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336 部下たちの仕事

 今度は俺の部下たちとの打ち合わせ。


 シロは魔王の相手をさせている。

 レオンハルトが一緒に遊びたがっていたので、仕方なく置いて来た。


 ……ほんとは嫌だったんだけどなぁ。

 どうしてもと言われて、仕方なく。


「俺たちのチームは補給や伝令、行軍の支援を行う。

 他にも偵察など、危険を伴う任務を任せることもある。

 よろしく頼むぞ」


 俺は集まっている仲間たちに向けて言う。


「へへへ、俺たちの仕事が役に立つなんてな。

 精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」


 自信たっぷりにヌルが言う。


 彼は仕事仲間のオークとともに、工兵として参加してもらう。

 塹壕を掘ったり陣地を設営したりと、やることが沢山あるので大変だと思う。


 彼らがいなければ、まともに進軍すらできないだろう。


「俺は料理番ってわけか。

 軍団全員分を毎日作るのは大変そうだが、やってやるぜ」


 ノインはちょっぴり自信なさげ。


 彼は参加する兵士の食事を用意する係。

 彼一人ではとても無理なのでオークを大量雇用した。


 目下の所、ノインの指示の下で沢山のオークたちが飯炊きの訓練をしている。

 未経験者が多いので教えるのが大変らしい。


「僕たちは偵察と哨戒……ですね?」

「私たちもでありますか?」

「ああ、そうだ」

「「…………」」


 顔を見合わせるフェルとトゥエ。


「なんだよ?」

「そっちこそ何ですかであります」

「言いたいことがあれば言えよ」

「そっちこそ言うであります」


 言い争いを始める二人。

 喧嘩になる前に止めておく。


「二人とも落ち着け。

 白兎族には森の中や、夜間の哨戒を行ってもらう。

 翼人族は昼間に上空からの偵察。

 それぞれ受け持つ役割が違うぞ」

「「ううん……」」


 二人は納得していないようだが、まぁいい。

 それぞれ仕事をしっかりこなしてくれれば問題ないのだ。


 白兎族は夜間でも目が利き、音にも敏感。魔力残渣を察知できるので、近くに魔法使いがいればすぐに発見できる。

 翼人族は上空から広範囲を見渡せるが森の中や夜中まではカバーできない。

 お互いに足りないところを補い合う形になる。


 もう少し仲良くして欲しい。

 フェルは最初の一件でトゥエを敵視しているし、トゥエの方もフェルを馬鹿にした感じだ。

 どうすればこの二人が仲良くできるのか俺には全く分からない。


「我々の役割は伝令ですね?」


 アロワナが尋ねる。


「ああ……そうだ。

 他にも予備隊として動いてもらう。

 前線に出ることも覚悟しておけ」

「危険は百も承知!

