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勇者様はハイティーン!

作者: カサイサン

先日投稿した、お姫様は六十代!のお姫様視点です。

ご笑納いただけたら幸いです。

 そのお話を父である国王陛下から伝えられたのは、すでに勇者様が承諾された後のことでした。


 数多くいる兄弟姉妹たちの中で行き場もなく、一生をお城の部屋住みで終える覚悟を決めて久しいわたくしに、晴天の霹靂のごとく告げられた言葉。


 それは……。


「喜べシャーロット!お前の嫁ぎ先が決まったぞ!

 相手は魔王軍をたった一人で討伐した勇者だ!

 まだ若いが、なに気にすることはない!愛があれば年の差などなんとでもなるからな!このわしのように!」


 ……お父様の恋愛事情については多くを語りますまい……。

 ただひとつ言えることは、ご自分の欲望に非常に忠実に生きておられたということ。

 さすがにここ数年はよる年波に勝てず、女官や愛妾を増やしたりはしていませんが。


 国王に求められる責務は二つ。


 ひとつは、国をよく治めること。

 そしてもうひとつは、王統を絶やさないこと。


 その意味において、お父様は良き王であると言えましょう。

 魔王軍に攻められるまでは大過なく国を運営しておりましたし、わたくしを始め王子王女も多数生まれておりますから。


 ……ですが、いくら血筋を残すためとはいえ、王子王女合わせて37人は多すぎます!

 わたくしたちがそれぞれ身の振り方を考えるのに、どれほど苦労したことか!


 まずは姉妹たちの嫁ぎ先を探すのに国内の貴族はもちろん、他国の王族貴族の妙齢の殿方の調査をいたしました。

 隣りの国ならまだ近い方で。遠く二つ国境を越えた先に嫁いだ者もおります。

 ……17番目の妹がここしばらく音信不通なのが心配ですけど……。遠く離れているから、単に手紙が届かないだけかもしれませんね。


 それでも、わたくしを除いて、みな嫁いでいけたのですから、王女はまだ良いのです。

 大変だったのは王子たち。


 王太子として残る長男と次男、多くても三男までがスペアとして残せるギリギリでしょうか。

 それ以外の王子はこれまた国内外の王侯貴族の家に養子に出したり、婿に入れたり。

 しかしながら、王族の婿や養子に出せる家格の家など限られておりますし、多くの家にはすでに王女が降嫁しています。

 残るは公爵家として新たにたてて、臣籍降下してもらうこと。

 ですが、それにも限度がございます。分けるべき領地は有限であるからです。

 そうして残った者の中には、騎士として身を立てた者、出奔して冒険者になった者。趣味を極めて画家として国外で名を上げた者もいました。

 ……中には自分の将来を悲観し、兄たちを亡き者にして自身が次代の王になろうとした者もいましたが、陰謀が明るみになり、捕まる前に自ら命を断ちました……。

 救えなかった弟のことを忘れたことはありません。


 ともかく、嫁ぎ先が決まったと言われても、わたくしももう60を過ぎた老婆です。

 まだお若い上に、国を救ってくださった勇者様に釣り合うとは到底思えません。

 断りの言葉を告げようとしたのですが……。


「すまぬなシャーロットよ……。

 お前は不服だろうが、我慢してくれ。

 魔王軍を一人で倒してしまうような英雄を野放しにはできんのだ。

 かといって、下手な貴族家に入ってもバランスが崩れてしまうじゃろうし。」


 わたくしに不服はありませんでしたが……。

 なぜなら、国を救ってくださった勇者様は美男子であられましたし、伝え聞く風聞では行く先々で民を救い、魔物たちと果敢に戦ったとお聞きします。

 そのような方の妻になれるなど、女としてこれほどの幸運はないでしょう。……ただし、わたくしが年老いていなければ、ですが。


 まだお若い勇者様は20歳にもならないといいます。

 そんな方に政略とはいえ、わたくしのような老いたものが嫁いでよいのでしょうか?

 勇者様が承諾なさったと言いましたが、わたくしのことを知ってのことだったのでしょうか?


 お父様に聞いてもはぐらかされてしまい、確証は持てませんでしたが、お会いした勇者様の表情を見てすべてを悟りました。


 ああ、やはり聞かされていなかったのだと……。


 それはそうですよね。

 これほどにお若く、強く素敵な殿方がわたくしのような老人を好き好んで伴侶として求めないですよね。


 諦めるのは慣れておりますから、表情に出さずにご挨拶いたします。


「お初にお目にかかります、勇者様。

 わたくしは現王の第8王女、シャーロットと申します。」


 驚き戸惑っている勇者様に、ひとまず腰を落ち着けいただき、こちらの事情をお話しいたします。

 もちろん、貴族間のバランスのことなどではなく、お父様の子供たち、わたくしの兄弟姉妹たちの事情のことです。


 わたくしにできることは誠心誠意、お話しをすることだけ。

 勇者様になんとか婚姻をお聞き届けいただき、そのあとはご自由にお過ごしいただけると。その……わたくし以外の愛妾や側室を持つのも自由であると。


 まだまだお若い勇者様を、このような老人に縛りつけるわけにはいきませんからね。もちろん、わたくしとは白い結婚で構いません。


 告げるべきことをすべてお伝えした勇者様は、じっとわたくしの目を見て考えこんでおられます。

 すぐに決められることではありませんから、わたくしも勇者様の目を見つめて待ちます。


 ……美しいお方。

 その漆黒の瞳は星の輝きを閉じ込めた夜空のよう。

 強い意思を宿した目に思わず見惚れてしまいます。

 胸板厚く、肩幅広く、しかし傭兵のような粗暴さは感じません。むしろ練達の騎士のような、落ち着いた印象を受けます。


 たった一人で魔王軍を相手に戦い抜いた英雄。

 そんなお方を、たとえ名ばかりでも夫とすることができるだけで、わたくしは満足です。


 そんなことを考えていると、勇者様はご意見を決められたのかひとつ頷くとおっしゃいました。


「あのっ!シャーロット姫!

