108 幹部は休日も忙しい7
「貯金……でもしようかな」
「「「えっ……」」」
俺がそう言うと三人は表情を固まらせる。
「なんだ? 俺が何か変なことを言ったか?」
「いや……なぁ……貯金って……」
「ええっと……」
「ははは……まさか貯金だなんて……」
困った顔になる三人。
いったいどうしたというのか?
「なっ……なぁユージ。何か欲しいものとかねぇのか?」
ノインが尋ねる。
「え? 欲しい物? 特にないが……」
「いや、あるだろ!
なんかこう……欲望を満たすような……。
そうだ! 花とかどうだ⁉」
「えっ……花?」
花で欲望が満たせるか?
ううん……ちょっとよく分からない。
「花は……別に欲しくないな。
しいて言えば……頑丈で壊れにくい身体かなぁ」
「それならあっしがいくらでも作って差し上げます!
何が良いですか⁉
なにかこう……どかーんとぶっ放せる武器とか、
そう言うのがついた身体が良いですかい⁉」
ゲブゲブが興奮気味に言う。
こいつも急にどうした?
「いや……いらん機能はいいから、
丈夫な身体を作ってくれればいいよ……」
「僕はっ⁉ 僕は何をしてあげればいいですか⁉
ユージさまのためなら何でもしますよ!」
フェルまでどうした?
「いや……お前はいつも頑張ってくれてるだろ。
この前だって急に無茶な仕事を振っても、
嫌がらずに引き受けてくれたし……」
「他にも何かないですか⁉
どんな仕事だって引き受けますよ!」
あんまり頑張りすぎたら過労死しちゃうだろ。
俺みたいになってから後悔しても遅いぞ。
「なぁ……みんな、本当にどうしたんだ?
何でそんなに必死なんだよ?」
「だってよぉ……お前、全然休んでねぇだろ⁉
まったく遊びもしねぇし、さぼりもしねぇ。
もうちょっと……なんかよぉ……。
人生を楽しもうとは思わねぇのか⁉」
「ええっと……」
あまりに必死すぎるノインの訴えに、俺は何も答えられない。
確かに休んでないし、さぼってもいない。
俺はアンデッドだからどんなに働いても平気。
全然つらくないし、苦しくもない。
生身の皆とは違うのだ。
自分の人生を楽しむ?
どうすればいいんだ?
「ええっと……。
もしかしてかなり気を使わせてしまったか?
だとしたら申し訳ないな。
俺は別に平気だから気にしないで……」
「そうか……分かったよ」
ノインは力なくうなだれる。
「悪かったなぁ……ノイン。
今日はいろいろ気を使ってくれて。
そうだ! 皆に今日のお礼をしよう!
何か欲しい物はないか⁉
今日は俺が一人勝ちしたからなぁ!
なんでも買ってやるぞぉ!」
「「「…………」」」
明るく振舞ったつもりだが、みんなの表情が暗くなる。
俺、何かやっちゃいました?




