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107 幹部は休日も忙しい6

「へへへっ、こっちですぜ」


 俺たちはゲブゲブの案内で街中にある古い建物の中へと入る。


 そこは人通りの少ない裏路地に面したボロボロの宿屋。

 受付には誰もおらず、人の気配もしない。

 ゲブゲブは勝手に奥へと入って手招きをする。


「おっ……おい……入っても大丈夫なのか?」

「平気ですって! ほら……早く!」


 ゲブゲブが進んでいった先には地下へ続く階段。

 そこを降りて行くと……。


「……なんだここ?」


 地下室には小さな箱がいくつか置かれており、それを囲むようにござが敷かれていた。何人かの魔族が床に座って、箱の上に置かれた小さな器にさいころを落としている。

 あれってもしかして……。


「ええっと……ここの人たちは何やってんの?」

「へへっ、“チンチロ”ですよ」


 鼻の下をさすりながらゲブゲブが言う。


 チンチロかぁ……前々世でもやったことないなぁ。

 なんでそんな遊びがこの世界にあるのか突っ込むのは後にして、とりあえずこの店のシステムを聞こう。


「ええっと……どういうシステムなの?」

「道具を借りて勝手に遊ぶだけでさぁ。

 ショバ代を払えばいくらでも遊べます」

「へぇ……」


 場所だけ貸すから好きに遊べってか?

 そういうシステムなら分かりやすくていい。


 俺たちは奥に座っているコウモリの獣人からサイコロと器を借りる。代金はノインが払ってくれた。

 開いている席に腰かけてゲームスタート。


 ルールは俺がいた世界のものと同じ。

 ずっと前の時代に転生した誰かが広めたんだろうなぁ。


 俺やミィの他にも、この世界には転生者が大勢いるらしい。

 だとしたら、もっとましな世界になってもいいと思うんだけどな。何でこんなハードモードな世界のままなの?

 チンチロの他に伝え広めるべきものが沢山あったのでは?


 しばらく俺たちは淡々とゲームを楽しんだ。

 絵面はかなり地味なのだが、今までで一番楽しかったかもしれない。


 実際に金を賭けてゲームをやると本気度が変わる。みんなも夢中になってゲームに参加していた。

 特にノインは金欠なのか、自分が悪い目を出すたびに頭を抱えていた。普段、口数の多いゲブゲブは黙るし、逆にフェルはずっとしゃべっていた。

 彼らの知らない一面がみられて面白い。


 何度かゲームを続けると、勝敗の差がくっきりと分かれる。一番多くの勝金を手にしたのは……。


「ユージ……すげぇじゃねぇか」

「ふふふ、まぁな」


 俺はひとり勝ちして大金を手にした。

 と言っても、本当に些細な額だけれども。


「ひゃぁ……ユージさまにはかなわねぇや」

「ユージさますごいですぅ」


 ゲブゲブとフェルの二人がほめてくれる。

 正直、悪い気分じゃない。


 ほんの短い間ではあるが結構楽しめた。大したことのない身内同士での賭け事だが、やはりゲームに勝つのは嬉しい。

 物理的な力を出せない俺が楽しめる遊びって言ったら博打くらいしかないのかな。


「さぁて……今日はいろいろと遊んだことだし、お開きにするか!」


 ノインが言った。

 いい時間だし解散するにはちょうどいいかもな。


 色々と空回りした彼だが、結果的にはいい形で終わったと思う。ノインのおかげで俺も自分の楽しみを見つけられたかもしれない。


「そう言えば……ユージさまぁ」

「なんだ、ゲブゲブ」

「勝負で手にした金、何に使うんでさぁ?」

「それは……」

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