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104 幹部は休日も忙しい3

 俺たちは場所を移して、何もない平野へと移動。

 果たしてノインは何をやるつもりなのか。


「ユージ、次はゲームをするぞ!」

「ゲームってどんな?」

「ふっふっふ……これを使った面白いゲームだ!」


 ノインはおもむろに大きな球体を取り出す。


 それは人の頭くらいの大きさの石でできた球体。何をするのかだいたい予想できた。


「これを使って木の棒を倒すんだ。

 何本倒したか競う画期的なゲームだぞ」

「そう……」

「なんだ、興味ねぇのかよ?」

「いや……」


 それはつまりボウリングだよね?

 ユージ知ってるよ。転生する前に遊んだよ。


 ボウリングは好きでも嫌いでもない。付き合いでやる程度。


 転生する前に働いていた会社の上司がボウリング大好き人間で、連日のように付き合わされたのを覚えている。


 俺は大して好きでもなかったので早く帰りたかった。投球の順番待ちで何度眠りこけたことか。

 そんなもんだからスコアなんて全然伸びず、上司からお叱りの言葉を何度ももらう。


 飽き飽きした俺は開き直ってガーターを連発。ブチ切れた上司と乱闘騒ぎに発展。翌日も通常通りに出社。その晩、上司から仲直りのしるしとして、ボウリングではなくカラオケに誘われた。何も分かってねぇ。


「それ……お前が考えたのか?」

「いや、オーク族に古くから伝わる伝統的な遊びだ」

「……そうか」


 大昔にオークに転生した現代人が広めたんでしょうねぇ。余計なことしてくれやがって! お前のこともアンデッドにしてやろうかぁ!


「じゃぁ、さっそくルールを説明するぞ!」


 ノインがルールブックを片手に説明を始める。


 おおむね、俺が知っているボウリングのルールと同じ。二回投球して10本のピンを倒す。いっぱい倒した方の勝ち。得点の計算方法も大体同じ。

 特に気になる点はなかった。


「じゃぁ、まずは俺から行くぜ!」


 ノインが石でできたボールを持って構える。三つの穴に指を突っ込んでそれっぽい構えをするノインだが、ポーズが上司と全く同じ。昔のことを思い出して気分が悪くなった。


「とぅ!」


 ノインが転がすと、ボールは綺麗なカーブを描いて目標へ到達。見事に木の棒を全部倒してしまった。


「わーすごいすごい」

「へへっ。次はお前の番だぞ」


 そう言って石を渡して来ようとするノイン。

 こいつ……何も学習してねぇな。


 倒れた木の棒はフェルとゲブゲブがさっさと直してくれた。

 すぐにでも投球できる状態なのだが……。


 これを手に持って、俺の腕は大丈夫なのか?


「なぁ……俺は……」

「分かってる。俺が助けてやるから安心しろ」

「いや、勘弁してくれ。マジで」

「……そうか」


 想像して欲しい。

 ノインに手を貸してもらいながらボールを投げる俺の姿を。


 力を借りてボールを投げたら、みんなが「偉いね、よくできたね」ってほめるのだ。嬉しいか? 楽しいと思うか?


「あのぉ……ユージさま。よかったら……」


 フェルがもじもじしながら小さなボールを差し出す。


「え? 何それ?」

「僕専用のボールです。ノインさんが用意してくれたんです。

 これを使えばユージさまでも……」


 何だよ、ちょうどいいのがあるじゃねぇか。

 早く言ってくれよもぅ。


「ふむ、この大きさなら俺でも投げられそうだな。

 ちょっと借りるぞ」

「はい! どうぞ!」


 俺はフェルからボールを受け取る。


 こんな体になっても、一応生きていたころの感覚は残っている。転生してから何十年もこっちで過ごしてきたが、球の投げ方は忘れていない。


 ふふふ……ノインよ。俺のフォームを見て驚け。

 クソ上司にしこたま通わされて身に着けた社畜投法の恐ろしさをとくと味わうがいい!


 俺はボールを手に取り、構えて狙いを定める。

 そして……

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