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138 一週間で準備しな!

「え? お祭り?」


 魔王はお祭りをしたいと言い出した。


「そうそう、お祭り。

 戦争が終わった時はいつもやってたんだよね。

 この前の騒動終わってお祝いをしてないでしょ?

 今度、盛大にやろうと思ってさぁ。

 ……ダメかな?」


 ダメではないけど……その準備は誰がやるんですかね。


「別に構いませんが……ご予算は……」

「好きなだけ使って良いよ! たくさん!」

「左様ですか……」

「じゃぁ、お願いね。日にちは一週間後!」

「え? 一週間⁉」


 そんな短い期間で準備しろと⁉

 間に合わないだろうがっ‼


「いくらなんでもそれは……」

「複雑に考えなくてもいいよぉ。

 ちょっと良い感じにまとめてくれればいいんだ。

 ユージなら、簡単でしょ?」

「いやぁ……そのぅ……」

「じゃぁ、後は全て任せるよ!」

「まっ……待ってぇ……」

「頼んだよぉ! アハハハハハハ!」


 魔王は笑いながら去って行った。


 これはとんでもないことになったぞ。

 一週間後に大規模なイベント開催とか絶対に間に合わん。


 ただでさえ忙しいのに……俺は死んでしまうかもしれない。






 弱音を吐いている暇はない。

 とにかくやるべきことをやろう。


 俺はまず、トゥエにイスレイまで飛んでいくように指示を出した。

 彼女には魔王のサインの入った書類を持たせ、ハーデッドが領内にいることを伝える。


「了解したであります!」


 トゥエは素直に任務を承諾。


「少ないが、これは路銀だ。受け取ってくれ」

「こんなに沢山っ⁉ いいでありますか⁉」

「ああ、むしろ少ないくらいだと思うが……」

「私の生活費の一か月分です!

 こんなに貰えてうれしいですっ!」


 一か月分って……本当にそんなにもつのか?


 俺が渡したのは銀貨数枚。大した金額ではない。

 翼人族は普段から質素な生活を営んでいるらしい。


「では、行ってくるでありますっ!」

「気をつけろよー」


 トゥエは早速、イスレイまで飛んで行ってくれた。

 俺は次の仕事へと移ろう。


 ハーデッドのことはとりあえず置いておき、先ずは魔王に命じられたお祭りの件だ。


 俺は仲間たちを緊急招集して会議を開いた。


「……と言うことで、魔王様から無茶ぶりをされました。

 一週間後にお祭りを開催しなければなりませーん」

「本当に引き受けたんですか?

 一週間で何が出来るって言うんです?」


 サナトが鋭い視線を俺へと向ける。


「できるかとか、できないとか、

 そう言うことは関係ない。

 とにかくやるしかないんだよ」

「そんなこと言って……

 苦労するのはユージさまなんですよ⁉

 私、今から魔王様の所へ行って抗議してくる!」

「サナトさん! ちょっとまってぇ!」


 慌てて彼女を押しとどめるフェル。


「あのなぁ、ユージ。

 流石に一週間じゃ無理があるだろう。

 計画を立てるにしても……」

「安心してくれノイン。それならもう立てておいた」


 用意しておいた書類を皆に配る。


「みんな、軽く目を通してくれ。

 簡単なプログラムを組んでおいた。

 やるべきことはひとつ。

 魔王を中心としたパレードだ。

 軍団に街の中央を行進させるだけでいい。

 最後に魔王に挨拶をさせて、しめにする」


 割と簡素なプログラムだが、一週間で出来るとしたらこれくらい。魔王も満足すると思う。


「なぁ、ユージさま。

 祭りってんだから、街を飾らなくちゃならんでしょう。

 装飾とかはどうすれば良いんです?」


 ヌルが尋ねて来た。


「そうだな……装飾については何も考えてなかった。

 ヌルにはいい案があるか?」

「案はねぇが、指示があれば何とかします。

 今から始めればなんとか間に合うでしょう」


 マジか……流石は職人肌の親方。

 頼りになりやがる。


「ううん……お祝いだからなぁ。

 華やかな感じが良いなぁ」

「はいはいはーい! 

 それならわたくしに考えがありますの!」


 エイネリが手を上げる。


「お花でいっぱいに飾るのが良いですの!

 そうすれば、こんな臭くてダメダメな街でも、

 きっと綺麗になりますの!」


 平然と街並みをディスるエイネリ。

 普通に同意はするが、

 それを口に出して言うのはどうなのか。


「花なんて飾ってどうするんだ?

