表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/369

44 改造スケルトン

 それから、ムゥリエンナと反省会をした。


 彼女は卵で仲良くなることにこだわったが、なんとか説得して諦めさせた。


 俺的には本から得られた彼女の豊富な知識をもとに、幹部たちとの会話を盛り上げてもらいたかった。だが、ムゥリエンナ的には、会話で相手の心をつかむのはハードルが高かったらしい。


 俺の期待に応えようと必死に頑張った結果、妙な方向へと突っ切ってしまった。もう少しちゃんと話をしておくべきだったな。


 仕事がまだ残っているのだが、特別にムゥリエンナと時間を作った。彼女に余計な仕事を振ったのは俺なので、きちんと面倒を見てやらねばならん。


 とりあえず、今後の方針について話し合った。


 急がなくて良いから、少しずつ幹部たちと接点を持って、関係を深めていくこと。特別なことはしなくて良いので、先ずは挨拶から。顔を覚えてもらったら図書館へと誘い、本を勧めて様子を見る。

 仲良くなったら愚痴なんかを聞いてやる。にこやかにほほ笑んで頷いているだけでいい。特別な贈り物とかは必要ない。


 このように方向性を示してやると、ムゥリエンナはすんなりと俺のアドバイスを受け入れた。

 卵にこだわっていたのは、方向性が明確でなかった為に、進む方向を誤って暴走しただけ。自分に出来る最大のおもてなしを考えた結果だと言う。


 ううむ……軽いノリで頼んでしまった結果、彼女を困らせてしまったな。

 これでは典型的なダメ上司じゃないか。

 反省しよう。


「と言うことだ。

 焦らずじっくりと話しかけて関係を作ってくれ」

「もし、本の話題に乗ってこなかったらどうしましょう?」

「そう言う場合はさっさと見切って次へ行け。

 ムゥリエンナの土俵に上がってきた奴だけを相手にしろ」

「どひょう?」

「ええっと……自分のテリトリーって意味だ」

「なるほど」


 ついつい、前世の言葉が出てしまう。

 土俵なんて言っても、誰もピンと来ない。


 ふと思ったのだが……この国で相撲を流行らせたら面白そうだな。獣人やオークなんてぴったりじゃないか。まわし姿も似合いそうだ。


「と言うことだ。あまり無理はするな。

 変に考えすぎなくてもいい。

 お前に出来ることをやればいいのだ」

「そう言うことでしたら……私にも出来そうです。

 もう少し、頑張ってみますね」

「うむ」


 ムゥリエンナは頑張り屋さんだ。

 頑張りすぎて方向性を見誤るのが玉にきず


 初めて図書館の管理者の仕事を任せた時も、一人で全ての本の管理をしようとして大変だった。俺が彼女のスケジュールの調整をするまで、寝食を忘れて仕事に取り組むありさま。

 仕事的にはかなり助かったのだが、放っておいたら身体が持たなかっただろう。

 他にも、街で見かけた本を卵と交換しようとしたり、断りもなく他国へ一人で遠征しようとしたりと、ちょいちょい様子を見ないと暴走する。


 図書館にいる間は大人しいんだけどね。

 よそに置いてある本を見ると我慢できず、なんとしてでも手に入れようとするのだ。


「くれぐれも頑張りすぎるなよ。

 俺との約束だ」

「はい、約束ですね!」

「じゃぁ、俺はこれで……」

「あのよろしかったら……」


 そう言って卵を差し出すムゥリエンナ。

 だからそれはもういいってば!






 それから俺は雑務を一通りこなした後、ゲブゲブの所へと向かった。


 俺はずっと嬰児を抱えっぱなしで、そろそろ解放されたいと思っていた。

 これを保管する為に骨のカゴを作ってもらう必要がある。


「ということで、頼む」

「はいはい、分かりましたよぉ」


 ゲブゲブは二つ返事で引き受けてくれた。


「無茶なことを急に頼んですまんな」

「いいんですよ、どうせ暇だし。

 あっ、そう言えば特別に作った身体があって。

 ユージさんに見てもらおうと思ったんですよ」

「え? 特別?」


 なんじゃそりゃ?

 想像もつかないが……いちおう見てみるか。


 俺はゲブゲブに案内され、奥の部屋に。

 そこには数体の白骨死体が立った状態で並べられていた。


「まずはコレ、改造君一号」

「改造君?」

「色んな機能を備えた白骨死体ですよ。

 なんとこれ、腕が飛ばせるんです」

「へぇ……」


 腕が飛ばせるって……それ、何か意味あるの?


「飛ばせるって、どんなふうに?」

「ほら、こんな風に……」


 ゲブゲブは白骨死体の腕を前へと伸ばし、スイッチみたいなものを押す。

 すると……。




 ぽふぅ。




 腕が飛んだ。地面に落ちた。


 ……だからどうした?


「これが……どうしたと言うのだ?」

「カッコいいでしょう? 骨パンチです」

「あっ、うん……」

「それからですねぇ」


 え? まだあるの?


「ここをこうしてこうすると……」

「次はどうなるんだ?」

「変形するんですよ、変形」

「なんだと?」


 変形するって……骨が? どう変わろうと骨は骨だと思うぞ。


「さぁ、見ていて下さい!

 これがあっしの最高傑作っっっ!」


 なんということでしょう。

 ただの白骨死体だったものが、前衛的ビジュアルのオブジェクトへ様変わり。

 良く分からないが、バラバラになった骨は見えない何かで接合し、一本の長い紐のようになった。それがとぐろを巻いた蛇のようになっている。

 ゲブゲブはこれをカッコいいと思ったらしい。


「どうしてこんなものを作った、言え」

「こうすれば敵に巻き付いて、

 足止めが出来て便利でしょう」

「どうやって元に戻るんだ?」

「戻りませんよ」


 え?


「戻りませんよ」


 ゲブゲブは真顔で言う。


「なんで?」

「なんでって、戻らなくてもユージさんは平気でしょ?」

「確かに代わりの身体を見つければ平気だが……」

「ご安心ください。予備なら捨てるほど用意してあります。

 骨パンチもグルグル渦巻きボーンも使い放題です」

「え? グルグル?」

「この技の名前です」


 すんげーダサいな。もっと他にいい技の名前はなかったのか?


 まぁ、こんな下らない技に技名があっても意味ないか。

 どうせ一回も使わないで終わるだろうし。


「まっ、まぁ……よく考えたではないか。

 褒めてやろう」

「別に褒めてもらわなくても構いませんぜ。

 どうせ下らないことをとか思ってるんでしょ?

 顔に出てますよぉ」


 表情筋が一切ないこの俺の顔から、どう表情を読み取ると言うのだ。

 まったく、面白い奴め。下らない冗談を。


「それはそうと、カゴは早めに頼む」

「かまいませんが、大きさはどうしましょう?」

「これが入るくらいの奴で頼む」


 俺は抱えている嬰児を持ち上げて言う。


「へぇ、それは?」

「良く分からんが、

 物体を飲み込んで別の物に擬態するらしい。

 勝手に動き回って危ないので、

 閉じ込めておくものが必要なのだ。

 それと、出来るだけ頑丈に頼む。

 意外と力が強いのでな」

「へぇ……」


 物珍しそうに嬰児を眺めるゲブゲブ。

 そして……。


「あっ、これってもしかして……」

「え?」


 意外なことに、ゲブゲブはその正体を知っていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