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第10話 デュクシ──

 今回も投稿遅れてすみません!


 最近、新生活が始まった影響もあり、かなり忙しくてですね、なかなか小説を書く時間を確保するのが難しいです。


 そんな中でも、一つ目の節目である、10話を迎えられたのは嬉しいですね。


 これからも、なるべく頑張って書いていきます!前作のように、失踪は──しないかな?

「なあ、中ノ崎、やっぱクラスの食事会──行かないのか?」


 アニメの話がひと段落ついた僕は中ノ崎にこう質問を投げかけた。



「行かないわ。絶っっっ対に行かないわ」


 

 ものすごく強く否定された。そんなに行きたくないのか……。



「理由は、さっき言ってた、『場が冷めるから』って理由か?」



「そうよ。私はまだ中二病で過ごさないといけないのよ。だからそんな状態で行きたくなんてないわ。学校のクラスで過ごす時間さえ、結構嫌なんだから、食事会なんてもってのほかだわ」



 やはり、中ノ崎の人生にとって、この『中二病』っていうのは、すごく影響力があるんだろう。『馬鹿らしい』なんて、一蹴していいもんじゃないな。



 来る確率はきっと、0%よりも下なのだろうな。だったら、僕は──



「中ノ崎は行かないのかあ。じゃあ、僕も行くのやーめよ」



「え?」



 困惑の表情を浮かべながらこちらを見る中ノ崎。その中ノ崎にさらにこう言う。



「だから、中ノ崎が行かないなら、僕も行かないって言ってるんだよ」



「えっ、どうして?雪宮君は行けばいいのに……。ほら、雪宮君は誘われてるんじゃないの?」



「いやぁ、お前が居ないなら行かなくてもいいかなって思ってさ。だってほら、僕、お前以外クラスに話せる奴いないからさ」



 話せる奴いないと気まずいんだよなあ。それで、なんか優しい奴は話しかけてくれるけど、なんというか、それはそれで嫌っていうか、情けをかけられてるっていうか、ほんとは話したくないはずなのに、道徳的な面で『話しかけた方がいいよね?』みたいな感じで話しかけられるのとか嫌だし。



 まあ、これ、明らかに友達ができないやつの思考なんだけどな。



 でも、正直、行ってもいいのだ。



 だが、中ノ崎は来れないのに、果たして僕が行って良いものなのか──そんなくだらない考えの上の発言だ。



 ついでに、中ノ崎が、『雪宮君が私のせいで行かないのなら私も行く』というそんな展開を一応、狙ってはいるんだが、まあ、それは期待できないだろうな。



「もしかして……私、雪宮君に気、使わせちゃってる?」



「いやいや、そんなんじゃないんだが、まあ、話せる奴いないと楽しくないだろ?さしたらさ、時間も、お金も無駄じゃないか」



 一応の弁解はしておくが、確かに、気を使ってる一面もあるな。だが、それを言うわけには、いかないよな。



「いやいや、そこから始まる出会いだってあるかもしれないわよ?」



「じゃあお前も行けよ。僕以外にも、案外、中二病のお前を受け入れてくれる奴ってのはいるかもしれねぇぞ?」



「そ、それは……」



 それは話が違うって感じか。墓穴を掘ったな、中ノ崎。



「……無理よ──私を受け入れてくれる人なんているわけ……」



「そんなの、やってみなきゃ分かんないぞ?」



 何事もやってみるべきだが、まあ、それには一歩踏み出す勇気というのが、どんな時もいるものだ。だが、一歩踏み出せばあとは、なるようになる──みたいな言葉をどっかで聞いたことある気がするな。



