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270 ベルは今日も忙しい2

 ミィはなかなか顔を出さなかった。


 待っていても仕方がないので自分の仕事に取りかかる。

 マムニールがそろそろ目を覚ます時間だ。


 メイド仲間たちと共に準備を整える。


 朝食はまで出来上がっていない。

 しかし、彼女は朝一番に熱い紅茶を飲むので、湯を沸かしておかなければならない。

 全身の毛をブラッシングするのでそちらの準備も。


 ベルは手帳を開いて、今日一日のマムニールの予定を再確認する。

 特に急な用事は入っていないが、彼女がなにごともなく一日が過ごせるよう配慮しなければならない。来客などがあった場合はその都度、対応を迫られる。


 まだ少し時間があるので、シャミと会っておこう。

 そろそろ彼女の持ち場も忙しくなるころだ。


「それじゃぁ、みんな!

 今日もよろしくお願いします!」


 点呼を完了したシャミが、自分が受け持つチームに向かって頭を下げる。


 彼女はベルの片腕として立派にリーダーを務めている。

 シャミがチームの指揮を受け持つようになってから、仕事がだいぶ楽になった。

 感謝しかない。


「「「はーい!」」」


 返事をしてさっそく仕事に取り掛かる奴隷たち。


 シャミが受け持っているのは雑用を担当するグループ。

 奴隷たちの服や寝具の洗濯、建物や農場の清掃、ゴミ出し、などなど。

 農場の運営が円滑に行えるように管理するのが彼女たちの仕事。


 シャミが担当するグループのメンバーは、他のグループと比べて数が多い。

 雑用係は幅広い仕事をこなさないといけないので管理が大変なのだ。


「シャミ、お疲れ様」

「あっ、ベル。おはよう」

「ねぇ……ミィはどうしてるかしら?」

「え?

 ああ……そのね。

 まぁ、うん」


 どうも歯切れが悪い。


 シャミはミィのことについて尋ねられると、気まずそうに眼を反らした。

 どうやらまだ何かグダグダしているらしい。


「はぁ……あの子はホントに……」

「まっ、まってベル!

 ミィちゃんも色々大変なんだよ。

 だからさー。

 大目に見てあげて欲しいっていうかさー」

「あなたまで何を言っているの?

 甘やかしたらミィの為にはならない。

 もっと厳しくしてもいいくらいよ」


 ベルが言うと、シャミはますます困った顔になる。


「ははは……いや、そうなんだけどね。

 でも今日だけは大目に見てあげてって……。

 ダメかな?」


 両手を合わせてお願いのポーズをするシャミ。

 ちょっとだけ首をかしげる。


 いつの間にこんなにカワイイポーズができるようになったのだろう。

 ちょっとだけ憎たらしく思う。


「ダメではないけど。

 でもこのまま放っておくのもね。

 一度、ちゃんと注意しないとダメよ。

 いつかマムニールさまに迷惑がかかるわ」

「だよねぇ……だよねぇ」


 うんうんと頷くシャミだが、彼女は本当に分かっているのだろうか?


 協調性に欠けるミィが周囲に迷惑をかけるのは、これが一度や二度ではない。

 今まで何度も注意したけれど改善の見込みは薄い。


 一番気になるのはやはり態度だ。

 仲間に対する態度がなっていない。


 確かに仕事はできると思う。

 ベルが教えたことはそつなくこなすし、仕事も比較的丁寧だと思う。


 しかし――時間が経つと以前に教えたことを忘れて同じミスをしたり、あるいは自己流のやり方に置き換えて勝手に仕事を進めていたりと、問題が多いのだ。

 同僚が指摘すると露骨に不満をあらわにする。返事も「はいはい」と適当にしか返さない。あるいはむすぅっとして何も答えない。

 そんな態度を取るものだから、周囲からの評判も悪くなる。


 ミィを放っておいたら確実に孤立する。

 その前に何とかしなければならない。


 気づけばベルはミィのことばかり考えていた。

 頭の中をミィに支配されてしまうかもしれない。

 ミィ……ミィ……ミィ……ミィ――


「あの、ベル? どうしたの?」

「え? あっ、ごめんなさい。

 ちょっと考え事をしていて……」

「もしかしたら疲れてるのかもよ。

 たまにはちょっと休んだら?」

「そうねぇ……」


 シャミに言われて、なんとなく疲れているのかもと自覚するベル。

 虚空をぼーっと眺めていると、ミィの顔が浮かんできた。


 本当にちょっと休んだ方がいいかもしれない。

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