 もし……もしあなたさえ良ければ、俺と本当の意味で結婚してくれませんか?」


「ふぇっ⁈」


 今、なんと……?


 ……はしたない声を出してしまいましたが、仕方ありませんよね?急に驚かされたのですから、しょうがないですよね⁈


 わたくしと。本当の意味で。結婚?


 なぜ?


 この国を、いえ世界を救った勇者様ならば、お相手にも困らないでしょうに。

 なのに、なんでわたくしなのですか?


 ……もしかして同情ですか?


 いえ、勇者様の目にはそんな色はありません。

 ただ、真っ直ぐな言葉でわたくしを求めてくださいます。


 心臓が早鐘のように高鳴り、顔が熱くなってきました……。


 その後も、作法など形だけの結婚でもお教えできると諭しても、勇者様は言葉をひるがえすことはなく。


 結局は勇者様に押し切られて、()()()()()()()結婚を承諾させられてしまいました……。


 …………だって仕方ないじゃない!

 世界一の殿方が、わたくしを求めてくださったのよ⁈

 お断りなんて、できるわけないじゃないですか!もう!


 そうして、わたくしは年甲斐もなく勇者様と婚姻の契りを結んだのでした。




 結婚生活は幸せなものでした。

 勇者様はわたくしのことを、それはそれは大切にしてくださいましたし。


 わたくしは六十過ぎのお婆ちゃんなのよ?


 そう言っても、勇者様はわたくしを可愛がることをやめてくれません。

 なにくれとなく、わたくしを労わり、抱きしめ、口づけをしてきます。使用人の前だろうとお構いなく、です。

 恥ずかしいから控えて欲しいと伝えても。


「俺の国の新婚さんはこんなものだよ?」


 と言って、また口づけられてしまいました。

 ……本当かしら?


 魔王城で手に入れたという、得体の知れない薬を飲まされもしました。なんでも若返りの秘薬だそうで。

 たしかに体も幾分軽くなった気がしますし、肌艶も三十、いえ四十代に戻ったかのようです。

 ……国にも報告していない秘薬を、わたくしだけいただいていいのでしょうか。


 わたくし達の結婚を、我が身のように喜んでくれたのは、同じ苦労を分けあった姉妹たち。


「シャーロットお姉様がご結婚されたと聞いて、駆けつけましたわ!ご結婚おめでとうございます!」「勇者様は善いお方なのですね……。幸せそうなお姉様を見られて感無量です……ぐすっ。」「本当ならわたしよりもお姉様が先に嫁がれるはずだったのに。でも、こうして最高の旦那様に出会えたのだから、これも運命だったのかしらね?」


 わざわざ隣国から来てくれた者もいます。

 みんな元気そうでなによりですね。


 目敏い一人が、わたくしの服装に気がつきます。


「……お姉様。なんだか、やけにゆったりとしたドレスを着てらっしゃいますよね……。まさか……?」


 気づかれたなら白状しないわけにもいきません。

 それに、いずれは分かることですし。

 それでも恥ずかしさのあまり、声が小さくなります……。


「……子供ができたの……。」


 顔が熱いです。

 まさかまさか、この歳で子供を授かることになるなんて!

 それはつまり、子供を授かる行為をしたということ。

 孫がいてもおかしくない年齢なのに……!

 もう!勇者様ったら!!


「キャー!!おめでとうございます、お姉様!」


 姉妹たちもとても喜んでくれたのですが、少しだけ呆れている者も。


「……さすが勇者。お父様よりもすごいわねぇ……。」


 あら、お姉様。それはいったいどういう意味かしら?



 あれから数年が過ぎ、わたくしも無事に子供を出産いたしました。

 名前はマーガレット。可愛い女の子です。

 旦那様はもうデレデレでマーガレットを猫可愛がりして、甘やかしています。まあ、わたくし達の娘は本当に可愛いから仕方ないですけどね。

 ……わがままに育たないよう、わたくしがしっかりしなくては。


 かつて、部屋住みのまま朽ちていく覚悟を決めていたのに、今はこうして我が子を抱いて、素敵な旦那様と庭歩きできるなんて。

 こんなに幸せな人生が待っていたなんて。

 昔のわたくしに言ってもけっして信じないでしょうね。


「マギーね、とうたまもかあたまも、だ〜いしゅき!」


 マーガレットが笑顔で抱きついてきました。

 わたくしも微笑んで優しく抱きしめます。


「ええ、お母様もマギーが大好きですよ。もちろん旦那様もね?」


 旦那様は「もう、幸せすぎて鼻血出そう。」と言いながら、わたくしとマギーごと抱擁してくださいました。

 フフッ、そんなちょっとひょうきんなところも大好きですよ?


 妻としての喜びも、愛する娘も、すべてはあなたがくれた幸せ。


 わたくしの旦那様。

 わたくしだけの勇者様。

 いつまでもお慕い申し上げておりますわ。


書きたかったのは、

・お姫様の姉妹とのからみ

・お姫様の娘さんの可愛さ

ですが、もう少し掘り下げてもよかったでしょうか。

後で少し修正するかもしれません。

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