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249 シロの日常1

「今日は一日、お留守番だぞ」


 ユージはベッドに座るシロに向かって言う。


 彼は一日中忙しく働きまわっており、部屋に戻ってくることはほとんどない。

 仕事の合間に顔を出して様子を見に来るくらいで、日中は部屋の中で一人で過ごすことがほとんど。


 日によっては夜もずっと出かけたまま戻らないこともある。

 よほど仕事がたまっているのだろう。


「わかった」

「じゃぁ、行って来るからな。

 大人しくしてるんだぞー」


 ユージはそう言って部屋から出ていく。

 シロはその場に座ったまま彼を見送った。


「…………」


 シロは大人しく座ったまま彼の帰りを待つ。


 特にする事は無いので、じーっとしたまま動かない。

 ずーっと、ずーっと。

 その場で一人大人しくしている。

 毎日、毎日。


 シロは生まれてこのかた、一人で部屋から出たことがない。

 外へ出る時はいつもユージが一緒。

 勝手に外へ出てはいけないと言われている。


 彼女はその言いつけを素直に守っていた。

 いつもと同じように、今日も彼の帰りを待って、部屋で大人しくしている――はずだった。


 ふと、扉が少しだけ開いていることに気付く。


 外から漏れる光がシロの心を揺さぶった。

 外へ出てみたいという気持ちが大きくなっていく。


 ユージの言いつけを守らないといけない。

 けれどもずーっと一人で大人しくしているのは退屈だ。

 外へ出て探検して見たい。


 魔王城の構造については、そこそこ熟知している。

 ユージと一緒にあちこち見て回った。

 だからきっと大丈夫なはず。


「よいしょ」


 思い切ってベッドから飛び降りたシロは、少しだけ開いた扉へ向かって歩いていく。

 彼女がそっと戸に手を触れると、きぃときしむ音がして簡単に開いた。


 そこには外の世界が広がっている。


 いつも外へ出る時はユージと一緒。

 でも今日は違う。


 シロは一人だ。

 たった一人。


 一人だけで外の世界を見てみたい。


 大きく膨れ上がったその気持ちを抑えることはできない。

 誰も止める者などいないのだから。


 彼女は思い切って外の世界へ足を踏み出した。

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