6
家族が、居なくなった家は静か。
それが心地よかった。
洗顔や歯磨きを済ませると私は部屋に戻る。
お昼になると、1階に降りて
お母さんが朝、用意してくれている
ご飯を電子レンジで温める。
「いただきます。」
手を合わせて言う。
お母さんへの謝罪も込めて。
使った食器を洗ってから部屋に戻る。
そんな生活を繰り返していた。
そんな、ある日
部屋から、お隣さんの庭が目に入った。
白い犬と黒い犬2匹が気持ちよさそうに眠っている。
「しあわせそう。」
ただ、ボーッと眺めていた。
次の日も、また次の日も眺めた。
今日も2匹の犬は幸せそうに眠っている。
「あれ…起きた。」
尻尾を振り同じ方向を見ている。
「飼い主さんか」
おじいさんがニコニコしながら犬達の頭を撫でている。
すると、急に、おじいさんが私の方を向いた。
咄嗟に隠れてしまった。
これじゃあ怪しい人だ。
翌日、犬達が気になり庭を見た。
「こんにちは」
昨日の、おじいさんが居た。
覚悟を決めた。
窓を開けて声を出す。
「こんにちは…」
「犬は、好き?」
おじいさんの声は優しかった。
庭を勝手に見るな、と怒られると思った。
「すきです。」
「そうか、かわいいよね」
「…はい」
「またね」
おじいさんは、それだけ言って犬達の頭を
そっと撫でると家に入っていった。