 我々ゴブリン族は死を恐れません!」

「うむ、頼んだぞ」


 ゴブリンたちは大変重要な任務に就く。


 戦になれば必ず伝令が必要になり、正確に情報を伝えなければ戦いに勝てない。

 ゴブリンたちはその機動力を生かし各部隊の情報伝達を行ってもらう。


 また、戦局を見極めて必要な時に予備隊として戦いに参加する。

 クロスボウも使い慣れているので戦力にはなるはずだ。


 ただまぁ……あまりに腕力が低いので、人間とガチでぶつかり合ったら間違いなく負ける。

 無茶苦茶な作戦にはあまり参加させたくない。

 ここまで育てるのには苦労したからなぁ。


 伝令なら翼人族の方がベターな気もするが、ゴブリンの方が俺の元で働いていた期間が長いので信頼度は高い。

 情報を伝達するのは移動力よりも正確さが求められる。長い付き合いのあるゴブリン族に伝令を任せたいと思った。


 まぁ……場合によっては翼人族に伝令を頼んでもいいが、状況によるな。

 どうしても遠くまで情報を伝えたい時にだけ彼女たちにお願いしよう。


「ハーデッドさまのお世話はお任せ下さいですの!」

「あーうん……そうだな」

「どうしてわたくしの時だけ、微妙な反応ですの⁉」

「だってお前、自分のことしか考えてないじゃん」

「それはそうですけど……

 もっとやる気を出させて欲しいですの!」


 認めちゃったよ。

 ほんとしょうがねぇな、コイツ。


 エイネリは士官学校の生徒を連れて従軍する。

 彼らは俺の指揮下で行動する。


 やらせるのは物品の管理とか、必要物資の調達などの補給任務。

 この国には細かい雑務をこなせる人材がほとんどおらず、エイネリが育てた生徒たちに任せざるを得ないのだ。

 彼らがいなければ兵站の管理ができなくなって、進軍すらままならないだろう。


 兵站を無視すれば間違いなく略奪が横行する。

 現地住人からのヘイトはできるだけ抑えたい。戦後の統治にも影響がでるからなぁ。


「私は⁉ 何をすればいいのだ⁉」

「お前は荷物運びだ、プゥリ」

「荷物運びっ⁉ そんなの嫌なのだ!」

「だったらお留守番だ。

 俺が帰ってくるまで給料なしな」

「酷いのだ!」


 プゥリは補給要因として荷物を運ばせる。

 それ以外に使い道がない。


 あとは俺が移動する時に使ってやろう。


「私たちは皆さんの帰りを待ってますね。

 気を付けて行って来て下さい」

「ムゥリエンナ。

 大変だとは思うが……俺が帰ってくるまでの間、魔王城での仕事を頼むぞ」

「はい! 任せて下さい!」


 ムゥリエンナには俺が担当していた事務仕事をやってもらう。

 仕事量が多いので大変かと思うが頑張って欲しい。


 彼女一人だと大変だと思ったので、お父さんに相談したら知り合いを助っ人として回してくれることになった。

 割と理解のある人で助かったな。


 きちんと挨拶しに行っておいてよかったよ。


「サナトも、俺たちが戻るまで魔王城をしっかりと頼むぞ」

「はい……」


 サナトには魔王城の警備を引き続きお願いする。


 本音を言えば、一緒に連れて行きたかった。

 だが……サナトは同意してくれなかった。


 本来なら無理やりにでも連れて行くのだが、無理強いはできない。

 彼女は有能なので次の働き口なんてすぐに見つけられるからなぁ。


 サナトにだけは俺もあまり強く出られないのだ。


「あのぅ……」


 イミテが手を上げる。


「なんだ?」

「私も一緒に行っても良いですかー?」

「……は?」

「やっぱダメ?」


 意外な申し出だった。

 しかし……なぜ?


「いや、ダメかどうかの前に理由を教えてくれ」

「それは……」


 口ごもるイミテ。

 ここでは言えないのか。


 シャミが理由かな?

 心配で仕方ないのだろう。


「まぁ、理由については後でゆっくり聞く。

 しかし問題なのは……お前に何ができるかってことだ。

 何か特殊な能力があるのか?」

「あっ、それならありますー。

 私ってサキュバスじゃないですかー」

「……うん」

「だからー、敵の男をー」

「メロメロにできるって言うのか?」

「はいー」


 うーん。

 どうなんだろうな?


 確かにサキュバスはそう言う種族なので、異性にはめっぽう強いと聞く。

 その能力を使う場は限られていると思うが……。


「捕虜から情報を引き出したりするじゃないですかー。

 その時は拷問とかしなくてもー。

 私がやれば一発だと思うんですよー」

「うーむ……そうか」


 一発の意味合いが微妙。

 どういう意味なんだろうな?


 まぁ……全く役に立たないわけではないと思う。


「それでー? どうなんですー?」

「ううん……少し考えさせてくれ」

「いつまでに返事を聞かせてもらえますかー?」

「そうだな、よく考えてから返事をする」

「もう準備始めちゃってもいいですかー?」

「決まってからにしてくれないか?」


 イミテは何が何でも一緒に行くつもりのようだ。

 そんなにシャミが心配なのか。


 この人とは後でゆっくりと話をした方がいい。

 彼女の店を訪ねて、どうしたいのかを聞いてみよう。


「そう言えばあのスライムのおじさまは?

 一緒に参加するですの?」

「ああ、ゲブゲブは……」


 エイネリの問いに答える。


「一緒に連れて行くつもりでいる。

 俺の身体を用意する必要があるからな」

「現地調達ではだめですの?

 死体なら戦場に腐るほど転がってるですの」


 エイネリはそう言うが、でき立てほやほやの腐肉付き死体なんて絶対に嫌だ。

 白骨死体に限る。


「もう怪我のほどはよろしいですの?」

「治療スライムのお陰ですっかり良くなったらしい」

「良かったですの。回復して一安心ですの」


 ホッとした様子のエイネリ。

 この人、なんでゲブゲブの心配なんてしてるんだろ?


 大して深い関係でもないだろうに……。


「そう言えばヌル。

 お前、娘がいたんだってな」

「ええ……ご存じでしたか?」

「ああ、実は……」


 この様子だと彼女はヌルにまだ話していないようだ。

 俺は昨日の出来事について伝える。


「ええっ……スーが⁉」

「ああ、いきなり農場を訪ねて来てな。

 どうやら俺を探し回っていたらしい。

 あっ、勿論断っておいたぞ。

 お前の同意なしに――

「すみませんっ! 俺はこれで失礼しますっ!」


 部屋からすっ飛んでいくヌル。

 ……なんか嫌な予感がする。


「なぁ、ヌルの旦那はどうしたんだ?

 すげー焦ってる様子だったけどよぉ」


 心配そうにノインが言う。


 どの家にも複雑な家庭の事情があるのだ。

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