 獣人共はそんなもんに興味ねぇだろ」

「お黙りなさいですの!」


 ヌルを一喝するエイネリ。


「オークにはお花の尊さが分からないですの!」

「待って下さい、エイネリ様。

 この国はあくまで獣人の国です。

 アナタの価値観に合わせたら、

 皆しらけちゃいますよ」


 ムゥリエンナが冷静に突っ込んだ。


 その通り。

 この国の主な住人は獣人。彼らの価値観に合わせなければ、独りよがりなオナニーになってしまう。


「ムゥリエンナ。君はどう思う?」

「私は半獣人なので彼らの価値観は分かりません。

 やっぱり動物が好きなものを選んだ方が……」

「動物が好きなものって……なんだ?」

「骨とかじゃないですかねぇ。

 あとは……たまごとか」


 ここにきても卵か。

 本当にぶれないな、この人は。


「骨かぁ……良いんじゃねぇのか?」


 意外にも、ヌルは好意的にとらえた。


「え? 本当にそう思うか?」

「ああ、ユージさまは知らねぇようですが、

 獣人ってのは骨が大好きなんですよ。

 特に、肉食系の獣人なんかは、

 獣の骨を好む傾向にある」


 獣の骨を好むって……共食いか?

 草食系の獣人はどうなんだろうか。


「草食系はどうなんだ?」

「うーん、連中は肉食系と比べて大人しいからなぁ。

 やっぱり草とかが好きなんじゃねぇですか?

 あとは……昆虫とか」


 草とか昆虫……って。

 本当にそうなのか?


「皆は知っているか?

 草食系の獣人たちの好みを」

「あっ、僕。聞いたことあります!」


 フェルが手を上げた。


「草食系の人って土とか舐めるみたいですよ!」

「え? 土⁉ 土を舐める獣人がいるのか?」

「あ、それ私も聞いた事ある。

 ヤギとかってミネラルの補給で、

 土を舐めるらしいですよ」


 サナトも知ってた。

 土って良いらしい。


「とりあえず草と花と土。あとは骨か。

 そんな感じでよければ、

 適当に街を装飾しておくぜ!」


 ヌルは今のでイメージをつかめたらしい。

 本当にこれで良いのか疑問だが、別に構わんか。


 どうせ準備期間は一週間しかない。

 碌なレイアウトにならなかったとしても誰も責めまい。


「じゃぁ、大量の骨を用意しておかないとな。

 ゲブゲブ、任せても大丈夫か?」

「お任せ下さいっ!

 他のことで役に立てるとは思えないので、

 一生懸命やらせてもらいますぜ!」


 ゲブゲブは快諾してくれた。

 彼なら十分な量の骨を集められるだろう。


 草とか花とか土はどうするかな……。


「お花ならわたくしが用意しますの。

 ついでに草も何とかしますわ」


 エイネリが草花の担当になってくれた。

 ありがたい。


「じゃぁ、土なら私が……」


 ムゥリエンナが土の担当に。

 何かつてでもあるのか?


「レイアウトはヌルに一任する。

 好きなように街を彩ってもらって構わん。

 責任は俺が持つからな」

「へぃ! お任せ下さい!」

「あとは……」


 俺はノインに目を向ける。


「ノイン、お前はオークの仲間に掛け合って、

 出店を出すように言ってもらえるか?」

「出店? 何をやればいいんだ?」

「ここに企画書を何枚か用意した。

 オークたちに好きなものを選ばせて、

 大通りで店を開かせてくれ。

 獣人たちにも声をかけてもらえると助かる」

「おお……任せてくれ。

 それにしてもすごいな。

 この量を一人で考えたのか?」


 書類の束を受け取り、ノインは驚愕する。


 一人で考えたのではない。

 前世の記憶から定番の出店をパクったのだ。


「ああ、簡単なのしか思いつかなかったけどな」

「十分すぎるぜユージ。

 こんな店が通りに並べば、誰だって喜ぶ。

 きっと楽しくなるぞ……」


 ノインは書類を見て目を輝かせていた。

 ありがたい言葉だが、俺が考えたんじゃねぇんだよな。


「フェルとアナロワは、

 手分けして住人に祭りの予定を公布してくれ。

 住人から疑問や不安、不満を言われたら、

 俺に報告するんだ」

「了解です!」

「わかりました!」


 フェルとアナロワは揃って敬礼する。


「あのぉ、私は何をすればいいんですか?」


 サナトが手を上げる。

 彼女は……。

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