「でも雪宮君。枯井さんが帰ってきたら、治してくれるんでしょ?それまで待てば全て解決じゃない?」


「まあ、それはそうなんだが、あいつ、いつ帰るか分かんないし、帰ってきたとて、早く解決するとは限らないぞ?」


「じゃあ、なるべく早く解決するためにはどうしたらいいの?」



 意欲的な中ノ崎が見えた。やっぱりこいつも、中二病が無ければ、みんなと話したり、食事したいのだろうか。



「そうだな。『想霊』には、必ず、原因があるはずだ。なぜ発生したのか、その原因を突き止めれば、解決に近づくと思うぞ」



 『想霊』は人の『想い』が、具現化したもの。どうしてその『想い』を持ったのか、それが突き止めれれば、解決には近づくはずだ。


 まあ、中には原因を突き止めたとしても、解決しない『想霊』もあるらしいけどな。そのケースじゃないことを祈るばかりだ。



「じゃあ、雪宮君、明日──また日付が変わったあたりの時間に私の家──私が昔住んでいた、今、私の家族が住んでいる方の家に行くのはどうかしら?」


 これはまた急な提案だな。



「そりゃまたなんでさ?」



「私って、さっきも言ったけど、中学2年生の時に『中二病』になったの。その時はまだ、親元を離れていなかったから、もしかしたら、根本的な原因はあっちの家にあるかもしれないわ」



「なるほどな……って、お前、両親とかと、その、気まずい関係なんじゃないのか?」



「ええ、そうね。世間一般から見ればそうなんじゃない?」



「その修羅場とも言える状況に僕を放り込むってのかお前は!?」


「そのつもりよ。雪宮君がいないと、どんなのが、原因なのかとか分からないわ」



 最悪だあ……。ただでさえ、きっと中ノ崎のご両親からみて、今の中ノ崎は家出したバカ娘的な感じだろう。


 そんな娘が、いきなり帰宅して、僕みたいな変な男を連れてくるんだぞ?

 中ノ崎は彼氏もできたこと無いらしいし、絶対怪しまれる!不安な要素が多すぎるんだが!?



「雪宮君は私を助けてくれるんでしょ?『友達だから』ね」



 こいつ……!僕の名言 (?)をこんな風に使ってくるとは!むむむ、しかし、言ったのは事実だ。そして、中ノ崎を助けようとは思ってるんだが……想定外だぞ?こんな事態。



「それとも何?助けてくれないのかしら?」



「わ、分かった、分かった。助かるよ、うん。助ける。だからその──行ってやるよ」


 『本当は行きたくないけど!』というフレーズを足そうとしたが、やめた。何されるか分からんからな。



「さっすが雪宮君。頼りにしてるわ」



 本当か?この野郎?



「というわけで、雪宮君、今日の終電あたりの電車に乗って行くわよ、私の──家族が住む家に。鬼勇(きゆう)駅から電車で数駅行ったところにあるから。『魔王』状態の私に、命令を出して、行かせるから、雪宮君は一緒になってちょうだい」



「ああ、分かったよ。集合場所は鬼勇駅で時間は終電近く──まあ、要はお前の意識が戻る0時近くってことで大丈夫か?」



「それで構わないわ」



「つうか、今更だが、そんな時間に、家に急に行っていいものなのか?僕を連れてさ」



 いや、僕を連れていなくても、そんな時間に女子高校生が急に帰るというのはダメだろうけど……。なんというか、帰ることは当然、いいことなのだが、もっと早く帰れという話だ。


