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灰被家⑤
朝の事。
昼食用のパンを普段より多く鞄に詰める息子の新に、母親は目を瞬かせて問う。
「あらどうしたの?そんなにパン持っていって。いつもの2倍はあるじゃない」
「…今日は真白と昼飯一緒に食べるから、もしあいつが自分の分の弁当食べ終わっても教室に戻らないように繋ぎ止めるためのパンも追加で」
「ありったけ持っていきなさい」
~~新帰宅後~~
「えーー!!真白君お手製のお弁当!?」
「ん」
「やったじゃない新!!だからお昼用のパンが余ってたのね!きゃー!」
「…しかもさ、あいつ、俺の方に綺麗なのばっかり詰めて、自分の方にはちょっと焦げたやつとか形が歪なやつとかばっか入れてんだよ…。もう健気過ぎんだろ!これ以上好きにさせんな!」
「真白君、天使かな??」
「多分そう。…あーもー、今も思い出しただけで心臓がヤバいくらいときめいてんだけど。…くっそ、ましろぉ…」
「やだお母さんもキュンキュンしてきたー!ましろくぅん…」
胸を押さえて幸せそうに机に俯せる、似た者同士の母親と息子であった。