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私は、行けない。  作者: たけ ゆう。
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夜、寝ていても数分後には

目が覚めてしまう。


朝なんて来ないで欲しい、と思っていても来る。


ハンガーに、かけた制服をベッドの上に

座りながら眺める。

数十分も。


家族が、起きて階段を降りる音が聞こえ始めた。


制服に触れる。手が震える。


「だいじょうぶ、だいじょうぶ」


呪文のように言い続けながら着替えた。


深呼吸をして階段を降りる。


朝のニュース番組を観ながら、

家族が会話をしていた。


「…お、はよう…ございます」


「おはよう」


みんな、驚いた顔をしている。


「行くの?学校?」


お母さんが、聞いた。


「…いく。」


「そう、朝ごはん、食べる?」


「食べる。」


「うん、じゃあ座って」


「うん」


久しぶりに家族の顔を見た気がする。


「どうぞ」


「ありがとう」


ワカメと豆腐の味噌汁。

白米。

目玉焼き。


家族、揃って食べると美味しい。

そう感じた。



8時前に、家を出る。


「いってきます。」


「いってらっしゃい、気を付けてね」


「うん」


お母さんに見送られながら。




1人になると不安が押し寄せる。


「だいじょうぶ、だいじょうぶ」



「いってらっしゃい」


おじいさんだ。


姿を見て涙が出そうになった。


「いってきます。」


無理やり笑顔を作った。





歩みを止めず、学校へ向かう。

だいじょうぶ、だいじょうぶ、

校門が見えて来た。

どんどん生徒が入っていく。

私も、ゆっくり入る。



「山本!来たか!おはよう」


担任だ。


「おはようございます。」


「じゃあ、行くか」


そう言って、進んで行く。

待って、待って、待って、待って!!

どんどん校舎が近づく。

あ………。


動かない。苦しい。くるしい。


「どうした?ほら、行くぞ」


なかなか歩き出さない私の腕を引っ張る。


やめて、いたい、くるしい、こわい。


「むり、です。」


「はぁ、昨日の山本は元気だったじゃないか。

犬と遊んでいただろ?」


違う、やっと息がしやすくなった。

おじいさんや、奥さん、シロ、クロに、

助けられたんだ。


「…行くぞ」


担任は、また私の腕を引っ張り出す。

校舎が大きくなる。

息苦しさが今まで以上に強くなる。

いやだ、いやだ、いや、だ!!

涙が溢れ出す。

その瞬間、目の前が真っ暗になった。





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