「まあ、大丈夫よ。私の家族は私のことなんてどうせ気にしないから」



 それはもう手遅れと言えるレベルなのでは?中ノ崎の家族は中ノ崎のこと──中ノ崎二那のことを、どう思っているのだろうか。



「だから雪宮君、今日はもうお開きにしましょうか。雪宮君もそろそろ寝た方がいいと思うわ」



 確かに、いくら悪夢を見て、中々眠れないとはいえ、全く寝ないのは話が違うしな。



「お前もだぞ、中ノ崎。寝不足は美容に良くないと思うぞ」



 そう言いながら、僕は立ち上がる。そして中ノ崎も僕に少し遅れて立ち上がる。玄関までついてってくれるのだろうか。



「あら、雪宮君らしくない事言うわね」



「お前は僕という奴が、そんな気を遣った一言を言えないような人物と思っているのか?」



「思ってるわ!」



「うーん、正直!」



 ストレートに言われると、一周回って傷つかないかもしれないな──いや、やっぱりそんなことない普通に傷つきます。



「じゃまた、日付が変わるあたりの時間に会いましょう」


「そうだな、おやすみ、中ノ崎」



「おやすみ、雪宮君──ああ、私、『おやすみ』なんて、久々に人に言った気がするわ」



 『おやすみ』か。中ノ崎は夜、このアパートの一室で一人なのだろう、誰とも話さず、眠りにつく。一人暮らししてれば、それが当然かもしれない。



 だが、やはり、誰にも『おやすみ』とか、そういう日常の挨拶ができないというのは──確かに、辛いかもしれない。


 僕は夏世や、小町とかに『おやすみ』と言っているけれど、それに特に特別な思いとかは感じていない。するのが普通だ。そうやって僕は無意識に考えているのだろう。

 

 でも、今の中ノ崎にしてみれば、それは普通ではないのだろうな。案外、様々な日常の物事というのは、失って初めて、その物事の重要さが分からんだろう。



 僕はそれを──両親で体験した。両親は突然死んでしまった。両親がいなくなり、嫌いな親戚ばかりの広い家に過ごして、両親にもう一度会って、いろんなことを話したい。



 だが、それはもう叶わない。死んだ人間は戻ってこない──それが世のことわりだ。それこそ、『想霊』でもないと叶わないだろうな。


 『想霊』で叶えたところで、後悔するのはほぼ必然だと思う。『想霊』には頼るべきではない。それもまた、世のことわりかもな。



「雪宮君、どうしたの?なんかボケっとしちゃって。ボケっとしすぎて失禁してるの気づいてない?」



「え!?嘘!?」



 僕は急いで下半身を見る。だが、失禁した痕跡はない。また嘘かこいつ!



「ふふ、おもしろーい」



「おい!ちょっと悪質じゃないか?一瞬本気で漏らしてるかと思ったぞ!」


 ほんとに僕が漏らしてたら、僕、友達の家で、こんな歳になってしてることになるんだぞ……?恐ろしいなあ……。



「いや、雪宮君がボケっとしてるのが悪いわね。私とのおしゃべりの最中なのに」



「いや、確かにそれは悪かったな、すまん」


「分かればいいのよボケナス」


「ボケナスだと!?ボケっとしてるからか?ナス要素はどっから出てきたんだよ!」



「ほら、雪宮君って、ナス食べれなさそうな小学生顔してるから」



「それはナス苦手な人に失礼だし、そして僕はナスが昔からずっと食べれる!」



「あら、意外。ちなみに私はナス、食べれないわよ」



「まさかの自虐ネタだったのか……?」



「そうね、うわー、傷ついたなー雪宮君がボケっとしてるのがいけないんだー」


 なんか口調が小学生だぞ?



「そんな雪宮君にはこうだぞー!」



 中ノ崎は僕に人差し指を向けた──そして、



「デュクシ──」



 中ノ崎は誰もが懐かしみ、むず痒くなる、その効果音と共に、僕の脇腹を人差し指で突いてきた。


 ガチの小学生じゃねえか!ナスが食べれないのをカミングアウトして小学生になってしまうのか!



「おいおい、痛いじゃないかぁ中ノ崎」 



「へへーんだ!雪宮君が悪いんだからねーだ!」



 こんのクソガキが!



