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211/369

211 処女の血には莫大なエネルギーが秘められているのだ!

「ご婦人っ!

 わしが時間を稼いでいるうちに、

 その奴隷を連れて早くお逃げください!」


 化け物に立ちはだかるクロコド。

 難を逃れたマムニールたちは後ろを振り向かずに逃げ出した。


「よかった……二人とも無事で……」


 ホッとしたようにシャミが言う。


 無事かどうかはまだわからない。

 あのクロコドとかいう男が化け物を相手にどこまで戦えるか……。


「ぬおおおおおおおおお!」


 ブンブンと槍を振り回すクロコド。

 敵が伸ばした管を次々と切り払う。


 割と善戦している方だとは思うのだが、それでも戦力差は圧倒的。

 クロコドはじりじりと追い詰められていく。


「このっ! なんだ……このっ!」


 槍を振り回して敵の攻撃を防ぐクロコドだが、その様子からは焦りがにじみ出ていた。

 もってあと数秒、と言ったところか。


 ハーデッドは呪文を詠唱。

 魔法を発動する。


 発動したのは、闇属性の下級魔法。

 物質を侵食する漆黒のエネルギーを飛ばして、相手を攻撃する魔法だ。

 無意味だとは思うのだが、何もせずに見てはいられなかった。


 ハーデッドの放った闇魔法は敵に向かって真っすぐに飛んでいく。

 しかし、その身体に近づくと、シャボン玉が弾けるように消えてしまった。


「ええい……仕方ない。

 シャミよ、一つ尋ねるが、貴様は処女か?」

「え? なんですか急に⁉」

「答えろ、重要な事なのだ。

 貴様は処女なのか? それとも貫通済みか?」

「え? あっ……処女……ですけど」

「でかした!」


 ハーデッドはシャミの服をはだけさせ、首筋を露出させる。


「え? きゃ! 急に何するんですか?!」

「貴様の血が必要なのだ! 少しでいいから吸わせろ!

 処女の血には莫大なエネルギーが秘められているのだ!」

「でっ……でも……」

「あの二人を助けるためだ! 我慢しろ!」

「うう……分かりました」


 観念するシャミ。

 ハーデッドは勢いよく彼女の首筋に噛みつく。


「うっ……うあぅ……あっああ……いやぁ」


 嬌声を上げるシャミ。

 ヴァンパイアの唾液には興奮作用があり、これが体内に入ると非常に敏感になる。


「うん……あっ! あんっ! うにゃぁっ!」


 だんだんとシャミの声が激しくなっていく。


 血を吸すえば吸うほど、対象者の興奮度は増していく。最終的には絶頂に至り、最上級の快楽を味わえるのだ。


「にっ……にゃぁああああああああ!」


 絶叫するシャミ。

 彼女は力なくその場に崩れ落ち、へたりと座り込んでしまった。


「すまんな、シャミ。

 だがおかげで幾分かは回復できた。

 これでまた戦えるだろう」


 ハーデッドは左手で口元をぬぐう。


 先ほどもぎ取られた右腕を拾い、切断面をくっつけて無理やり接合する。

 ハーデッドほどの強さを誇るヴァンパイアであれば、自己の身体を比較的容易に再生することができる。


「酷いですぅ……」


 シャミはあまりの快楽に耐え切れず、その場で失禁していた。

 シャミはとろけた表情でボーっとしている。


「お前は直ぐに別の方向へ逃げろ」

「は……はひぃ……分かりましたぁ」


 ふらふらと立ち上がるシャミは、ゆっくりと歩き出して離れていく。


「うぎゃああああああああ!」


 ついにクロコドが打ち負けてしまった。

 彼の巨体は軽々と吹き飛ばされ、逃げていたマムニールたちの横を通り過ぎていく。

 このままでは二人が危ない。


「おい、化け物! お前の相手は余だ!

 戦うべき相手を見間違うな!」


 ハーデッドがそう叫ぶと化け物はゆっくりとこちらの方を向く。


 振り向きざまに拳を食い込ませた。

 発生した螺旋状のエネルギーが化け物の顔面を深々とえぐる。


 まともに入った。

 これなら……!


 手ごたえを感じた次の瞬間。

 体が宙を舞うのを感じた。

 ふわりと空に放り出された身体に、次々と化け物の放った無数の刃が突き刺さる。


 勢いよく氷の上へと叩きつけられると、衝撃で氷が割れ、湖の水が飛び散る。流れ出た血と水とが混ざり合い、淡い赤色が広がっていく。


 奇跡は起きなかった。


 無様に醜態をさらしたハーデッドに、もはや抵抗する気力は残されていない。


 ずるずると身体を引きずられ、化け物の元へと連れていかれる。

 奴はハーデッドの髪をつかんで上を向かせると、目の前へ顔を近づけて来た。


「はぁ……はぁ……」


 真っ黒く染まったミィの顔。

 赤い瞳以外、その詳細は視認できない。


 黒いペンキで塗りたくったようなその姿に、ハーデッドは不思議と美しさを感じた。

 この世の全てを飲み込んでしまいそうな、純粋で混じりけのない黒。


 近くで見ていると実に美しい。

 こんな美しい存在に消されるのなら、本望ではないか。


「うがっ! ごほっ! あがっ!」


 化け物は何度もハーデッドをなぶった。

 あえて殺さないように、小さなダメージを繰り返し与える。


 顔や、腹や、胸のあたりを、小さな拳で殴る、蹴る。

 おもちゃで遊んでいるような感覚なのだろう。

 化け物は執拗にハーデッドを嬲る。


 だがこれで、時間を稼ぐ目的は達成された。

 マムニールとベルも、シャミも、安全な場所まで逃げられただろう。

 これでよい。


 役目を全うした彼女は化け物が止めを刺すのを待った。


 しかし……その時が来ることはなかった。

 彼がやっと現れたのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クロコドかこいい! [一言] ここまでめっちゃ面白く読ませていただいてます(*´ω`*) 久々にとても読みやすく安心して(?)読める良質なハイファン長編作品に出会えて幸せです(≧∇≦)
[良い点] いよいよ真打登場!? [気になる点] 童貞の血もきっとエネルギーに満ちている、はず、だよね?(笑) [一言] クロコドの姿がマムニールに届いているといいけれど。
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