすみ、つばめ」
その言葉を交わし、僕たちは、眠りに着くのだった。
★★★★★
「創一、朝ですよ」
「んあ?」
僕はつばめに起こされた。部屋に掛けてある時計を見る──午前8時。時計は、午前8時を指していた。
「なあ、今日は土曜日だぜ?つばめ。もう少し遅く起こしてくれてもいいんじゃあないか?」
「ったく、今日がなんの日なのかお忘れですか?」
つばめは呆れた顔でこちらをみる。
「あーーー」
なんだったっけか。今日は5月12日……あっ!
「そうだ!今日デートの日?……だったよね?」
「そうですよ。早く起きてください」
僕は急いで飛び起きる。くっそ、なんで忘れてたんだ僕!彼氏失格だ!
「はあ、こんなに可愛い彼女がわざわざ起こしに来てあげてるんですよ。早く起きてください」
「わ、悪い。急いで準備する!」
その後、つばめと朝食を共にし、洗顔、歯磨き、着替えなどをすまして、いざ、デートへと向かう。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだな!いや〜楽しみ!」
「……忘れてたくせに」
つばめの顔は拗ねてる様子だ……。機嫌、取り返さなきゃ……。
「ご、ごめん……。これから挽回するから!」
そう、今日は僕とつばめが新たな一歩を踏み出す大事な日になる!……のだが、始まりがこんなんとは……大丈夫だろうか……?
その後、車で少し遠くの水族館へと足を運んだ。
水族館は、僕とつばめ、どっちも好きで、前々から行きたかった水族館へ行った。
「つばめは、水族館では、イルカのショーとかより、魚が沢山泳いでる方が好きです」
「あー、それ分かるかも。イルカのショーとかも好きだけど、面白い生態の解説!とかの方が面白かったりするぞ」
「……つばめには難しくて、そういう解説、分かりません」
「まあ、雰囲気でいいんだよ!雰囲気で!」
楽しく水族館を周り、周ったあとは美味しいご飯を近場で食べ……気づけば、もう日が暮れて、夜になった。移動にかなり時間がかかってしまったからな。
そして、僕らは海辺の公園へ移動した。
「珍しいですね、こんな所歩きたいなんて」
今歩いているのは、海に浮かぶ橋の上。
「そ、そうかな、僕、結構こういうところ好きなんだけどな」
「そうですか、それは知りませんでしたね」
そう、ここでだ。僕はつばめに──
「なあ、つばめ、少し──いいかな?」
「なんですか?改まって」
やばい。心臓が張り裂けそうだ。失敗──断られたらどうしよう。そんなことばかり頭によぎってしまう──だが、ここで逃げる訳にはいかない!
「あ、あのだな!!」
「うお、急に大声。どうしちゃったんですか?顔、凄く赤いですよ」
「ほ、本当?」
確かに、顔が熱い。変な汗をかいてきたような……。落ち着け、僕!
「あのだな、つばめ。伝えたい事がある」
「……なんですか?」
ここで、決めるッ!
「つばめ、結婚しよう!」
言った。ついに言えた。アレ?でも、もっと前置きがあってから言うつもりだったのに、ストレートに言っちゃった!
「あはは。もっとこう、前置きとか、なかったんですか?」
「ご、ごめん、緊張して、全部飛んじゃった……」
「あはは、創一らしいですね」
僕の顔は今、真っ赤っかの林檎のような色をしているだろう。そして、つばめの顔を見る──同じように、赤かった。なんだか、安心した。
「へ、返事は……」
つばめはニコニコしながら橋の奥へと移動する。
「もちろん、つばめも創一のことが──
その時だった。つばめは突如現れたサメに──食い殺された──。
「うわあああああああああああ!!!つ、つばめぇぇッッッ!!」
つばめの鮮血が飛び散る。つばめを食ったサメは、そのまま海中へと帰った。
僕はただ、目の前の惨状に叫ぶしかなかった──わけではない。頭の中で、こう唱えようとする。
『くるるせべ、たんみや、こびとぞ』──と。
ああ、『くるるせべ、たんみ』までしか言えないなあ。つまりコレは──悪夢です。
はい、僕はこんな夢を毎日見ている。しかも、コレで終わりじゃないのがタチが悪い。一旦、今見ている夢に区切りが着いたら別の悪夢を見せられる。
まあ、今回のは割と良心的ではあるな。僕、死んでないもん。夢によっては、僕が死ぬこともある。
まあ、目の前でつばめが死ぬという、とてもショッキングな映像を見せられ、とても精神的にはくるのだが……。
さて、先ほど唱えようとした、『くるるせべ、たんみや、こびとぞ』というのはなんなのかというと、簡単に言えば、呪文である。
僕がこの悪夢を見始めた、ちょうど一年前ほど。枯井と出会い、この呪文を教えてもらった。
この呪文は、『現実と、悪夢、幻術の類の区別をつけるための呪文』である。
つまり、この呪文を唱えられたら、現実。そして、今回のように、唱えられなかったら、悪夢などであるというわけだ。
まあ、判別ができたところで、精神的にくることは変わらないし、疲れるのだが、まあ、現実ではないという安心感は得られる。
そして同時に、コレが現実で起こったら──ということを想像してしまう。
こんな感じで、僕は毎晩戦っているのだ。まあ、戦うと言っても、僕が一方的に理不尽を押し付けられてるんだけどな……。
悪夢パートが手抜きだなって思ったかもしれませんが、まあ、大事なところでもないですし、悪夢ですから、多少は……ね。
つばめの説明をしたがらない創一ですが、ラベ理科pの想定では、そこそこ長くなってしまうので、ちゃんと専用の章を用意して、説明というか、かけたらいいなと思います。
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さて、次回は章がそこそこ動きます。お楽しみに〜。




