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95 ミィちゃんの社会科見学5

「まずは中を見てくれ。ここで白兎族は交尾をするんだ」

「ううん? なんか……普通の部屋って感じだね」


 恐る恐る部屋を覗き込んだミィは、素直な感想を述べた。


 部屋の中には大きなベッドが一つ。

 あとはシーツや代えの下着が入ったカゴが置かれており、特に変わった設備は見当たらない。


「まぁ……交尾って言っても、

 変な行為をするわけじゃないからな。

 ごく普通に愛をはぐくむだけだ」

「そうなんだ……」

「ちなみに白兎族の交尾の仕方だが……」

「解説しなくていいよ!」


 真っ赤になるミィ。

 俺は遠慮なく解説を始める。


 白兎族は仲の良い個体同士でこの部屋に入り、生まれたままの姿になって行為を始める。と言っても、すぐに交尾を始めるのではなく、マッサージしたり、キスをしたり、他にもいろいろとやりながら、まずは相性を確かめるのだ。

 それなりに相性がいいと分かったら、次はどちらがオスになって、どちらがメスになるかを決める。


 彼らは体液を交換し合い、その分泌物から相手の健康度やホルモンバランスなんかを探る。んなことできるのかと疑問に思うが、白兎族にはできるらしい。

 だいたいの情報を把握したら、自分がオスになるかメスになるかを決める。そのあと、話し合いではなく行為の仕方で自分の性別的役割をアピール。

 役割が合致しない場合、壮絶なくんずほぐれつが始まる。具体的にどうするかは言えないが、とにかく壮絶らしい。


 それで……行為の結果、互いの性別的役割が決まるわけだが……実はそれで終わりではない。

 白兎族は複数の個体同士でこの行為を繰り返し、最も相性のいい相手を探すのだ。場合によっては群れの全員と関係を持つことになるという。


 最も相性の良いペアが決まったら、いよいよ交尾が始まる。彼らの行為は非常に長い時間行われ、その間はずっと部屋から出ない。

 簡単な食事をとりながら睡眠時間を削って丸一日愛し合い、互いの体力が尽き果てたら泥のように眠る。翌日は一日休憩して、次の日に再開してもう一日と、休息を挟みながら数日間行われ、メス役が確実に妊娠するまで行為は終わらない。


 なんとも壮絶な習性をしているが、これには合理的な理由がある。


 白兎族は身体的にひ弱で、他の種族に襲われるとなすすべもなく殺されてしまう。フェルもそれが原因で魔族の領域へ逃れてきたのだ。

 外敵に対抗する手段を何一つ持たない彼らは、とにかく個体数を増やすことで種を存続させてきた。


 異常なまでに強い精力。それは幾度もなく繰り返される淘汰の中で編み出された、白兎族なりの生存戦略。決してエロ同人みたいだなんて思ってはいけない。


「……ということなんだ」

「へぇ、大変なんだね」


 ミィは今の話を聞いて普通に感心していた。

 エロ同人みたいだなんて、かけらも思わなかったようだ。


「そう言えば……フェル君は結婚してないの?」

「え? 僕は……まだ……その……」


 フェルには相性のいい相手がいないらしい。


 まぁ……急ぐことはないんじゃないかな。

 白兎族は長生きするって言うし。


「頑張って相手を見つけないとね」

「うん……そうだね」


 まるでお姉さんが小さな男の子と接するみたいにするミィだが、先ほども言った通りフェルの年齢は32歳。精神年齢11歳のミィよりもずっと大人。

 口の利き方には気をつけよう!

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