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103/369

103 幹部は休日も忙しい2

 ぽきん。


 小気味よい音が聞こえるとともに、腕の感覚が消失。勢いよく竿を引っ張ったら重さに耐えきれず、俺の腕がひじのあたりで両方とも取れてしまった。




 ざっぱーん!




 俺の腕が落ちると同時に、怪魚も湖の中へと姿を消す。釣竿も水の中に引きずり込まれてしまう。しばらくして水面へと姿を現して、白い骨と釣竿がぷかぷかと漂っていた。


「うわぁ……マジかぁ……」


 俺は自分の両腕を見つめる。ひじから先を失った俺の両腕は、見ていてなんとも物悲しい。


「おっ……おお。まぁ、そんな時もあるよな。

 気を取り直していこうぜ」

「ユージさま! 腕を拾ってきますね!」

「あっしも!」


 フェルとゲブゲブが俺の腕を拾いに行ってくれた。ノインは何とも言えない表情で俺を見ている。


「その……なんだ……すまなかったな」

「いや、大丈夫だ。たまたまだろう。

 次はきっと大丈夫なはずだ」

「だと良いんだけどなぁ……あはは」


 気まずそうに笑ってごまかそうとするノイン。

 彼が俺を気遣ってくれるのは分かるが、その心遣いが逆に苦しい。


「ユージさまぁ! とってきましたよぉ!」

「あっしがすぐに直して差し上げますね!」


 二人が腕を拾って戻ってきた。早かったな。


 ゲブゲブはちょちょいと俺の腕を直す。

 といっても、何か道具が必要になるわけでもなく、取れた個所をくっつけるだけで元通りになる。マジでいい加減なだよなぁ……俺の身体。


 釣りを再開。

 餌をつけて、竿をふるって、水面に投げたら……。




 ざっぱーん! ぽっきり。




 ダメだった。俺の腕はまた取れてしまった。


 俺の腕は丈夫ではなく、少しでも負荷がかかると取れてしまう。これでは釣りなんてしても楽しめないだろう。


「おっ……おお。マジか……」


 かける言葉が見当たらないのか、ノインは気まずそうに俺を見ていた。別に同情して欲しいとは思わないのだが、俺の身体に制限があることは確かだ。


 俺にはできることと、できないことがある。


 重い物を持て運べないし、強い力を出すこともできない。それはノインもよく知っていると思うのだが……。


「そうかぁ……お前には無理だったかぁ……。

 荷物を他人に運ばせてたのは、

 そういう理由があったからなのか……」

「え? 今更?」

「ああ……悪いな、ユージ。今更、気づいたんだ」


 ノインは申し訳なさそうに言う。


 彼とは長い付き合いになる。

 俺がゲンクリーフンへ流れ着いてきた時からの関係。


 にもかかわらず、彼は俺が物を自分で運ばないのは、重たいものが持てないからだと知らなかった。ちょっと意外。


「そうだったのか……面倒だから運ばせてたとでも?」

「いや、そうじゃねぇけどよ。

 ただ単に力がないだけかと思ってたんだ。

 そんな風に腕が取れちまうとは、思いもしなかった。

 悪かったよ……本当に」


 ノインはバツが悪そうに顔を背ける。

 彼なりに罪悪感を覚えているようだ。


「本当はノインさんが途中で助けてあげて、

 一緒に魚を釣り上げる予定だったんですよ」

「ばかっ! ばらすなよフェル!

 恥ずかしいだろうが!」


 フェルが作戦の内容を明らかにすると、ノインは顔を真っ赤にして大声を上げる。まぁ……確かに恥ずかしいよな。


 彼は俺と一緒に魚を釣り上げることで、達成感を味合わせようとしたのだろう。悪い試みではないと思うのだが……。

 俺の腕があまりに脆く、その作戦は失敗に終わってしまった。


 うまくいかないもんだね。


「ちっ……釣りはダメだったが、まだ終わりじゃねぇ。

 とっておきの作戦があるんだ」


 気を取り直したノインが言う。

 作戦ってばらしたら作戦にならんぞ。

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