「そうだ!靴下くるくる巻いちゃおーっと」


 中ノ崎は突然、自身の靴下をくるくると巻いて、ドーナツのようにし始めた。



「うわぁ……」



 思わず、声が出たが、別に中ノ崎にドン引きしてるわけではなく、『あー、そんなんあったなあ、懐かしい』の『うわぁ……』だ。



 ちなみに僕は靴下巻くやつは保育園時代にやってたな。小学生ではやらなかった気がする。



「もう茶番はよそうぜ?中ノ崎。お互い疲れてるだろ?」



「え〜サンタさんがいるかいないかの話しようと思ったのに……」



「その話だけはやめとけ」



 そうだ、その話をしてしまうと、純粋な子供の時代というのは終わりを告げてしまう。

 

 というか、こいつのノリがおかしい原因分かったぞ。深夜テンションだわ。そして僕も、このノリに慣れているから、深夜テンションなんだろうなあ……。



「じゃ、流石にもう帰るよ中ノ崎」



「わかったわ。お見送りするわね」



 中ノ崎と共に玄関へ行く。



「じゃ、気をつけてね、雪見君。こんな時間までありがとう。明日も──よろしくね」



「ああ、分かったよ。しかし、ほんとに僕、お前のご両親とか、姉妹に会わないといけないのか?」



「ええ、お願いしたいわ」



「……まあ、それが中ノ崎の為になるなら、いいよ」



「ふふ、ありがと」



 中ノ崎はニコリとする。なんというか、やっぱり、この数時間の間に、かなり打ち解けられたのではないだろうか。



「じゃ、おやすみ、中ノ崎」


「ええ、おやすみ、雪見君」



 中ノ崎の家を後にし、僕は自転車を漕ぎ、家に帰るのだった。



 こんな時間に自転車漕ぐなんて初めてだ。車も、人も、いない。真っ暗な闇の中、あるのは自転車のライトと、そこまで明るくない街頭の光だけ──なんか雰囲気あるなあ。


♢♢♢♢♢


 そんなこんなで帰宅して、すぐ自室に向かった。流石にこんな時間には誰も起きてなさそうだ。


 しかし、もし親戚や、使用人に見つかるというか、こんな時間に帰ったら嫌な目で見られてしまうかも知らないしな。音をなるべく立てずに、自室に行った。



「ふわぁぁ、疲れたー」


 自室の前につき、そんなことを呟く。自室の扉をスライドする──ん?なんか光が扉の隙間から見える。


 あれ?僕、電気消し忘れたかな?消したと思ったんだけどなあ──


 そんなことを考えつつも、まあ、開けなくては始まらないのでとりあえず開ける──と、



「ああ、おかえりなさいませ、創一。随分遅かったですね」



 そこにはメイド服を着た人物が僕のベッドで横たわってくつろぎながら、漫画を読んでいた。



「お前、なんで僕の部屋で漫画読んでんだよ」



 僕の言葉にその人物は少し動揺して、


「え?ああ、掃除ですよ、ページをね、こうやって開くことでね、本の中の埃がどっか行くんですよ」


 どっかいったって、多分、僕の部屋から出ないから、そんなに意味ないのでは……?



「そんなとこ、掃除しなくていいし、多分、それ掃除できてないぞ」



 こんなのただの苦しすぎる屁理屈だろ!



「なんですか??つばめのやり方に文句があるってんですかぁ?」



「うーん、漫画ぐらい、読みたきゃ貸してやるのに……」



「なんかそれは嫌です。創一の部屋を掃除するという名目で読めば、実質サボってないですからね」


 いや、酷すぎるサボりだ……。


 紹介すると、このメイドは(一応、こんなのでもメイドだ)亜門(あもん)つばめ──雪宮邸に仕えるメイドの一人であり、僕の多分、使用人以上、親友以下みたいな奴。


「しかも、創一だって、つばめみたいな可憐な娘の、匂いがベットに染み付くんですよ?良くないですか?」



「良くはない!」


 ただ、悪くもない──のか?



 はあ、まだまだ長くなるな、こりゃ、寝れないよ〜僕。

 なんというか、今回は、あんまりギャグセンというか、調子があがんなかったかもです。まあ、ぼちぼち取り戻してきます。


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


 『亜門つばめ』のキャラ感を先に伝えておくと、『敬語だけど、貶してくる、なんか面白い奴』です。


 多分、夏世と同じで、スペースをかなり取る子だと思いますが、まあ、書くのが楽しみです。


 つばめの過去編とかもあるのでお楽しみに(おそらくそこそこ先ですが……)

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