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251 シロの日常3

 シロはオークたちからルールを教わる。


 ゲームは単純なものだった。

 カードには四種類のマークがあり、それぞれ数字が書かれている。

 数字の多いカードが強く、数字の小さなカードの上にそれよりも数字が大きいカードを乗せていく。


 一番先に手札がなくなれば勝ち。


「なるほど、理解した」

「全然理解してねーだろ!」


 7のカードが出ているのに4のカードを出したシロはオークたちから叱られる。

 今のはちょっとしたジョークのつもりだった。


 面白いと思ったのだが、受けは悪かったようだ。


 それからシロは適当に手札を出していくが弱いカードばかりが手元に残ってしまい、ほかの参加者が上がっていくなか、一人だけカードをたくさん持ったまま終盤を迎える。


「……まけた」


 圧倒的大差で敗北したシロ。

 彼女は賭け金を支払わなければならない。


「んで、お嬢ちゃん。手持ちは?」

「ない」

「だよなぁ」

「でも代わりになるものがある」


 シロは口をもごもごと動かすと、おぇぇぇっと小さな物体をテーブルの上に吐き出す。


「げぇ! ぺっぺ!」

「うわぁ! きたねぇ!」


 シロが吐き出したのは小さな石ころ。

 七色に輝いていてとても綺麗。


 これは彼女が体内で合成したもので、不思議な魔力を帯びている。


 見る者が見れば、それなりに価値があると分かるシロモノ。

 そんなものをオークたちがありがたがるはずもなく、ただ汚い物体としてしか見ていない。


「うけとって」

「いや……いらねぇよ」

「私のきもち」

「気持ちでもこんなきたねぇものはいらねぇ」

「しょぼん」


 流石に汚いと言われて傷つくシロ。

 一生懸命に三日三晩体内でいろんなものを混ぜて作ったというのに。

 この仕打ちはいったいなんだ。


 やはりユージの言った通り。

 賭け事は良くない。


 人の心を曇らせて、価値のある物を無価値と思い込ませてしまう。

 なんと悲しいことだろうか。


「おい、なんでそこにシロがいるんだ?」


 また一人オークがやって来た。

 片方しか牙のないエプロン姿の彼は……ユージの部下であるノイン。


「遊びに来た」

「もしかして一人で出てきちまったのか?

 ユージに怒られるぞ」

「連れて行って」

「……は?」

「別の場所へ連れて行って。

 ここはもう飽きた」


 シロのわがままっぷりに、ノインは困った表情を浮かべて頭をかく。


「分かった、厨房の方へ連れて行ってやる。

 でも大人しくしてるんだぞ」

「わかった」


 シロは快く返事をする。

 大人しくしているのは得意だ。


「でも、なんで一人で出て来た?

 外へ出ないように言われてたはずだろ?」

「楽しそうだったから」

「そうか……そりゃ……仕方ねぇな」


 ノインはやれやれとかぶりを振って、肩を落としてため息をつく。

 面倒なことになったと言いたげな様子だ。


「これあげる」


 先ほど吐き出した綺麗な意思をノインに差し出すシロ。

 受け取って貰えなかったので、彼にあげよう。


「いや……いらねぇよ」

「どうして?」

「その……それは……」


 気まずそうに目を逸らすノイン。

 まさか彼まで汚いと言うつもりか。


「それはとても大切なものなんだろ?

 ユージにプレゼントしてやれよ」

「…………」


 そう言えば。

 ユージに何かをプレゼントしたことがない。


 彼は縞々のマフラーを首に巻いているけど、確かあれも誰かからの贈り物だったはずだ。


 私も彼に贈り物がしたい。

 なんとなくそう思うシロだったが、この石を受け取ってもらえるとは思えなかった。


 ユージはあまり物欲がないのだ。


「うん? どうした?」

「なんでもない」


 シロは石を口に含んで飲み込み、体の中に収める。

 ここにしまっておけば無くしてしまうことはない。


「じゃぁ……いくか」

「うん」


 ノインはシロを抱きかかえ、自分の肩に乗せる。

 少し高い場所から見える景色はいつもと違って新鮮だ。

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