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大丈夫、大丈夫、大丈夫。
心の中で何度も、呪文のように。
「いってきます。」
「いってらっしゃい!」
お母さんが笑顔で送り出してくれる。
大丈夫。
足は動く。
校門が近づく。
大丈夫、大丈夫。
校舎が見えた、目の前に来た。
だいじょ、ぶ。
また。きた。うごかない。うごかない。
息苦しさが、また現れた。
校舎を見上げる。
こわい。
よくアニメで見る悪の巣窟のように見える。
息ができない、いき が。
たすけて、たすけて、たすけて。
「山本?」
「せんせ…」
「またか?」
声が出ない、必死で頭を上下に動かす。
「分かった、ゆっくり座れ。」
近くあった石段に座った。
「保健の先生を呼んでくる。いいか?」
言葉が出ないから、また上下に頭を動かす。
待っている間、生徒が通りすぎる。
不思議そうに私を見ている。
見ないで、お願い。
「山本」
担任が1人で戻ってきた。
「保健の先生は、今日、昼まで居ないらしい。
大丈夫、じゃないよな。帰った方が、いいな」
また、最後まで学校に居られない。
担任が送ってくれる事になり、
空いている教室で朝のHRが終わるのを待った。
「ありがとうございました。」
「無理、するなよ」
「はい」
鍵を開けて家に入る。
昨日と一緒だ。
また明日も同じ事になる。
その度に、誰かに迷惑をかける。
だったら、行かない方が、いい。
家族が帰って来ても、部屋から出なかった。
ご飯も食べていない。
ただ、泣いていた。
泣くしかなかった。
もう、学校には行かない、行けない。
行くのが、こわい。
ごめんなさい、許してください。